第一章 神社の出会い(五)
宗明が行方不明になってから数年が経過していた。進は神社のことや宗明の部屋を調べてみることに。
その翌日、進は通学途中、友人の桑田に会い、宗明の部屋を調べたときのことを話す
翌日、学校に行く途中、桑田が前を歩いていたので追いついて声をかけた。
「桑田おはよう」
「おっ。おはよう」
「昨日はすごい発見があったぞ」
すると桑田は眼鏡を中指でおしあげて、
「ほう。それはどんな?」
オレは昨日おばさんから聞いた話、宗兄の部屋で見つけたゲームのこと、自分の推理などを話して聞かせた。
オレは興奮していたんだと思う。ところどころ早口になって、息も少しきらしていた。
桑田はそんなオレの話を適度に相槌を打ちながら聞いていた。
全部話し終えたのを待って、桑田が言った。
「ゲームの世界に行くなんてことがあるわけないだろう」
オレは耳を疑った。桑田なら信じてくれると思ったのだ。
「いや。可能性はあると思うが…」
オレは失望と少し自信をなくして言った。
「ない。窓が開いていたのなら、さらわれたんだろ。俺はそう思う」
「だが、宗明さんはまだ見つかってないぜ」
「ゲームに入り込むなんて、ありえない」
「そうかな…ゲームの電源は点けっぱなしだったそうだぞ。セーブもしてない」
「急に化け物が窓から入って来たんだよ。消す暇もなかったんじゃないか」
「いや、格闘の跡もなかったぜ」
「じゃあ逃げていたんだろう。跡は残らなくても不思議じゃない」
「ゲームから出てきた可能性もあるんじゃないか」
すると桑田がぷっと噴き出して、それからオレを見た。
「ないよ。何をバカなことを」
「何だと…」
これにはイラっと来た。桑田がこんな態度をとるとは思ってもいなかった。そういえば桑田とはまだ知り合ったばかりだ。オレは彼のことはまだよく知らないのだ。
「崎山。落ち着けよ。だいたいどうやって二次元の中に入り込むんだ?」
「お前だって化け物にさらわれたとかファンタジー小説みたいなこと言ってるだろ」
「いや、君よりは現実的だよ、目撃者もいる」
「そうかな。オレはそうは思わない」
「ゲームに入り込むなんてさ…誰も見てないじゃないか」
そう言って桑田はへらへら笑った。それを見ているうちにまた腹が立ってきた。
「誰も見てないからさ。だからこそ、オレはあり得ると思うな」
そう言うと、桑田はわざとなのか、さらに大きな声を出して笑った。
「ない、ないよ」
態度にイラついてきて、オレは思わず言った。
「いつか証明してやるよ」
「ああ、ぜひそうしてみてくれ」
「ああ。してやらぁ」
「ばかばかしい。ガキか?」
その後、桑田とは口をきかずに学校まで歩いた。途中、別の友達がいたので、桑田はそのグループの輪の中に入っていき、オレは一人で歩くことになった。教室についてからもお互い口をきかなかった。
しかし、証明するといってもどうしたらいいだろうか…何かいい方法はないだろうか。
――そうか、怪物だ――
噂の黒い首無しこうもりや、オオカミなどはあのゲームの中に出てくる敵キャラではないのか。もしそうなら、ゲームをやって確認すればいいだけのことだ。ケータイで写真でもとればいいだろう。