表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/74

第三章 崎山進の捜索(十一)

行方不明の従弟の進を捜すため「龍神の剣」をやっている正弘。そのゲームは近所の宗明さんという人の家にあったゲームだという。宗明さんも数年前に行方不明になっていた。

ひょっとして進はゲームの世界に行ってしまったのではないかと思った正弘は、セーブデータをロードして、ゲームをやり始める。そこへ呼び鈴が鳴り、誰かがやって来る…。



 「はーい、どちらですか」と叔母さんの声が聞こえる。しばらくして叔母さんが玄関まで来てドアを開ける音がして…

 「さっちゃん!久しぶりだね。元気」

 「はい。叔母さんお久しぶりです。元気ですか」

 「ええ、まあね」

 「…進君が最近学校に来なくなって、だから、進君のお見舞いに来たんです。今部屋にいるんですか」

 進が行方不明になったことは知らならしい。

 「いや、うーん……そうなのよ」

 とお茶を濁す叔母さん。

 どうやら進のクラスメイトの女の子らしい。会話の流れからして昔からの知り合いなのだろう。

 会話が聞こえなくなった。叔母さんはどうしたものか悩んでいるらしい。

 僕はコントローラーを置くと、部屋を出て、階下に声をかけてみることにした。玄関で二人が向き合っているのが見える。女の子はフリルのついた白のワンピースを着ていて、ピンクのヒールをはいていた。学校帰りと言うわけではないらしい。手には何かの袋を持っていた。色白で目がぱっちりとしているかわいい子だ。

 「叔母さん、その人、こっちの部屋の上げてくれませんか。ちょっと進のことを聞きたいんです」

 「え。でも…」

 と言って、さっちゃんと呼ばれた女子の方を見る。

 「その人、進の幼なじみですよね。じゃあ、進のこと言ってもいいんじゃないですか」

 と軽く畳みかける僕。

 「そ、そうね…まあ、さっちゃんなら信用できるし…」

 「じゃあ、僕が言っときますよ。任せて」

 さっちゃんという女の子は叔母さんと僕の顔を交互に見ている。

 「もう、正ちゃん…じゃあ任せるけど…」

 そこで僕は女の子に言った。

 「ね?君。こっち来てよ、今面白いロールプレイングゲームやっててね、進がやってたゲームなんだ。それでも見ながらさ、進のことを教えてよ」

 「え?ゲーム!あ、はい、そうですね」

 女の子はそう言って一瞬目を輝かせた後、叔母さんを見て、

 「じゃあ、叔母さんいいですか」

 と聞いた。

 なかなか適応力もありそうだ。

 「ええ…なら…」

 「じゃあ、上がって!こっち来て」

 「えっと、じゃあ、お邪魔します!」

 さっちゃんと呼ばれた女生徒は靴をそろえると、トントンと駆け足で階段を上がって来る。

 叔母さんが奥へ戻っていくのが見えた。

 僕はさっちゃんを中に招き入れると扉を閉めた。

 「どうも。初めまして。水沢幸子と言います」

 「僕は島田正弘。進の従兄なんだ」

 「へえ。そうなんですか。あれ?進君は?」

 「ここにはいない」

 「え?」

 「いい?誰にも言わないでほしい。行方不明なんだ」

 「ええええっ!マジ!あいつが?……あ、言いません」

 やはり適応力がある。

 女の子は部屋の中のテレビを見て言った。

 「で、どうしてそんなゲームなんかしてるんですか」

 「進を捜索しているんだ…」

 「はあ?ここで?」

 「いや!何でもない。進がいなくなった時に部屋でやっていたゲームがあってね。何かゲームの中に手がかりはないかと思って僕は今調べているというわけだよ」

 ゲームの世界に巻き込まれたのかもしれないとは言いにくい。そこは何とかぼかしてごまかす。

 「ああ。なるほど。そういうことですかー。だからゲームやってたんですか」

 今ので納得したらしい。手間のかからないタイプだ。

 「うん。その辺に座って。水沢さん」

 僕は近くにあった白い座布団を渡した。水沢さんは袋を床に置くと、座布団を受け取り、下に敷いて座る。

 「その袋は?」

 「ケーキです。お見舞いの」

 「ああ、そうか。けどいないからな。どうしよう。何のケーキ?」

 「普通のイチゴのショートです」

 なら好物だ。僕が黙って袋を見つめていると、水沢さんは

 「私たちで食べちゃいます?」と言った。

やはり適応力が高い。これならもしや進がゲームの世界に引き込まれたのかもしれないというオカルト推理を話しても大丈夫かもしれない。

ふふふ。これは良い助手が来た――これからうまくやっていけそうな気がした…よし、正直に話してみよう!

 僕たちはまずケーキを食べることにした。箱の中にプラスチックのフォークが入っていたのでそれを使った。

 もしゃもしゃほおばりながら、僕はこれまでのいきさつを慎重に話してみた。水沢さんは今、ケーキを食べながら進のメモ帳を見ている。

 「ほんとですね。ここに変なことが書いてある。引き込まれるみたいな…」

 「うん。だからさ、あいつがゲームに入り込んだのかもしれないと思って、今やってるんだよね」

 そう言って僕は顔をうかがう。

 水沢さんは瞳をキラキラさせて少し興奮気味に答えた。

 「正弘さんって面白いですね!そういう考え、あたし好きですよ。進もそういうこと考えそう。やっぱ従兄ですね」

 「そうかな。それはよかった」

 ほっと胸をなでおろす僕。マジ、天然でよかった。うまくやっていけそうだ。

 僕は座って、コントローラーを手に取った。

 「進のことなら何でも聞いてください。あたしも捜査に協力しますので…」

 と水沢さん。

 「じゃあ…最近学校での進はどうですか。勉強してますか」

 「あまり…」

 「そうかぁ。最近ゲーム以外にどんなことに興味があったんだろう」

 「うーん…あいつのマイブームは神社ですかね」

 意外な言葉が出てきた。あいつ、神社巡りに興味あったっけ?

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