俺は心機一転で新たな道を歩むよ
2話目です。
見りゃわかるか。
翌朝、目が覚めた俺は宿の主人と少し話をして宿を出た。
昨日の事?もうそんなもん、気にするものか。グスン。
宿の主人には、返金はいらないから俺だけすぐに宿泊を取りやめにしてくれ、と言ってきた。もうアイツらとは近づきたくもなかったからだ。
取りやめの話をした時は、宿の主人は困惑顔だったが、事情を説明すると、苦笑いして送り出してくれた。主人の同情の眼差しで涙が出そうになったのは秘密だ。
そして、現在は早朝。通りにはまだあまり人はいない。そんな中を俺はギルドに向かって歩く。
ギルドとは、端的に言えば仲介業者のようなものだ。また、倒した魔獣の素材の買取屋という面もある、俺達冒険者にとってなくてはならない組織だ。
余談だが、ギルドは国とは別で動いており、基本的に貴族連中の影響は少なくて済むため、貴族が嫌いな人間も冒険者になることが多かったりする。
ギルドに着いた俺は、その足で人もまばらなギルド内をカウンターまで直行、寝ぼけ眼をこする受付嬢さんに話しかける。
「すみません、ちょっといいですか?」
「ぁ、はい、いいですよぉ・・・って、ん?んんん!?フィ、フィードさん!?」
まだ寝たりなさそうだったのに起こしてしまったようだ。なんだか申し訳無い気分。
「ギルドカードの事でちょっと・・・」
ギルドカードとは、ギルドで冒険者登録した時につくる、身分証明書代わりにもなる便利なアイテムだ。
ギルドカードには名前の他に、自身の冒険者ランクや所属パーティなど、いくつかの情報が書かれている。
「あ、はい。更新でしたら・・・」
「あ〜、いや、違うんだ。その、作り直しがしたくて・・・」
「・・・・・・・・・へ?」
数秒の硬直の後に少し間抜けのような顔をした受付嬢さん。・・・かわいいなぁ。じゃなくて!
「だからその、ギルドカードの作り直しを・・・」
「ええぇぇ――――っ!!?」
突然の大声量に俺のみならずギルドにいた他の冒険者達(数人)もびっくりしていた。
「マスターナイトの称号まで手に入れたのに、作り直しちゃうんですか!?作り直したら称号なくなるんですよ!?またランクが1番下のFからになっちゃうんですよ!?勿体ないですってちゃんと考えたんですか!!今ならまだ間に合います思い直しましょうよいえ思い直すべきです思い直しなさい!!!」
なんとこれだけ一気にまくしたてた発言は5秒の内に言われたものだ。よく噛まずに言えるなぁ。
「ちゃんと聞いてます!?」
「うん、聞いてるよ。聞いてますから落ち着いて・・・」
「なら、いいですけど・・・で、ホントにいいんですか?ランクとか称号とか」
「ランクならまた上げればいいよ。それと、『マスターナイト』って何?」
「はぁ、そういえばこの人、そういうのに興味ない人だった(ボソッ」
なんだか受付嬢さんの目がじと〜って感じなんだが。なんか悪いことしたっけ?
「はぁ、わかりました。作り直しですね。登録情報とかは前のままでいいですか?」
「あ、名前はフィードにしてくれ。ただのフィード。姓はなしで」
「承りました。・・・はぁ」
いや、受付嬢さんさ、ため息多くない?疲れてるのかな。眠そうだったもんな。
「はい、こちらが新しいギルドカードになります。では、良い冒険を」
最後はマニュアル通りの対応で新しいギルドカードを渡してくれた。
「って、いかん、忘れてた。俺のパーティ脱退の処理もお願いできるかな」
「・・・もう何があったかは聞きません。ただその晴れやかな表情を見るに、悪いわけではないとは思います。せめて、仲間のためにソロで1日のうちの20時間以上を依頼に費やす毎日でなくなることを祈りますよ」
「ありがとう。これから仲間ができたら、無茶じゃない程度にするよ」
苦笑しながらギルドを出る。
俺のいなくなった後のギルドがめちゃくちゃ騒がしいみたいだったが、気にしない。
これからは自由なんだ。
アイツらなんて知ったことか!
勝手に幸せになってろ尻軽女&寝取り魔め!
俺は俺で幸せを掴んでみせる!
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