第二十八話 だいたい朝日見ると眠たくなるのが人間の性
更新遅くなってすみません!!!!!
*音楽家ミーラ―クルムからミラコロ、間奏曲エンボリウムからインテルメッゾへ変更いたしました。
あらすじ
異世界トリップしてきたJK、ルーナ。
大きな変化もなく、自然と異世界に溶け込んでいった彼女。
共に暮らしていたルーノとともにある日、公爵家へ行くが、そこで古代魔法【ルーン】を無意識に使ってしまう。【ルーン】を使ったことに気づいてしまった謎の組織【白の翼】にルーナは命を狙われることになり…。
【ルーン】は自然と共鳴する力。
感情の欠乏は【ルーン】の暴走を呼び起こす。
感情を理解し、【ルーン】を正しく使うため。
彼女は新たな街、黄の街へと向かうことを決めた。
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むかーしむかし、そのまたむかし。
おとこがもっていたらっぱがおわりをよんだとさ。
めでたしめでたし。おーしまい。
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持って行く物は最小限。
少し大きなカバンに着替えと食料を詰めて、人目を忍んで早朝の街を二人で駆け抜けた。
早朝の黒の街はとても暗く、黒い家々がまるで覆いかぶさる影の様に私達を取り囲んでいるようだった。いつもは見えている橙色の灯りも今は見えない。
圧迫するように立ち並ぶ影が、今はなんだか恐ろしく見えた。
出て行くの?置いていくの?何処へ行くの?
後ろ髪を引かれるように背後から呼びかけられている気がした。ちゃんと挨拶をして出て行くべき?いいえ、誰にも言わずに黄の街に行くと決めた。
信頼できるのは目の前を行くルーノだけ。
“【黒の竜】の反対組織が【白の翼】。
で、【白の翼】はあんたの命を狙っとる”
命を狙われている。だから誰にもばれずに出て行かなければならない。
らん
らん
らん
らん
らん
らん
白い雪が降り積もる中、私達は足早に西を目指した。
鳴り響くのは小さな雪の音と私達の足音のみ。静寂とはまさに今だった。
東から伸びる道沿いに進めば黄の街へと行けるらしい。だが、住んでいた場所から黒の街の最東端に歩いて行くのは少々時間がかかるらしい。途中で蛇王さん達が用意してくれている馬車があるとのこと。
人目を憚るように歩くなんて初めてで、違う音が聞こえただけでも心臓の音が跳ねあがりそうになる。
殺されるんじゃないかと言う恐怖感。
後ろを振り返った。暗闇の中に紛れ込んだ私達の家と教会が、もう既に遠くにあることを感じた。教会も家も空き家にして大丈夫なのだろうか。
確かに盗まれるようなものは置いていない。荒らされたってもう帰って来れるかもわからない。
違和感が胸を押しつぶした。
教会に荷物を置いていたはずだと、昨日、私は仕事部屋へと向かった。
公爵家の家から帰ってきて、初めて教会に入った。
小さな違和感だけが、私の胸の中に残った。でも、それが何なのか、今は思い返すこともない。
ふと、前を歩いていたルーノが立ち止った。私も続いて止まる。
雪で歩きにくいにもかかわらず、いつもより早く歩いていたせいか息が切れた。
「ルーナさんとルーノさんですね」
陰に隠れていた男は姿を現した。私は硬直してしまう。
「ルーナ。大丈夫だ。コイツの服装を見ろ」
…暗闇に慣れた私の目は、男の服装をよく観察することができた。
男の格好は蛇王さんと同じ、軍服。
「驚かせてしまってすみません。馬車はこちらです」
暗闇の中を男は慣れた様子で歩く。私達もその後を追った。
しばらく男の後ろを歩いていると、以前乗ったのとは違う、少し小さめの馬車があった。
不思議なことに、それには馬がついていない。
「動力源は魔石…か」
「馬だと音がうるさいので、勿忘草ではこれを愛用しています」
「よくこんなの持ってこれたな」
「蛇王の命令なんで」
男は愛想なく告げると、御者の位置に座った。
私は彼の様子を見て、信頼していいものかと内心疑ってしまう。あまりにも愛想がないし、蛇王さんのような雰囲気でもない。…いや、十人十色、と言ってしまえばこれも彼の個性なのだろう。だが、私はうまく信じることができなかった。
「ルーナ?」
「えっと…」
「ルーナさん、ルーノさん。早く乗らないと気付かれます」
「ルーナ、わかるよな」
裏切るような相手をルーノは簡単に信頼しないだろう。だとすれば、彼は簡単に裏切らない人なのだとわかる。だけど、その馬車に乗るのは気が引けた。
男を信頼していないからか?それとも他に何か信じられないものが…?
