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ひよっこ錬金術師はくじけないっ! ~ニーナのドタバタ奮闘記~  作者: ニシノヤショーゴ
12章 ひよっこ錬金術師、先生となる
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本日はピクニック日和①

「あっ、ミスティさん。この花の名前覚えてますか?」


 木漏れ日が差す森のなか、ニーナが指さした先に咲く青紫色の花を見て、ミスティは大きく頷く。


「これは<コガネバナ>です。濃い青色の花を咲かせる植物ですが、根の部分が黄金こがね色であることから名づけられました。調合素材としても使われるのも根の部分で、解熱や下痢止めの効果が期待できます」


「うん、バッチリですね。ではではさっそく採取してみましょう!」


 わかりました、と頷いて、ミスティは斜めがけしたポーチからスコップを取り出す。先ほどミスティ自身が話した通り根っこが調合素材となるため、如何にこの部分を傷つけずに採取できるかがポイントだ。それをじゅうぶんにわかっているからか、ミスティは慌てることなく丁寧に周囲の土を掘り返していく。初めて森を訪れたときのオドオドとした姿とは比べ物にならないほど、いまは自信を持って採取に臨んでいるように見える。


「うんうん、綺麗に採取できましたね。お見事です!」


「あ、ありがとうございます……」


 ミスティは気恥ずかしそうにはにかみながら<コガネバナ>を<拡縮自在の魔法瓶>に収納した。褒められ慣れていないのか、それとも単純に同い年の女の子に褒められることが恥ずかしいのか、ミスティの耳はちょっぴり赤く染まっている。けれどこの反応はいつものことだ。


 できることが増えたと感じたとき、ニーナはいつも彼女を褒めるようにしていた。そうすることが大事だと、どこかで誰かが言っていたような気がするからだ。ニーナはこれまで誰かに物事を教えた経験がほとんどなかったから、それが本当に大切なのかどうかわからない。けれど自分に置き換えて考えたとき、褒めてもらえたら純粋に嬉しいと思う。もっと頑張ろうと思える。だからニーナも、良いと感じたことは声に出し「良いですね!」と伝えるのだ。


 褒めるたびにミスティは頬を赤らめながら「そんなことないです」と謙遜するけれど。

 ほんの少しずつでも自信を積み重ねていってもらえたならいいなと、ニーナは思う。


 終わったかしら、とすぐ後ろで待っていてくれていたシャンテに、うんバッチリだよ、と答える。

 昨夜の思い付きをニーナはさっそく行動に移していた。今日はみんなでピクニック。もうすぐで<ウルドの滝>まで辿り着く。その道すがらに調合素材を見つけたので、少しばかり立ち止まっていたところだ。もちろんロブと、それからミスティの愛犬であるマルも今回は一緒である。危険が潜む森のなかではあるけれど、シャンテとロブがいてくれるから安心だ。


 ニーナが背負う<天使のリュックサック>のなかには、早起きして作ったお弁当が入っている。料理の腕前ではシャンテに適わないものの、ニーナだってそれなりにはできる。みんなに喜んでもらえるよう、気持ちを込めて作ったつもりだ。そのせいで冷蔵庫の中身はほとんど空っぽになってしまったけれど、そこはまあ仕方がないとしよう。きっとシャンテも許してくれるに違いない。


 そうしてしばらく森の小道を歩いていると、ざぁざぁと水が流れ落ちる音が聞こえてきた。

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