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Koloroー私は夜空を知らないー  作者: She Line
男が持つのは終焉のらっぱ
33/35

第三十一話 名前の意味こそ運命


「まだ、ルーナに話していないことが沢山ある」

夕飯を食べ終え、のんびりと過ごしていた頃、ルーノはそう呟いた。

「私に、話していないこと…?」

私の問いかけに無言でうなずく彼。それは、今は言えないことなのだろうか。

「…多くは…過去の話になる」

「過去…?」

「死を誘う空の星、生を誘う天の(よう)

「星…陽…」

「それを語るのが、俺の口からなのか、友の口からなのかはわからない」

「友…?」

ルーノがコクリと頷いた。

「だけど、君には…知らないでほしいと願ってやまない」

「え」

知らないでほしい?それは、私が知らない方がいいってこと、なの?

しかし、私の疑問よりも早くルーノが疑問を口にした。

「ルーナ。どうして世界に朝と夜が訪れるのだろう」

彼の問いに私はただただ天井の硝子の向こう、さらに水の先にある空を思い浮かべた。

黒の街(ブラックタウン)の曇天の空とは違い、きっと今は星空瞬く空が見れることだろう。

「どうして人は眠たくなり、何故人は永久に争うのか…」

彼の言葉に耳を傾けた。純粋な疑問なのだと思う。

誰しもが一度は考えるような簡単な問い。複雑と化した答え。

…そもそも答えはあるのだろうか。答えというものはないのだろうか。

答えがない、と言うのが答えなのだろうか。

「この世界は夢なのだろうか」

彼の言葉は酷く純粋な疑問に満ちていた。だけど、その問いに答えは返せない。

「ところで、ルーナ」

「ん?」

「君に(あざな)をつけなければいけなくなった」

「あ、ざな…?」

「偽名のこと」

「どうして」

彼の言葉に首を傾げた。今更偽名を名乗る必要があるのだろうか。

「【白の翼】はルーナ、という名前で君を捜すことだろう。

少しでも長くバレないようにしたい」

彼の言葉になるほど、と納得してしまうも、ルーナと言う名前が気に入っていたからこそ少し淋しくなった。この名前で呼ばれなくなる日が来るのだろうか。

私の不安を感じ取ったのか、ルーノが笑って私の頭を撫でた。

「大丈夫。俺と二人の時はルーナだから」

彼の笑みに私も安堵する。名前が変わったくらいで何かが変わるわけじゃない。

彼との関係も、これからも、変わらないはず。

「じゃあ、その、字は何にするの?」

「うん、もう決めてある」

「え」

彼の口から出た言葉。


「スンフローロ」


それはどこか懐かしい響きで。

「長い、ね」

「愛称はフローってとこだな」

「あはは、なんか可愛いかも」

「ルーナが気に入ってくれてよかったよ」

「うん、気に入った」

この名前の意味を知るのは随分先になるのだが、私はこの名前の意味を知らなくてよかったと、遠い未来の私は思っただろう。



名前、というのは単純に親が付ける名称で。

それは意図せず運命をも担う呪いとなる。

薔薇には棘があるように、どんな美しい名前にも闇がある。


それは、元の世界の私の名前も、スンフローロと言う新しい名前も

…ルーナと言う大事な私の名前でさえ。



「ルーナ。君はこれから名乗るとき、スンフローロ、と名乗るんだ」

「わかった」

自分でもうまく切り替えられたらいいけど、なんて思いながら彼の言葉に頷いた。

すると彼は、私が服の下に隠してあるネックレスを服越しに指差した。

これは公爵家に行く前にルーノがプレゼントしてくれた大事なネックレスだ。…いや、実際には黒のコローロがプレゼントしてくれた物なのだが…会ってないし…。

「もし、そのネックレスに反応する人がいたらこう問うんだ」

「…うん」

「貴方は何色が好きですか?と」

「…は?」

思っていた斜め上の答えが帰ってきて私は思わず聞き返してしまった。

「必ず答えてくれる」

「その質問の意図は?」

「自ずとわかる」

「いや、そこで好きな色の名前言われてもなぁ…」

時々ルーノの考えていることがわからなくなる。ネックレスに反応してるのに好きな色を尋ねるだなんて不思議なことじゃないだろうか。相手に不信感を抱かれても仕方ないと思う。