「そうか…この馬車には…」
ルーノが呟く。
「この馬車には確か、魔石の他に海蛇の鱗が入ってるな」
「…よくわかりましたね」
「ルーナ。お前が恐れているのはそれだ」
「…海蛇の、鱗…?そんなものに?」
一体全体、何故そんなものに脅えなくてはならないのだ。だが、彼は私の問いに答えるより早く、次の問いを投げかけた。
「馬車には乗れるか?」
「…わからない」
ルーノから視線を逸らす。海蛇の鱗、そんなものに脅えて乗らないだなんてバカな話だと思う。何故、それに脅えているのかすらわからない。
もしくは怯えているのかもしれないが。
「じゃあ、俺を信じることはできるか?」
その言葉に、私は彼の瞳を見た。長い髪の隙間から少し垣間見えた金色の光。どこか懐かしい、黄金色。
「信じてる」
「よし」
彼は私の答えを聞くと私の腰を抱きかかえた。謂わば荷物担ぎである。
「ちょ…!?」
「頼んだ」
「はい」
男が備え付けられたいくつかのボタンを慣れた手つきで押す。全くの無音だが、まるで車のようにエンジンがかかった音、ハンドルなんかも出てくるものだから唖然として見てしまった。その拍子に彼は私を担いだまま、器用に扉を開けて馬車の中に入った。
「う、わぁ」
暗闇の中だったからか、色なんてものはわからなかったが、馬車の中の輝く光に一瞬目を瞬かせたものの、その美しい光景に私は感嘆し目を見開いた。
ホライズンブルーのカーテン、アクアマリンのソファ。縁にあしらわれた控えめな銀が青を引き立て静か且華やかな見た目となっている。
そして、中央のランプのように吊るされた青い、蒼い鱗。
「…これが…海蛇の鱗…?」
照らされた室内の輝きを反射して魅せるその蒼は、空のように透き通っているようにも見えるし、海のように底のない深さも感じられる。…これが、私の怖れているもの…?
気が付けば、ルーノはソファの一つに私を下していた。
「正体を知れば呆気ないものだが…ルーナはそれを恐れる理由がちゃんとある」
「…私が、これを恐れる理由…?」
ふと窓の外を見た。静かすぎて気づいていなかったがもうとっくにこの馬車は走り始めていたらしい。まさに車の中のように走りぬけて行く外の光景が、いつもと違うように見えて不思議な感覚だった。
「…蛇王から、ルーナ自身がやらなきゃいけないことは聞いたな?」
「…うん。感情欠落をなんとかして、ルーンを使えるように…だったかな」
「感情欠落…って言い方は…その、正しい言い方ではないが、一般的にはそう言われる」
「一般的…」
社会的な、と言う意味だろうか。当たり前の知識ではそれを欠落だと言うが、実際はそうじゃないよみたいな?うーん、難しい。
「欠落、と言っても無くなってるわけじゃない。押し込めているだけだ」
「…押し込める…」
「例えば…人には感情の絵の具があって、それは常に色鮮やかにつけられるものだとするだろう?その絵の具は、赤だったり、青だったり、黄色や…ほとんどが原色だ。
そこに色を足していくことで、人は上手く感情をコントロールする」
「…例えば…?」
「悲しみと怒りが交じって嫉妬になったり、悲しみが薄れて水色になることもある。逆に濃くなれば深い悲しみになる」
「…なるほど…」
「ルーナはその絵の具の配合が上手くいってないだけだ」
「私が?」
「そう」
…蛇王さんに言われた時、そうなんだな、なんてすんなり聞いていたものだが、やはりもう一度聴くと不思議な感じがする。だって、自分では感情のコントロールがうまくいってないなんて思ってないのだから。
感情を押し込める。それは蛇王さんにも言った通り、大人の対応に近い物だと思っていたが…決して、わざと感情を押し込めているわけじゃなかった。
「ただ、普通の人間だって難しいことなんだ」
「…普通の…」
「俺も感情を出すって言うのが苦手だし、逆に蛇王みたいに感情を出しまくる奴もうまくいってない証。みんなそれぞれある」
彼の言葉になるほど、と頷く。私一人の問題じゃないのか。
「ただ、ルーナに感情のコントロールをうまくやってほしいのは、【ルーン】を上手く使うため。そして二つめは、あまりルーナに感情を押し込んでほしくないから。わかるか?」
キョトンとした。押し込んでる?
