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07話 魔法少女と犬


「ハチ、ニッコリ笑ってる。そっか、頑張って使い魔認定試験を受けてくれる気になったんだね。すぐに終わる内容らしいから、いつも通りのハチで挑もう」

「くうーん」


 オレを安心させるために、優しく頭を撫でて声をかけてくれるブルーベル。

 そういえば、今日のブルーベルの服装はいつものゴスロリ系ワンピースではなく、フード付きの黒い魔法使いの標準ローブだ。ワンポイントに水色のリボンを装備しているから、女性らしさを演出できているが。


 いつもの彼女のファッションとはだいぶ異なり、地味めといってもよいだろう。だが、彼女が持つ本来の素材の良さが分かるのも、シンプルな装備の良いところだ。意外とたまには、こういう服装も良いのかも知れない。


 おそらく朝から忙しかった理由は、ブルーベル自身の装備品の準備で手間取っていたせいだ。他の子達と違って、学校に通わずに家庭教師に英才教育を受けている彼女は、俗に言う『制服』というものを所持していないのだから。必然的に、正装を準備しようとすれば伝統的な魔法使いローブになったのだろう。


「それにしても、シンプルな服装もよくお似合いですよブルーベル様。本来なら華やかさをプラスするために、もっとアクセサリーなども装備するのですが。そういうものがなくても、こんなに美しいとは!」

「えへへ、ありがとう。今日は素質を測定する試験だから、あんまり高級な装備をつけてしまうと、属性が発動して本来のスキルがどういうものか分かりにくくなるし。だから、本来の自分の魔力とハチの魔力で頑張るね」


 あくまでも、肉体に備わった素質を測るのが今日の目的なのだろう。


「もし、動き回るような試験があると、おろした髪では不利かもしれませんな。一応、髪の毛は結っておいた方がよろしいかと。それに、他の同年代の学生は校則で髪束ねているものも多いですしな」

「そうですわね、ぱっと見が大人っぽくなりすぎても良くありませんし。では、姫様。同世代の学生達の定番の結び方にいたしましょう」


 じいやの提案で髪型を整えることになったブルーベル。銀色の長い髪をそのままおろしていると、運動の際に不利だし大人びた雰囲気になりすぎる。


「けど、お茶会仲間達はみんなオメカシしているから巻き髪のハーフアップだし。同世代の学生の髪ってどんななのかしら?」

「女子小学生向けのファッション雑誌によると、ポニーテールやツインテールといったものが一般的かと」

「へぇ。じゃあ、このツインテールって髪型に挑戦したいなっ」


 いろいろな意見が出たものの、ツインテールに結い上げることになった。髪飾りにつけたリボンも、ローブのリボンと同じ水色をチョイスし、可愛いらしくコーディネートされている。


 青い大きな天然石がセットされた杖を片手に装備して、見習い魔法使いの完成だ。まるで、魔法少女アニメの主人公のような容姿になったブルーベルの完成度の高さに、じいやメイドさんも満足そうだ。


「では、ブルーベル姫様にとっても初めての試験ということで、じいやからささやかなプレゼントをさせて頂きます。姫様のスマホに、ステータスオープン機能を追加しておきました。お出かけ前にご自身のステータスを確認して、試験の参考になさってください」


 近代的な文化の異世界だとは思っていたが、スマホアプリでステータスオープンまで可能なのか。ファンタジーと文明がうまく融合していて、なんとも不思議な感じである。


「えぇっ? ステータスオープン機能って、ギルドに加入しないと見れないんだと思っていたわ。あらっ。一応所属のギルド名がある……魔王軍元参謀がギルドマスターを務める本格派魔導士上級ランクギルド『古城のワルツ』。このギルドってもしかして……ブーケ姫が設立したっていう伝統的な」

「ええ。かつて、ブーケ姫が魔族の繁栄を願い設立した伝統のギルド。お恥ずかしながら、現在では私めが副業でギルドマスターを務めるギルドでございます。魔王城に所属する魔法使いは、全員このギルドに加入することになっておりますので。姫様も所属する運びとなりました」


 灯台下暗しというか、何というか。将来的に、何処かのギルドを探すことになると思われていたブルーベルだったが。まさか、ブルーベルのじいやさんがギルドマスターだったとは。

 まぁよく考えてみれば、魔王城で暮らす魔族のお姫様なんだから、必要な施設はこの城内で見つけるのが無難だろう。


「うふふ。ありがとう、じいや。ううん、今日からは、ギルドマスターって呼びますね。よぉし! じゃあ、出発前に気合いを入れる意味も込めて……ステータスオープンッ!」



 見習い魔法使いブルーベル

 所属ギルド:古城のワルツ

 年齢:11歳

 性別:女性

 レベル:15

 HP:850

 MP:380

 装備武器:アクアブルーの杖

 装備防具:魔法使いのローブ見習い用、魔法の水色リボン、トンガリ魔女靴

 物理攻撃力:78

 物理防御力:59

 魔法攻撃力:190

 魔法防御力:210

 スキル:風属性攻撃魔法、闇属性攻撃魔法、補助呪文

 使い魔候補:チワワのハチ


 備考:魔王の娘であるブルーベルは、生まれながらにして強い魔力を秘めた期待のルーキー。まだ、職業は見習い魔法使いであるが、すでに習得が難しいとされる闇属性の魔法を操るなど、資質の高さが見受けられる。

 11歳という年齢を考慮してもエリートであると言えるだろう。

 年相応の女の子らしく、ペットのチワワを自分の使い魔にしたいと夢見ている。ブルーベルとハチの今後のコンビネーションが楽しみだ。



「ほっほっほっ! ちなみに、備考欄は家庭教師の先生達の報告書から、ギルドのステータスオープン製作係が書き起こしております」

「なんか、自分のことがいろいろと書かれていて恥ずかしいけど。期待のルーキーっていうのは、結構嬉しいかも。ハチ、今日の試験頑張ろうねっ」


 生まれて初めてのステータスオープンに、心の奥底から嬉しそうなブルーベル。じいやさんも、ギルドマスターというもう1つの顔を覗かせつつ、なんだか楽しそうだ。そして、メイドさん達に至っては、ステータスオープン出来るまでになった姫の成長を見て、嬉し泣きしている者も。


 オレもノリノリの皆さんのムードを壊すわけには行かず、気合いを入れて「きゃおん!」とチワワにしては威勢の良い声で吠えるのであった。


 ――いざ、使い魔認定試験会場へ。


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