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Koloroー私は夜空を知らないー  作者: She Line
太陽に憧れる女
13/35

第十二話 朝の占いってなんか気にしちゃうよね


「じゃあ、失礼します…」

「はーい」

今、私はディアンさんに明日着るための服の採寸をしてもらっている。

採寸をする。つまり、しっかりと自分の体を測って貰わなければならないので、私はいつもの服装を外して下着姿になっている。とは言っておくけれど、うっすいワンピースを着ている姿を見られているようなものなのであまり羞恥心とやらはない。むしろ、私のこんな姿見て喜ぶのは変態だけだ。

「…腕上げてもらってもいいですか?」

「はい、どうぞ」

何やら、小学生の時の健康診断を思い出すよう。

楽しかったようで、悩みが多かった思春期の六年間…この世界でも思い出すことがあるんだなと少し笑ってしまった。

「あ、変なところを触ってしまいましたか?」

「いえ!全然!ちょっと違うこと考えてて笑っちゃって」

私はいつものようにヘラヘラと笑って答えたが、彼は少し表情を曇らせた。

「…そう、なんだ」

顔を動かしたら体も動いてしまいそうで、真っ直ぐ前を見ながら私の体の採寸をする彼の様子を観察していた。


実のところ、この世界に来てから自分の姿を見ることはなかった。

家にも教会にも全身どころか顔さえも映す鏡はなく、ましてや窓の反射で自分の顔を見るほど興味はなかった。最初のころに来た時は少し小太りな自分の体系そのままだったし、異世界トリップで美人になるのとか夢のまた夢か、と諦めていたからである。

ところが、この世界に来てから毎日全身を使って教会の掃除、それから毎日雪道を歩いて帰っているし、家に帰ってからもなるべくお手伝いをしている。ご飯は美味しくておかわりするほど食べているが、これと言って太るような食べ物をたらふく食べていたわけじゃない。

そのせいか、私はみるみると痩せて行って、気になっていた腹の肉も人に見せて恥ずかしくない程度にしかついていない。嫌な痩せ方ではなく筋肉になっているのか太ももや脹脛(ふくらはぎ)はムキムキだ。

顔は別に元から美人ではないが、痩せたおかげでそれなりに見れる顔にはなっているだろう。


とにもかくにも、私はそんなどうでもいい私の体を少しでも乱暴に扱えば壊れてしまうのではないかというほどに丁寧に扱ってくれるディアンさんのこととても優しい人だと勝手に感じる。

「一通り、採寸はしたかな」

「なるほど、ありがとうございます」

尻やら胸やら採寸されたが、恥ずかしいとは思わない。だってこれ、仕方ないしね。そもそも言わないルーノが悪い。

「寒いでしょうから着替えましょう。部屋から出ますね」

私は彼の言葉に首を傾げた。

「え?別にいてもらっても構いませんけど?」

「はい?」

彼は私以上に疑問形で返してきた。

「いや、だってほら、別に下着姿は見られてるわけですし。別に今から脱ぐわけでもないんで。あ、あれでしたら背中向けてもらっても構わないので」

「いやいやいやいや!ダメでしょう!!」

私の言葉を茫然と聞いていた彼だったが、ぶんぶんと顔を激しく横に振り、意思を表示してきた

「…えーっと、別に女として見られてると思ってませんから大丈夫ですよ…?」

私はにへらと笑いながら答えたのだが、彼はどこか悲しそうな顔をした。また、おかしなことを私は言ってしまったかと焦ると、こちらに近づいきた彼は私の頭のてっぺんを少し強めに叩いた。

「え」

「部屋から出て行くからゆっくり着替えて」

こちらに見向きもせずガンガン部屋の扉に向かうディアンさん。

「あ、ちょっと…」

彼は私に対して初めて強い言葉を使った。それぐらい私は彼に酷いことをしたのだろうか。引き留めようと声を出したが、彼の歩みは止まらない。

「あと!」

だが、出る瞬間、一度だけディアンさんは立ち止まってこちらを向いた。

「産まれ持って君は女の子だってこと、忘れないで」

彼の言葉に返す言葉もなく、黙ったままでいると彼は扉を閉めて出て行ってしまった。

どうやら、彼は女の子として見ていてくれたようだ。嫌な意味でもなく、変な意味でもなく。

そう言えば父親もよく部屋の扉を開けて着替える私に怒っていたっけ、なんて思う。

どうやら私は他所(よそ)の人が思っている以上に自分のことを大事にしていなかったようだ。それを今日初めて出会った初対面の人に言われるぐらいなのだから…相当、やばい。

