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シークレット・オーガンズ  作者: ウエハル
3/3

マフィアはスパイ

 



 肌に張り付く砲塔、全方位からの砲撃。黒煙が立ち上り、爆発音は街中に響き渡った。

 しかし、ユニスの目に飛び込んできた光景によって嘲笑う予定が怒りに変わった。


「……ゴキブリみたいにしぶとい奴らだ」


 黒煙の二つの人影に、ユニスは顔を顰めた。

 右腕の砲塔だけは融解によって取り除くことはできた、だが左足と頬の砲塔から瞬時に逃れることがテルハ一人では出来なかった。答えは単純明快、協力すればいい。


「……良いセンスしてんじゃあねぇか。助かったぜ嬢ちゃん」


「私のどこが嬢ちゃんだよ……私はリル・ペルフだ。覚えとけ」


 融かした床から二人は這い上がり、リルは口から黒く細い物体を吐き出した。

 腕に重傷を負っているにも関わらず、リルは頬の砲塔を噛み切り、左足の砲塔は靴とキャスケット帽を緩衝材として威力を和らげていた。

 テルハは頬にキスされた気分だが、今はそんな場合ではない。左脚には多少は怪我を負い、ユニスはほぼ無傷。


「……歯が欠けてんじゃあねぇか、後で金歯に変えといてやるよ」


「普通ので充分だっつーの。それよりも、これ」


 リルが手渡したものは、明らかに拳銃だった。ずっしりとした重さを手で感じ、二人して拳銃を構える。その手つきは妙に慣れてており、標準が全くぶれない。


「昔っから手癖が悪くてさ。テルハって言ったけ?この状況、どっちが有利だと思う?」


 体に砲塔は一つも付いていない。あるのは周囲からの砲撃のみ、しかしそれは回避することが出来る。対してこちらは拳銃所持かつ二人がかり。


 静けさが耳を撫でる。ユニスは腕を組み、何かを見据えたような達観の目で二人を見た。


「ただの好奇心なんだが……そっちの女は、能力を使わないのか?」


「……言うと思ってんのか?」


「それを話してくれれば……いや……俺の提案に賛成してくれればお前達を殺さなくて済む。お前達の技量はよーく分かったからな」


 その奇妙な言葉と戦う気力を意識して無くしたような態度に、テルハとリルは今までに無い安心感と違和感を覚える。


 跳梁跋扈を許さない正義感を持つテルハと、怪我をも厭わない覚悟を持つリル。丁度今が年に一度のスカウトの時期、素質は十分すぎるぐらい。きっと自分の顔に泥を塗らない活躍を見せてくれるだろう。


「正直に言おう、降参だ。……そして賛同してくれるならば二人を、俺達の仲間に入れよう。勿論、マフィアではない……スパイだ」




 話を要約すると、ユニスはマフィア組織に長い間潜入している工作員である。主な仕事は銃火器の輸出入だが、本当の仕事はマフィア組織の情報をスパイ組織へと流す事。

 ユニスは、二人を自身の所属する組織へとスカウトしたのだ。


 街の一角。古典的なワイン専門店の地下の貯蔵庫の右から十八番目、下から二番目のワインをどけた奥にある稼働装置を押すことで廃れたエレベーターは作動する。


「言っとくがよ、まだあんたを信用したワケじゃあないんですよ。……オイ、聞いてんスか」


 エレベーターは降下を続け、どこか生意気なテルハを気にも留めずにユニスはタブレットに目を通す。テルハとリルはユニスに連れられ、どこかも分からない場所へと向かっている。


「テルハ……個人情報が偽りだらけだな。まあいい、お前が違う組織から来たエージェントだったなら、ウチは総力上げてぶちのめすだろうからな。求められるのは住所でも電話番号でもない、力だ」


「頭がショートしてんのか?そろそろ説明して欲しいんだけど」


 傲慢な態度でリルが言うと、タブレットの画面を二人に提示した。画面には、一つ眼の周りを周回する球体のマークが描かれていた。


「ジェームズ・ボンドは知ってるな?あれとは少し違うが、大体の仕事はあんなもんだ。……1917年にフランスの富豪達が資金を集めて設立した自警団を前進に、1951年、政府に囚われない国際的な独立諜報機関「メガロマニア」となった。現所属人数は903人、幹部20人とボス1人だ」


「冗談にしか聞こえないんスけど……」


「それが当然の反応だ……俺も最初はお前達と全く同じ事を言っていたし、百聞は一見に如かずだ、迷子になるなよ」


 扉が開き、薄暗い室内に眩い光が差し込む。

 飛行機の機体整備工場にも似た広大な空間がガラス越しに広がり、疎らに人が仕事をこなす。ジェット機から車、はたまた使い道が全く分からない道具が見える。エレベーターが着いた場所は巨大な地下空間。金属材だらけの内部は迷宮のようになっており、ユニスの背中を見失いそうになる。


 二人は目を丸にしたまま、ユニスについて行く内にいつの間にか一人の男の前に辿り着いていた。

 ビシッとスーツを着こなし、ツーブロックの厳つい髪型と真面目そうな眼鏡。シャープな顔立ちのモデルのような男。男はメモ帳に何かを書き込み、鋭い眼をユニスに向ける。


「レオン、俺の推薦だ。後は任せた」


「三分と四十八秒の遅刻だ。テルハとリルだな、情報は貰っている。こちらに」


 二人はレオンという男に案内され、カプセルベットが詰められた用途の想像がつかない大きめの部屋に入る。

 いかにも規則に厳しそうな男だ。それよりも、いつ自分達はスカウトを承諾したのだろうかと、不思議に思った。


「全員整列しろ」


 部屋の中には、数十人の男女がおり、レオンの号令によってとてつもない素早さで歪みなく整列した。意味が理解できなかったが、一旦二人も整列する。


「29人、揃ったな。ではこれから、採用試験を始める」



キングスマンに触発されまくっています。ご了承ください。

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