「お姫様とくろいとり」
むかしむかし。
それはそれはうつくしいお姫さまがおりました。
お姫さまは、とてもやさしく、きれいな心のもち主でしたので、みな、お姫さまを愛しておりました。
みな、お姫さまのしあわせを願っておりました。
あるとき、お姫さまの部屋のまどべに、一羽のくろいとりが迷い込みました。
くろいとりは、自分の名前はカラスだと言いました。
お姫さまは、はじめて見るくろいとりにおどろき、少しこわいとおもいました。
しかしカラスは、お姫さまの知らない、たくさんのことを知っていて、お姫さまも、少しずつ、カラスのはなすことを、もっとききたいとおもうようになっていきました。
はじめはこわがっていたお姫さまも、たくさんはなしているうちに、カラスとずっといっしょにいたいとおもうようになりました。
そうしてすっかりふたりがなかよくなったころ、カラスがかなしそうにいいました。
「わたしはもういかなくてはなりません。つぎに太陽がのぼって、朝がきたら、おわかれです」
お姫さまは、おどろき、かなしみ、なげき、こういいました。
「ああ、それなら、もう二度と太陽がのぼらなければいい。朝なんて、こなければいいのに」