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極夜の鳥籠  作者: 祥之瑠于
籠の中の小鳥たち
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日常

 ジウ達が通う学院は、堅牢な石造りの三階建ての校舎だ。

 固く冷たい壁に、床に、学徒たちの足音や声が響いている。

 学院は、ジウ達が生きるこの街――カゴミヤに生まれた全ての子供達が、六歳から十八歳までの間、一般教養を学ぶ為、通うことを義務付けられている学習の場だ。

 カゴミヤでは、十八歳で成人となり、成人後はそれぞれ進路を決めて進んでいく。

 ジウ達四人は、今年十八歳の最高学年生。つまり、半年後には学院を卒業し、成人となる。

 ジウ達最高学年生の教室は三階だ。

 授業開始を告げる二度目の鐘が鳴る頃には、四人とも自分の席に着き、教本を広げていた。

 教師が、鐘が鳴り止むと同時に教室に入ってきて教壇に立った。

 ユキが淀みない声で「礼」と声を掛ける。ユキは学級長なのだ。皆がユキの声に続き、頭を下げる。

 授業が始まった。

 窓際の一番後ろの席に座っているジウは、教師が資料を広げようとこちらに背を向けた隙に、窓の外に視線を移した。

 薄暗い灰色の街が見える。今日はまだ明るい方だ。

 学年でも一番背の高いジウは、その細長い身体をぐったりと椅子に乗せて「こんな椅子では収まらない」とでも言うかのように、足を放り出している。

 やる気など全く感じられない姿勢だ。

 顎の辺りで切り揃えられた、ゆるくウェーブのかかった黒髪。大きな口と少し上向き気味の鼻。大きな目は気怠そうに半眼になっている。ひょろ長い体躯と、爬虫類じみたライトグリーンの瞳。学徒の制服である真っ白なシャツの上に、紺色のニットベストを着て、黒い細いネクタイを締め、首からゴーグルをぶら下げて、襟や袖には色とりどりの硝子製の飾りボタンをじゃらじゃら付けている。これでは、否応なしに目立つ。

 教師達の中には問題視する者もいるが、ジウは、持ち前の要領の良さと、家柄を利用して遣り過ごしていた。

 教師が問いを読み上げ、アヤを指した。アヤはその場で立ち上がると、一切詰まることなく、スラスラと回答を読み上げた。

 ジウと並ぶと、ジウの肩ほどまでの身長のアヤは、ジウと同じく痩せているが、背が無い分、華奢で不健康そうに見える。

 短い茶色の髪を、ツンツンに跳ねさせて、少しだけ顎ヒゲを生やしている。いつも不機嫌そうに眉間に皺を寄せ、もともとつり上がった目を更に鋭くして、周囲を睨み付けるようにして見る癖がある。

 アヤは早く大人になりたいのだ。自分を大人に見せようと必死なのだと、ジウは思っている。思っているが、アヤに言ったら間違いなく怒るので、黙っている。

 アヤの制服は、ジウのものとは違い、くすんだ水色のシャツで、アヤはその上に、胸元に王立研究所の紋章が刺繍されたジャケットを羽織っている。

 王立研究所はアヤの仕事場だ。学院に在学中から王立研究所で働くということは、滅多に無いことだ。本当に優秀でなくては出来ない。

 教師が「正解だ」と、感情もなく言い、アヤを着席させた。

 アヤは、学院の成績も当然主席の秀才で、特に文学や歴史に強く、王立研究所でも古代文書研究に関わっているらしい。

 読書感想文の提出を忘れて、卒業を前に至急提出するよう迫られているようなジウとは大違いだ。

 ジウはこっそり溜息をついた。

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