思えば、異性として見られない子供な中学生から、大人の仲間入りに近い高校生になったのだから。そりゃ男の人だって気まずいよね。…とは、思う。後で、謝ろう…。


服を着替えるのは何かと面倒で、難しくて、最初は戸惑っていたのだが、実際のところ、毎日着替えていると段々と慣れてきたようでルーノに直されることもなく私は着替えれるようにはなってきた。

パパっと着替えて皆のもとに行こうと今いる仕事部屋から出る。昼食を持ってきたレザンさんがちょうど来ていたようで、神父様とレザンさんのいつものやり取りにディアンさんも加わり、ルーノは少し距離を取って見ていたようだが巻きこまれた様子。


楽しげに話す四人、日常的かのように行われるやりとり、響く笑い声。

…この世界に来て初めて、私は孤独感を感じた。


それはあまりにも勝手で我儘な孤独感ではあるものの、自分を誤魔化すことができないほど寂しいと、辛いと自身の声が訴えてきた。

神父様に楽しげに話すレザンさんは、ディアンさんにもにこやかに話す。

私にとって、ディアンさんは日常的にイレギュラーな存在だと思っていたが、彼らにとってディアンさんこそこの場所にいることが本来は正しく、私のほうがイレギュラー(非日常的)なのだと、そう、気づいてしまった。

何もそれに臆することはないのだ。だって、異世界から突然やってきた私が、たかが数週間でこの場所にいることが生まれてからずっとこの街にいるディアンさんより当たり前になることはない。


そして、今、ここで四人のもとに駆け寄って仲間に入れてもらうこともできたはずなのに、私は音もたてずにそっと、もといた仕事部屋へと戻った。

元の世界から私は、ああいうグループの輪に入る勇気はない。そこに私が入って邪魔をするのではないか、とか、私がそこにいて気を使うのではないか、とか。上手く会話に入っていかないければ自己否定。そういう人間関係には疲れているのだ。

せめて、こんな辛い気持ちになった時ぐらい、一人で心の整理をするための時間が欲しい。そうやって、いい訳ばっかり言い続ける自分にも嫌気がさしていたが、神父様達の会話が落ち着くまではこの部屋で着替えをしていると思わせておこう。

私は暗記のための本を手に取り、いつものように椅子に座って暗記をしようと思った時だ。


扉が強く開けられた。


「「「あーーーーー!!!!!」」」

響く三人の声、レザンさんとディアンさんと神父様。

「やっぱりルーナ。着替え終わってたのか」

扉を開けた張本人は座っている私を呆れたように見ていた。私はついてもいない嘘がばれた気がして怒られるのではとビクビクしたが、ルーノが次の言葉を発する前に神父様の発狂が聞こえた。

「ほらもう着替え終わってたからいいけど着替えてる途中だったらどうすんの!!」

しかし、ルーノは無視をする。

「なんで椅子に座ってるんだ。勉強はいいから、昼ご飯を食べよう。もう腹が減ってしんどいんだ」

「聞いてる!?ルーノくん聞いてる!?」

ルーノが私に手を差し伸べてくれた。その手は相変わらず血の気のないほど色白だったが、その手を握り返すと、彼の体温を感じられた。とっても温かい。もしかしたら、さっき私が皆のことを見ていたのに気付いていたのかもしれない。

「みんな、待ってたんだよ」

それでも、怒ることなく彼は優しい顔で私にそう言った。それは私が一番欲しかった言葉で。

「うん!」

結局私は、寂しがり屋で甘えたなのだと、気づかされる。


―☽―☽―☽―☽―☽―☽―☽―☽―☽―☽―


彼女は死んだ。それは春の夕暮れ。

全ての哀しみも苦しみも抱きかかえて、独り、逝った。


彼女がいない夜、独りぼっちの朝、私は気づいた。

結局私は…


―☽―☽―☽―☽―☽―☽―☽―☽―☽―☽―


昼食、今日のメニューはほうれん草と人参の炒め物、鶏肉とブロッコリーの卵あんかけ、サクサクふわふわのフランスパンにもちもちのチーズパン!相変わらずおいしそう!!