「…むしろ、ルーノと一緒にいる間は素を出してるつもりだった」
「うん。無意識かもしれないけど、俺もルーナもお互いの感情がわかる。だから、感情を出しやすい。…だけど、我慢しすぎているところも多々ある。そうだろ?」
はて、そうだっただろうか。自分では上手くやってきたつもりだったが…。
上手くやって来た、つもり。つまり、自分自身にも感情を誤魔化してきたってこと?
「例えば、ルーナは俺がいなくなると不安を感じるし、初めての人に会っても不安になる。なのに君は平然と笑顔でいるんだ。だから人は大丈夫なんだと安心する」
「…でも、それぐらいで不安感じたって仕方ないし…」
「甘えたいときに上手く甘えられないし、自分の思ってることは心の中だけで押し込めることが多い」
「…うぐっ…」
「例えば今は、コントロールできてないって言われてビックリした衝動からちょっと怒りたかったけど、必死に冷静になろうと自分に言い聞かせてるし、俺の話を聞いてパニックになってる反面それに気づかせないよう取り繕っている」
「……なる、ほど…」
「もちろん。ここで起こることもパニックになることも正解だとは言わない。
でも君は、その内なる感情を隠す傾向にある。…自分自身に対してもね」
自分でも気づけない内なる感情。隠している気持ち。それが、欠落と言われている感情…。
「だから、これから行くところにいるのは【色】のプロフェッショナルだ」
「【色】のプロフェッショナル…」
「まずは黄の街。またの名を喜びの街。
世話になるのは音楽家ミラコロ率いる【間奏曲】という音楽隊だ」
「え、音楽隊!?そこで何するの?」
「楽器を吹くんだけど?」
「はい?」
「黄の街は芸術の街だからね」
「…え?わかんないんだけ…ど…」
ふと、顔に眩しい光が当たったのを感じた。外の景色を見ると早いことに|黒の街の最西端のほうに来たらしい。朝が来た…いや、それどこか…。
「太陽だ…」
眩しい光。厚い雲に覆われて見ることが叶わなかったその光が、私の顔を照らしていた。これから先の心配を拭い取るように。街並みは変わらず黒い家々ばかりだが、光が照ってるおかげでいつもの暗さよりもどこか活気が見られる。
「心配ないさ。俺がいるんだから」
「…どこから出てくるのその自信…」
聞きたいことは山ほどあったが、とりあえず、この馬車に連れられ行くしかないようだ。もとより、家に戻るという選択肢は残っていない。やるしかない。
「なんか、眠たくなって来た」
「少しだけ眠ってごらん。よく寝れるはずだから」
隣に座っていたルーノの肩に寄りかかる。彼は持ってきた荷物の中から毛布を取り出すと、私の膝にかけてくれた。太陽の光と毛布の温かさが優しい眠りを誘った。
そう言えば昨日、緊張して上手く眠れなかったんだっけ…。なんて、微睡みの中で考えるも、すぐに夢の中に誘われた。
更新が遅くなってすみませんでした…。かれこれ一か月以上更新してないのでは…。
あの後、色々ありまして…私の言い訳を聞いてください…←
祖母が亡くなった後、ぎっくり腰になったんですよ。
でも、祖母のことがありましたし、春休みなんで旅行に行こうなんて考えてたので、気が付いたら腰が悪化してまして。もう座ってもいられない。仰向けじゃないと耐えられないレベルで…。
腰が治ったのが先週のことです。
しかし、四月から体調を崩し、吐き気と吐き気と吐き気に襲われまして(笑)
それで食べないでいると今度は頭痛が酷くなるんですよね。はぁ…。
昨日、やっとおかゆを小さなお皿半分ほど食べれるようになりました!
…なので、これからも亀更新かもしれませんが、なるべく書きに来ますのでどうぞよろしくお願いします。