だけど、彼がここまで堂々と言い切ってしまうのにも訳があると思う。

「…でも、ルーノのこと信じて言ってみるよ」

「ああ」

私の答えに満足げに頷いた彼は少し大きめの欠伸をした。

「あ、もうそろそろお風呂に入らなくちゃ」

「ああ、早く入ってきてくれ…今日は久々に動いたから眠たくて仕方ない」

「ルーノがそんなに無防備に欠伸するの初めて見たかも」

「きっとルーナと二人だからだな」

「今までも二人っきりだったじゃない」

「さぁ、こことあそこじゃ違うんだよ」

私は荷物から着替えの服を出すと、ハッとしてルーノのほうを向いた。

黒の街(ブラックタウン)にいる時は忙しくてできなかったけど、私忘れてないからね」

「ん?」

「一緒に服買いに行こうねって約束!!」

私の言葉にルーノは驚いた顔をするとすぐにクスクスと楽しそうに肩を揺らした。

「わかってるよ。さぁ、入っておいで」

「はーい」


…夜の川の中は不気味なまでに真っ暗だったが、一筋の光だけが辺りを照らしていた。

月の光だと推測できたが、水に覆われて確認することは不可能だった。

当たりを泳ぐ魚が船内の灯りに気づいて物珍しそうに周りを泳いでいた。

変わらずゆっくりと動いていく【海豚のボート】号は次の街、黄の街(イエロータウン)に続く陸へと真っ直ぐに進んでいっている。

シャワー室はさすがに分厚い壁で覆われていたけれど、水の中を走って行くモーター音が妙に響いて聞こえた。すっかり長くなったこの髪を丁寧に洗い流す。

「…そろそろ、縛るか切るかしなきゃダメかなぁ…」

元々長い髪だった私の髪もすっかり肩甲骨より下の長さまで長くなってしまった。

髪留めも持っていないし、この世界に美容院などあるのだろうか。

「自分で切る…のはちょっと…」

長くて黒い髪が、私は異世界から来た人間なのだと言いたげに最初は見えていたが、ルーノが黒髪だから、次第にこれは兄妹の証なのだと、そう思うようになった。

私がこの世界に来るまで、ルーノと私は出逢ったことがないはず。

だけど…彼を血の繋がりがなくとも心の底から敬愛してやまない兄だと言える。それだけは確信を持って言えた。


全身を洗い流し、タオルで髪と体を拭く。

ネグリジェを纏うと自然と眠気が私を誘った。

お風呂から上がったことだけ伝えれば、もうこのまま部屋に行って眠ってしまおう。


ルーノのもとへ行くと、彼もうつらうつらと舟を漕いでいた。

何も知らない私を連れて、リードしながら旅をするのはいつもより疲れたことだろう。

シャワーは明日の朝にして、もう彼は眠ってしまった方がいいのじゃないだろうか。

眠っている彼には悪いが、起こしてしっかり布団で眠ってもらったほうが体は休まるだろうう。

「ルーノ…」

彼の肩に手を置く。ビクリと反応した彼が私を虚ろな目で見た。

「お風呂からあがってきたよ。もう寝たらどう?」

髪を乾かすには魔石の力を借りるが、それは一人ででもできる。

「ルーナ…?」

彼は寝ぼけた様子で私の名前を呼んだ。私は彼の言葉に頷く。

「やっと俺の言葉に……………っ…もう上がってたのか」

彼が何かいいそうだったが、夢の中の続きだったのだろう。少し頭が覚醒したようで、私の存在にやっと気が付いた。

「俺も入ってくる」

「大丈夫?このまま寝て、明日でもいいんだよ?」

「穢れたまま寝れない」

「穢れたって…もう」

「ルーナは一人で髪を乾かせるか?」

「もちろん!もう何回やってると思ってるの」

「じゃあ、部屋に先に行っててくれ」

「…一緒の部屋で寝るの?」

「たまにはいいだろ」

「あはは、仲良過ぎでしょ私達」

「そもそも、命狙われてるルーナを一人部屋で寝かせられない」

「そっかぁ。昨日もルーノ、私の部屋で寝てたもんね」

「何があっても護るから安心して」

「ルーノといるから私はずっと安心してるよ」


ルーノがシャワー室へと消えていく。

流石に水の中なのだから追手

ルーノとルーナはあくまで兄妹であり、恋人ではありません。

親や兄のラインを超えて仲良くしていますが、そこに恋はありません。

親愛に近い物です!って言うのを理解していただけたらなと思います。


後にルーナは恋をするのですが、それはまた追々…。


ルーナは大人びていますが、まだ16,17の現世で言う女子高生です。

まだまだ子供なので、不安なこといっぱいです。

きっと、これからも不安ありつつ、色んな世界に私も連れて行ってくれるでしょう!!


いつもご愛読ありがとうございます。

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