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第二章 龍神の剣の世界へ(十三)

金助の店を出て、湖へ自分の姿を確認しに行く進。すでに夜になっていた。そこへ鬼達が現れ、とっさに身を隠すが…



 小さい方がぼそっと言った。

 「あ、おめえ。一本なんだな」

 「え…何がですか…」

 と答えるオレ。

 小さい鬼は自分の頭の上を指さす。

 「角だよ。一本だ」

 「あ…」

 そうか、そう言えばオレは今、体が変わっている状態だ…。オレは頭の上を触ってみた。

 ある…硬い突起物が頭の真上に生えていた。ついでに髪に触る。毛はカールしており、もじゃもじゃしていた。 どうも鬼のようだった。

 「何だ、おら達の仲間か」

 でかい方が安心したように言った。

 「こんなところで何をやってるんだ」

 小さい方がさっきと同じ質問をする。

 「あ、いや…持っていたかごを落としてしまって…探してたんだ」

 とっさに嘘をついた。

 「籠ねえ…ところで、おめえ変わったもんを着ているな」

 「え…」

 この服のことだろうか…そんなに変わっているか?

 「人間が着そうな服だ」

 「そ、そうか?」

 「おめえもおら達みてえなこういうのにしろ」

 でかい方が自分の腰をパンと叩く。

 え。その腰布を付けろ、と…。

 だが、反抗するとまずそうなので同調することにする。

 「そ、そうだな。オレもこれは気に入ってねえ!」

 オレがそう言うと、小さい方が棒の先の布の結び目をほどき始めた。そして、中からたたんだ布の塊を取り出すと、こちらに放り投げた。

 「え?」

 慌ててキャッチするオレ。どうやら腰布のようだった。

 小さい方が言った。

 「それやる。付けとけ」

 「あ、ありがと…」

 鬼だけど親切だな…まあ、鬼同士だからこういうふうにコミュニケーションがとれるのだろう…。

でかい方が言った。

 「うん。付けてみろ」

 「え?ここで?」

 二匹の鬼は黙って見ていた。

 ……あまり裸とか下半身丸出しとかそういうのを気にしないんだろう。

 「ええと…」

 もらっておいて、履かないのも悪いので、仕方なくオレは着ている服を脱ぎ始めた。チンコ丸出しになる段になり、少し躊躇したが、それも脱いだ。

 腰布は和風の四角形の模様が入ったものだった。しかし付け方が分からない…。

 俺がまごまごしてると、小鬼の方が、

 「何やってるんだ。下手だな」

 と言って、後ろに回って手伝ってくれた。何だか恥ずかしかった。

 基本、腰布はただの長い布と紐であり、それをまず布を腰の辺りに巻き付けて、その上から紐を巻いて、それを結んで固定するようだった。

 「ああ、なるほどね」

 オレが妙に感心していると、

 「じゃあ、これはもういらねえな」

 とでかい方が言って、オレがさっきまで着ていた服を遠くへ威勢よく投げ捨てた。

 放物線を描いて服がはるか彼方へ消えていった。

 向こうの方が良かったんだが…。

 小さい方が訊いてきた。

 「おめえ、昼巣でも見ねえ顔だが、最近この辺に来たのか」

 「そうなんです」

 よく分からんが、そう答えておいた。

 ヒルス?さっき金助はヨルスと言っていた気がするが。じゃ昼と夜?何のことだ。

 だが、訊くわけにもいかない。怪しまれそうだ。さっきはオレが妙な質問をするものだから、金助の信用をなくした。だからオレは今のような状態になった。妙な質問はしない方がいいだろう。

 「ありがとうございます」

 とオレは礼を言った。

 「どうだ、今夜はおら達と一緒に行動しねえか」

 と小さい方が言った。

 一刻も早く自分の外見を湖ではっきりと確認したいのが本音だ。だが、これでもうだいたいどんな状態かは分かっている…。この鬼達と一緒に行動して、この世界の分からないことを聞いた方がいいだろう。そうすればこの体を元に戻す方法も分かるかもしれない。元人間だとばれるとやばそうだが、すぐに元に戻れる感じではないし…。

 「はい、お願いします」

 すると、大きな方が

 「じゃあ行くぞ」

 と言った。

 オレが小さい方に聞く

 「今、何をしているんですか」

 「昨日、動物を捕まえる罠をあちこちに仕掛けたんだが、そこに獲物がかかっていないか兄貴と確認しているんだ」

 兄貴とはこの大きい方の鬼のことだろう。

 「へえ…動物ね…どんな動物がいるんです?」

 「この辺じゃ、たぬきや、うさぎ、そしてリスやテンなんかだな」

 「罠なんか作れるなんてすごいですね」

 「そうか?まあな。こう見えてもこの界隈じゃ罠に関してはおら達が一番だと思ってる。な、兄貴」

 小さい方がそう得意そうに言うと、

 「そうだな」

 と大きい鬼がそっけなく答えた。だが、少し顔をほころばせ、何となく嬉しそうだ。

 金助のことを知っているか聞いてみようと思った。

 「この辺で、他に罠を作っている方は他にいないんですか。赤い服の太った男がいると聞いたことがあるんですが」

 すると小さい方が顔をしかめて言った。

 「ああ。あいつには関わらねえ方がいいぞ」

 「どうしてです?」

 「あいつは人間だ」

 「え?」

 すると、大きい方が急に立ち止まった。

 「どうしたい。兄貴」

 「人の匂いがするぞ…あそこだ」

 鬼がじっと見つめる方を見ると、一人の男が素早い動きでジグザグにこちらに迫ってい来るところだった。


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