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第三回なろうラジオ大賞投稿作品

鏡の中のシンデレラは魔法使いに恋をした

作者: 衣谷強
掲載日:2021/12/18

『第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』投稿作品です。

テーマは『鏡』。


ストレートど真ん中のラブストーリーをお楽しみください。

「大丈夫?」

「うぇ!?」


 いきなり聞こえた声に驚いて顔を上げて、すぐ後悔した。

 こんな涙でぐしゃぐしゃの顔、誰にも見せたくなかったからビルの間で泣いてたのに……。


「入って。ここ僕の店だから」

「え、え……?」


 手に持った袋をポンとゴミ箱の上に置くと、その人は私に手を伸ばした。

 その優しい声に、私は思わずその手を取ってしまった……。




 お店は美容室だった。

 詩杏しあんと名乗った男の人に椅子と温かいお茶を勧められて、私は聞かれるまま泣いていた事情を話した。


「へぇ、地味だからってフラれたんだ。酷い男だね、そいつ」

「い、いえ、地味なのは事実ですし、あの人の格好良さと私は釣り合わないなって……」

「悔しかったり嫌いになったりしないの?」

「好きでいた時間は幸せでしたから、そういう気持ちはないです。残念では、ありますけど……」

「……そう。今でも好きなの?」

「……はい」

「じゃあ手助けしてあげる」

「え?」

「任せてくれたらとびっきり綺麗にしてあげるよ。僕これでもプロだから」

「え、あの、でも……」

「さぁどうぞシンデレラ。王子様も虜の美しさを貴女に」


 同情なら断っていたと思う。

 でもそんな楽しそうに言われたら……。


「じゃあお願いします」

「ありがと。絶対後悔させないから」




「こ、これが私……?」


 鏡の中の美人が目を丸くしている。

 本当に魔法みたい……!


「さ、写真に撮って、そいつに送ってあげるといい」


 夢見心地で言われるまま送ってみる。

 わ! すぐ返信来た!

 ……『誰この美人! 紹介して!』か……。

 私って言ったら付き合えるのかな……。

 でも……。


「どうだった?」

「……美人って言ってくれました」

「でも君とはわからなかっただろう?」

「……はい」

「どう? まだ付き合いたい?」


 ……そうか。手助けって、付き合う方じゃなくて、気持ちを切り替える方……。


「……いいえ。もっと綺麗な人がいたら、すぐ心変わりするでしょうから……」

「賢いね。手を尽くした甲斐があるよ」

「あの、どうして初対面の私にここまでしてくれるんですか?」


 私の問いに、魔法使いはにっこり微笑んだ。


「この仕事をしてるとさ、恋愛の愚痴を山程聞くワケ。でも君は『好きでいた時間は幸せ』って言った。泣く程辛いのにそう言える子は何とかしてあげたくてね。それに」


 ウインクに心臓が跳ねる!


「僕好みの髪型と化粧がこんなに似合う子、そんな馬鹿には勿体ないから」


 ドキドキが収まらない!

 今度の魔法はもう解けそうにない……。

読了ありがとうございます。


キーワード全制覇して、一番ポイントがついたのが、「サイコロ十個振って全部六でしたら結婚して差し上げますわ」だったので、二匹目のどじょうを狙ってみました。

さて、切り株を見守る作業に戻るか……。


ちなみに詩杏のフルネームは『毘射手びうて詩杏しあん』。

美容師のbeauticianまんまです。

出ませんでしたが主人公は『相葉そうば夏楽なつら』。

地味のsoberと、素のままのnaturalから作りました。

無駄に凝りすぎ? ははっ、それな。


また思い付いたら何か書きますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 胸がきゅんきゅんなるような、素敵なお話でした! 好きな時間は幸せだったから、なんてなかなか言えない言葉ですよね。 彼女もとても素敵な女の子で、振った男は本当に見る目がないですね。 [気に…
[一言] きゃ〜♡ きゅんです^^
[一言] 胸キュン案件なのです!
2021/12/18 15:22 退会済み
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