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極夜の鳥籠  作者: 祥之瑠于
籠の中の小鳥たち
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隠された光

 さて、どんな本を読んだものかとジウは本の背表紙を眺めながら歩き出した。

 昔は何とも思わなかったが、こうして物色して見ると、どうも建築関連の本が多いように見える。それも妙に古めかしいものが目立つ。中には読めない文字のものまである。両親の趣味だろうか。

 ふと奥の本棚まで来て、ジウはある本に目を留めた。お姫様とくろいとり。

 昼にアヤが持って来た絵本と同じものだ。

 ジウの頭ほどもある厚みの本達の中に、埋もれるようにして薄い絵本が一冊だけ置かれている。ものすごい違和感だった。

 ジウは分厚い本たちにバカにされたような気分になった。

 お前にはこんな程度がお似合いだと。

 もちろんそんなものは妄想で、ジウも重々承知していたが、何ともムカムカして収まらない。

 盛大に溜め息をついて、その絵本を取り出してみた。

 アヤが持って来たものとは、絵を描いた者が違うようで、絵の雰囲気や構図は違っていたが、やはり同じ満月の塔は描かれている。

 ペラペラとめくりながら、もう一度溜め息をついて、勢いよくパタンと音を立てて閉じた。

 そして元の場所に戻そうとした時、本棚の奥に何やら手のこんだ装飾が施されているのが見えた。

「何だコレ?」

 何となく気になり、左右の分厚い本を取り出して、足元に置いた。

 本棚の奥には、ジウの家の紋章が彫り込まれていた。どのような塗料で着色されたものか、僅かにキラキラと光る、星のような模様も周りに描かれている。

 棚に本を置いてしまえば、隠れて見えなくなってしまうような場所に、こんなにも立派な細工をしてあるなんて。この無駄とも思える贅沢に、ジウは自分が貴族の子として生まれたことに改めてうんざりした。

 もっと素朴に生きられないのかよと思う。

 半分呆れて、本を戻そうと思ったその時。

 彫り込まれた模様から、真っ白な光が一筋、ジウの左目に突き刺さった。

 驚きと眩しさで目を閉じようとしたが、どうしたことか、瞼はピクリとも動かなかった。

 それどころか、呼吸も出来ない。苦しい。

 一歩遅れて恐怖が沸き上がってきた瞬間、急に体が動いた。

 動揺で足が縺れ、尻餅をつく。

 必死に息を吸い、ゼエゼエと吐き出して、上を見上げると、ジウの視線の先の空中に、ぼんやり光る分厚い本が一冊、浮かんでいた。

「な、何だよコレ」

 ジウが言うと、本は急に光るのをやめ、一瞬の間の後に、一直線に、真下のジウの腹に落下した。

 ジウは呻き声と同時に息を押し出され、本が腹から転がり落ちてからも、しばらく動けなかった。

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