「ディアンさんは普段、公爵家で家庭教師をされてるんですよね?」

「そうですね」

食べながら話すのは行儀悪いが、黙ってはいられなかった。

「普段はどんなことを教えているんですか?」

「ショコラ公の3男、トリュフ様の教育係をしているのですが、まだまだ幼いので基礎的なことばかり教えてますよ」

ショコラ公はいったい何人の子供がいるんだ!?奥様すごいな!!

「基礎的、って?」

「例えば、この街の歴史やこの国の地理、文字書きに…とかですかね」

どうやら、私が今死ぬ気でやっていることとあまり変わりはないようだ。

しかし、幼いと言っているのだから、私より断然年下…ってことだよね。うん。

「私、この街に来て日が浅くて」

「えぇ、ルーノから聞いてますよ」

「よければまた教えていただいてもいいですか?」

「勿論!僕でよければ、ですが」

何処かよそよそしいやり取り。先程ワイワイと喋っていた四人の雰囲気とはまた違うため、自分でも居心地は悪いが、ルーノは食べるのに集中しているし…助けを乞うのはおかしい、か。特に困った内容を話しているわけではないので表情には出していないが、少し、寂しさを感じた。

そんな私の様子に気づいたのか、ルーノがフォークを置いて私を呼んだ。

「ルーナ」

「ん?」

「どうしてディアンには敬語なんだ?」

…いや、まあ、今日初めまして、だからですけどね。

「神父様にも敬語だよ?」

「よく考えろ。あいつは俺の弟みたいもんだ」

「そう、言ってたね」

「ルーナは俺の実妹(じつまい)

いや、ほんとは違うけどね?義妹(ぎまい)だけどね?

「血は違えど、会った時間は少なくても、ここで同じ兄を持つ二人なんだから、もう少し距離が近くてもいいんじゃないか?」

「え」

「二人とも年はそこまで離れてないし」

「同じ師を持ってるしね!」

にこやかに話すルーノに便乗した神父様。

「神父様、今それいらないです」

が、残念、ルーノは神父様に辛辣なのだ。

「えぇ!?私がいなきゃ君達三人一緒に出逢えなかったんだよわかってる!?」

「ルーナさんがよければ、俺も敬語じゃない方がいいなって思ってたんだ。兄さんナイス」

「そうだろ?」

おぅ…神父様は無視する形ね?ディアンさんも神父様に辛辣だなおい。

「じゃあ、私も、ぜひ、普通に話してみたい!!」

そんな私も無視しているので同罪だが…ごめんなさい!神父様!心の中では謝ってるから許して!

「じゃあ…よろしく、ルーナ」

「よろしくね!ディアン!」

「ちょっと!私は!?ねぇ!!私は!!?」

「さあ、食事をしたら午後の仕事にとりかかろうか。ルーナは今日、いつもの勉強は放置して君の服を作るディアンの仕事を手伝ってほしいんだ」

「はーい」

「ちょっと!!!!!聞!い!て!る!!?」

「神父様、食事中です静かに」

「酷い!!!!!」

ここまで息子のような弟子たちに貶されても無視されても食いついてくる神父様は絶対に鋼の心を持っている最強の戦士に違いない…。

「そう言えばルーナ、知ってる?」

ボーっと神父様の鋼の心を考えていた私に早速ディアンが話しかけた。

「ショコラ公の奥様であるショコラ公爵夫人は信心深い人でね」

「…信心深い人…?」

「占いとか、そう言う類の物大好きなんだよ」

「へぇ…」

この世界にも占いとかそう言うのがあるんだ。ってビックリ。やっぱり、神様を信じる人はそういう占いを信じたくなるし、私自身、朝のTVでやってる朝占いの順位は気にしてるもん。

…とはいえ、この世界の占いと言えば、何がメインなんだろう。四柱推命?タロット?それとも全く見たことがない占いでもするのだろうか。

紫の街(パープルタウン)はどんな街か知ってる?」

何故、突然紫の街(パープルタウン)なんだろう?

