第二十一話 しかし変わらず海は穏やかなままだった
無機質な機械音が聞こえる。
文字が並んでいるような、そんな音が聞こえる。
その音の正体が知りたくて目を開こうとしたが、何故だか全く目が開かない。
それどころか、眠たくて、眠たくて、どうしようもない。
そういえば、ルーノはどうなったのだろうか。
(どうなった?)
彼らは生きているのだろうか。
(彼ら?)
早く、速く、ここから出て………。
(ここって何処?)
この機械音の名を私は知っている。
彼女の名前は、システィーナ……破壊の女神………。
重たい瞼を開けると、見慣れない部屋が広がっていた。
雰囲気から察するに公爵家の部屋の一室だろう。ベッドのフカフカさが普段と違う。
「ルーノ…?」
いつもなら傍にいてくれているルーノがいない。隣で眠っているのかと周りを見渡したが、何処にもいない。何故だか知らないが、妙な胸騒ぎを感じた。私は彼を探そうと体を起こした。
無理矢理起きたら頭が朦朧とした。ぐるぐると視界が回るがジッとしていられない。
ルーノは?何処?何処にいるの!?部屋中を見回したが、あまりにも部屋が暗すぎて端の端まで見ることができない。暗い部屋に灯りをつけようと近くを見たが、どうもスイッチがどれなのかわからない。
焦りを感じた私は無性に叫んでいた。
「Erif a Thgil!!」
我武者羅だった。部屋中に灯りがつくと右から左にぐるりと見回した。
→いない
←いない
頭を揺らしたせいか、ぐらりと揺れた視界に倒れそうになった。だが、グッと堪えてベッドから起き上がると、私は出口を求めてルーノを探そうとする。
扉は右側にある。急がなければ、急がなければ、彼は、彼は………!!!!
扉を開けようとドアに駆け走り、ドアノブに手をかけた瞬間、力を込めていないにもかかわらず、扉が自然と開いて前に倒れた。誰かが扉を開いたのだろう。私はその人さえも飛び越えてルーノを探しに行こうとした。
ぐらりと世界が歪む。そんな私をその人は支えてくれた。
知っている温もり、匂い。
…嗚呼、彼だ。
私は彼に支えられたまま、彼の服を掴んだ。彼はまだ正装のままだ。
だが着替えている時間はない。
「ルーノ!!逃げ、逃げて!」
「…ルーナ?どうしたんだ?」
彼は興奮して暴れそうな私の肩を抑えて不思議そうにこちらを見ている。
早く、早くしなければ、貴方は…。
「システィーナが!!」
私の言葉を聞いて彼は驚いた顔をした。驚愕、という言葉が良く似合う。
だが、私も彼の表情に驚いた。…違う。こんな反応が返ってくるはずが、ない、のに?
そこで私はふと我に返った。
システィーナってなんだっけ。私、何を言って…。何に恐れて…。
「熱に魘されたんだな。ルーナ。可哀想に」
彼は私を抱きかかえるとゆっくりとベッドまで連れ戻す。ベッドに私を横たらわせると、落ち着くようにゆっくりと彼は私の背中を擦った。上下にゆっくり、ゆっくり。
混乱して上がっていた息も次第に落ち着いていく。瞼を下した。
ぐらりと揺れていた視界が元に戻って心地がいい。私は何に焦っていたのだろう。
「大丈夫。傍にいるから。安心して」
彼に言われて私はゆっくりと深呼吸を繰り返す。
「あぁ、首元がこんなにも熱い。熱が上がってる証拠。
ルーナ、きっと君は悪い夢を見ていたんだ」
悪い、夢?そう、私夢を見ていた。
「システィーナなんてここにはいないし、逃げる必要もない」
そうね。私もシスティーナなんて初めて聞いた…なんで逃げようと思っちゃったんだろ。
「今は落ち着いて、ゆっくりと。熱を治したら家に帰ろう」
家に、帰る…。そうだ、家に帰りたい。
「帰ったらしばらく安静にして眠るんだ。その時は傍にいるから」
彼が私の頭をポンポンと撫でた。大きくて、温かい手。
そうだ。私は何を恐れていたのだろうか。
システィーナって何、そもそも何から逃げるというのだろうか。
あまりにも夢をリアルに感じていたのだろう。私の体は随分熱に参っているらしい。
自然と冷静になって笑うと、彼も安心したように笑った。
「離れていてごめん。驚いただろう」
「大丈夫…」
「これからはトイレも一瞬で済ませてくる」
「…それはゆっくりしてきてください」
「下痢だったらごめん」
「それは本当にゆっくりしてきて、っていうかここで絶対に漏らさないでね」
もう、力ないんだから笑わせないでよ。なんて笑った。
静かな空間、彼が部屋の違和感に気が付いた。
「あれ、そう言えば、俺が来る前に誰か来た?」
「え?…わかんない、寝てたし」
いたとしても気づくほどの余裕がなかったとも言える。
「部屋の灯りがついてるから」
「…なんでだろ…私が起きた時は暗かった気がするけど…」
ルーノが部屋の灯りを見ながら何かを考えるように私の手を触った。
相も変わらず彼の掌は温かい。熱はまだ上がるのか、寒気が酷い私にとって心地のいい温度。人の温もりってあったかい。
「…………ルーナ……ゆっくり、寝るんだよ」
その日、私は眠っていて知らなかったのだが、黒の街に地震が起きたという。
被害が出るほど大きくないが、誰もが感じるほどの大きな揺れ。
星の光は太陽を超え月を照らす。
隠されていた銅像も、闇夜の陰から現れた。
「…これは…!!!!!」
「父さん、何が…」
「スーノ像が光っておられる…!!」
「この、像は、一体…」
「何かが、起こると言うのか…」
竜の頭に隠されていた銅像、錆びて昔の華々しい栄光は消えているが、それでも微笑む彼女の姿。
像の足元に刻まれた言葉。
“愛しい君を殺した世界を許さない”
雪に埋もれた黒い影が
谷底で眠っていた悪餓鬼が
砂をも燃やす紅蓮の炎が
瞞しの森を見下ろす瞳が
甘い蜜に縛り付けられた破滅の牙が
海の底に眠る悪食が
久方ぶりの光に眼を開いた。
「……Thgil a hsiugnitxe」
その光もすぐに男の手によって消された。
まるで幻だったかのように全てに静寂が訪れる。
彼は全てを知っている。彼女がここにいる意味も。
昨日、幼馴染と街にお出かけしに行ったのですが
まぁ歩く歩く!!彼女は体力があるんだなと改めて思いました(笑)
普段、ランチ食べて、喫茶店で永遠と喋って…みたいな友達付き合いをしている私ですが
幼馴染は私と喋る!よりかは、私と買い物に行きたい!みたいで。
特に沢山何かを買うわけじゃないのですが、雑貨店なんかをウロウロしました。
しかし、もう歩きすぎて帰り道足がパンパン!昨日は珍しく健やかに寝ました(笑)
でも、ケーキ食べたからカロリー的にはプラスなんだろうな…




