表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
極夜の鳥籠  作者: 祥之瑠于
籠の中の小鳥たち
8/142

書庫

 振り向くと、執事が立っていた。相変わらず、感情など端から持ち合わせていないような顔でこちらを見ている。

 この執事は、当然ながらジウの執事という訳ではない。ジウの両親に仕えているのだ。

 両親からの命で、自分を監視している者。ジウにとっては、それだけの存在だった。

「いちいち待ってなくていいって」

 暗い声で呟いて、足早に屋敷に入ろうとして、ジウははたと思い付き、執事に向き直った。

「なあ、書庫の鍵、貸してくれよ」

「は?」

 執事がきょとんとした。ジウの口から書庫という言葉が出てくるなど、思いもしなかったのだろう。

 自分が本を読むわけがないと思われているのかと考えると癪だったが、普段、一貫して無表情なこの執事を驚かせてやったことは嬉しかった。

「読書感想文、提出すんの」

 とりあえず、そんな心の内を見せないよう、可能な限りムッとした顔を作って、ジウは言った。

 執事は「かしこまりました」と言って、ジウの為に玄関の扉を開き、ジウが室内に入るのを見届けてから、自分も入った。

 そして「失礼します」と馬鹿丁寧に頭を下げて、その場を去った。

 ジウが自室に戻り、鞄を適当に放ったところに、執事が書庫の鍵を持って来た。ジウは「集中したいから」と、夕飯の時間まで一人にするよう釘を刺し、書庫に向かった。

 ジウの家の書庫は、住まいとは別棟にある。高めの天井の平屋で、なかには、まるで図書館のように大量の本がびっしり詰まった書架がズラリと並んでいる。

 ジウがここに入ったのは、幼い頃、長兄と隠れ鬼をして遊んだときに、忍び込んで以来だった。

 あの時、転んで棚にぶつかって足をくじいたうえに、落ちてきた本に埋まって大泣きしたのだ。跡継ぎとして育てられていたジウが怪我をしたことで、この棟には常時、鍵をかけることとなったのだ。

 全く過保護なことだとジウは思う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