表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

要らないボクと彼女との出会い

作者: ポストマン

ボクは、いじめられていた。

理由はいろいろあるが、一番はたぶん『陰気だから』。

クラスカーストは最底辺で、最上位の女生徒からはずいぶんと詰られる。

家でもある理由から家族からいない者扱いされている。

もう嫌だ。

いつしかボクは、自殺することばかり考えるようになっていた。




「ちょっと、大丈夫?」

どれくらいぼんやりしていたのか、気がつくとスーツ姿の女性が覗き込んでいた。

「うわっ?!」

「あ、気がついたんだ。ずいぶんぼんやりしてたから心配したんだよ?」

辺りを見回すと、そこはいつも利用していた駅だった。

時刻は、夜の九時。

人影はあまりない。

「さっきからブツブツと何か言っていたみたいだけど、大丈夫?」

「あ、いえ・・・」

久しぶりに他人と話すためか、なかなか声が出てこない。

そんな様子にその女性は、何か察したようで何も聞いてこなかった。

「・・・まあ、何かあったらいつでも話してくれればいいから。私はいつもこれくらいの時間にここにいるから」

そういって彼女は何処かへ立ち去った。

ボクは久しぶりの他人との会話に、ほんの少しだけうれしく思った。




女性と出会ってから二ヶ月半が経った。

あれから女性とは何度も話をした。

いつもの駅、夜九時。

あまり多くを話すわけじゃないけど、それだけでボクはうれしかった。

そんな中、彼女のことが少しずつわかってきた。

彼女の名前はミコト、OLだそうだ。

「それじゃ、またねあきら

「あ、うん・・・」

そういいながらミコトと別れたボクは、いつものように駅のホームに佇む。

「そろそろ・・・」

ボクのつぶやいた声は、電車の到着アナウンスにかき消された。




ミコトと出会ってから三ヶ月、

「ねえ、私のところに来ない?」

彼女は唐突にそんなことを言い始めた。

「え・・・?」

いきなりそんなことを言われて、ボクは言葉に詰まる。

「いっつもこんな時間で少ししか話せないし。ちょっとくらい長めに話でもしないかなって」

「でも・・・」

戸惑うボクに、ミコトはさらに言い募る。

「いいじゃん。いこうよ」

「・・・ごめん、できない」

そう断ると、彼女の雰囲気が変わる。

「なんでよ、断るなんてひどいじゃない!」

「でも・・・」

さらに断ろうとすると、ミコトは私の腕を痛いほどに握り締めてくる。

「ねえ、イイデショ。逝コウヨ一緒ニ・・・」

すでに彼女の姿は変わり果てていた。

パリッとしていたスーツはズタズタになり、手足は血に塗れていた。

そして頭からは中身がこぼれだしており、やさしかった顔は恐ろしい憤怒に変わっていた。

「やっぱり、死んでいたんだねミコト・・・」 

「ソウヨ。私ガ以前振ッタ男ニツ突キ落トサレテネ。ソレ以来私ココニ縛ラレタ。誰モ私ニ気ヅイテクレナイ。ソレガタマラナクサミシイノヨ・・・」

「そうだったんだ。ボクもみんなからいないもの扱いされて寂しかったんだ。こんな、普通じゃない力があったから・・・」

そういいながら、ボクは右手に力をこめる。

「ソレハ・・・」

「『霊力』なんだと思う。ボクはこれのせいで周りから拒絶されるようになった」

「私ヲ除霊スルノ・・・?」

ボクは頷く。

「このままだとミコトは悪霊になる。ボクは友達にそうなって欲しくない、だから・・・」

下を向いたとき、思わず涙が零れ落ちる。

「優しいね、晶は」

その言葉に顔を上げると、そこにはいつものミコトがいた。

「最初は、不思議な気配がしたから声をかけたの。そうしたら私が見えるんだもの。うれしくなって、晶と話すのが楽しくって・・・」

ミコトの顔が、後悔に歪む。

「そのうち晶が妬ましくなって、私は死んでいるのにどうしてって。それならいっその事晶もおんなじになればって・・・」

そういいながら震える彼女を、ボクは抱きしめる。

「ありがとう、ボクはミコトに救われたよ。ボクを見てくれた、友達になってくれたミコトに」

ゆっくりとミコトに霊力を送り込む。

「だから、またね。いつか向こうでミコトに会いに行くから。もっといっぱいお話しようね」

「ええ、絶対よ?あっちで待ってるから。そのときはお互いの彼氏の話でもしましょう。またね、晶」

そういい残して、ミコトは向こうへと旅立っていった。

「お互いの彼氏、か。できるかな、ボクに」

ううん、違う。

できるように頑張るんだ。

「まもなく電車が参ります」

ボクは、数年ぶりに晴れ晴れとした顔で電車に乗り込む。

「またね、ミコト」

(ええ、またね。晶)

~オチ~

「ああ言ったけど大丈夫かな?晶って可愛いとか綺麗よりもカッコいい顔立ちだし。案外彼氏じゃなくて彼女ができたりして」

「ハックシュン!うう、ミコトが噂でもしてるかな?」

「ハアハア、明るくなった晶お姉さまステキ・・・、お持ち帰りしたい・・・」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