「おい、ルーナにあんな街のこと教えなくていいだろ」

食べ終えた様子のルーノがディアンを少し睨んだ。

「酷かったのは昔だけだって。最近は落ち着いてるんだ」

「ルーナがあんな街気にしたらどうする」

どう、したんだろう…本を読んでるだけじゃあまり街のことはわからないから、とっても治安が悪い場所なのかもしれない…。でも、行くと決めたわけじゃないし…。

「…聞くだけだし、大丈夫だよルーノ」

「そうだよ兄さん、ルーナがこう言ってるんだ」

っていうか、ディアンすっかりルーノのこと兄さんって呼んじゃってるよね。反抗期終わりかな?

「兄さんは相変わらずあの街が好きじゃないよね」

「昔っからあそこだけは嫌いだ」

ルーノの怒りのボルテージが上がって行くのを感じる。これ以上この話題をしていたら、ルーノがテーブルをひっくり返すほど怒ってしまうのではないか…。逆になんでそこまで嫌いなのかも知りたいけど、ここは彼を止めなきゃいけない。

「じゃあ!ぜひ、服を作る手伝いをしてる時に教えて!ね!

ついでに色んな街のことも聞きたいし!」

「じゃあ…そうするよ」

わなわなと震えているルーノをなだめるために少しだけ彼の服の裾を引っ張った。ハッとしたようにこちらを見たルーノは困ったように笑って誤魔化したが、どうも嫌な思い出が強いらしい。

あまり感情を露わにしない彼が怒るほど、嫌な思い出が強いの…?


紫の街(パープルタウン)って、一体?


―☽―☽―☽―☽―☽―☽―☽―☽―☽―☽―


ルーナとディアンが仲良さげに話している、ちょうどその時だった。

同じ黒の街(ブラックタウン)の最南端に建つ黒い城の一室での出来事。


少し薄暗くした室内で、豪奢なドレスを身に纏った女が座っていた。

「そんなまさか…ありえないわ」

蒼白の女の目の前にいるは、黒檀の髪を持つ妖艶な美女。大きな扇で口元を隠しているが目が笑っている。

「可笑しなことを」

「…どういうことよ」

女が扇を勢いよく閉じた。見えた口元は笑ってなどいなかった。

「誰がわきちの占いが外れると申しんした」

彼女の喋り方は妙だ。

「そんなこと!私はそんなつもりじゃ…」

「では、主様はわきちのことを疑ささんすか」

女は閉じた扇で机の上を指した。そこに並べられた無数の石。中央に置かれた傾く天秤、右皿に斑模様の血のように赤黒い石、左皿に堕ちる白石。女はそれを見てさらに顔を青白くさせた。どうやら天秤の内容は悪い結果のようだ。

「主様、白が堕ちるは悪しきことでは無さんすえ」

彼女に諭すようにクスリと笑った女。天秤の周りに不規則に並ぶ色とりどりの石達、下弦の月と上弦の月が寄り添うように並んでいる。散らばっているのは青か、赤か、それとも?

「運命を受け入なんし」

クスクスと楽しげに笑う彼女は、本質的なことを目の前の女に話していない。

占いは当たるも八卦当たらぬも八卦、されど出た結果こそ運命。

しかし、彼女が占えるのは未来ではなく現在であること。未来の光と運命の糸を握るのは神だけだと。

そして、双子の月は希望の光だと。彼女は悪戯好きだから教えはしない。

「わきちの占に嘘偽りはござんせん」

艶やかに笑った女は美しく立つと着物を翻してそのまま部屋から去って行った。女が部屋から出たのを見ると傍についていた子等が石を丁重に片付け始める。彼女達は手慣れた様子で片付けると一礼してその場を去った。

その様子を茫然と見ながら、一人取り残された女は愕然ともう何もない机を見ていた。


破壊の女神はどんな運命(シナリオ)を好むのか…。


最後の女性の言葉はありんす詞というのでしょうか、花魁言葉を使わせていただきました。

初めて花魁を書いたので、ちゃんと言葉が使えているかわかりません。

間違ってたら大きな広い心で見なかったことにしてください(笑)


ちなみに、占いは私自身信じちゃう人です(笑)

自分でもタロット占いの本を買ってやっちゃうほどです。…趣味程度にしかできませんが(笑)

しかし、去年の十月までの占いを一度自分でしていたのですが、四月や五月は嬉しいことばかりなのに、六月から九月十月にかけて悩みが増えて行くと、自分の占いで出ていました。

それがまさにその結果通りになりまして…。震えました…。


我ながら素質あり(そういうことじゃない)

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