夕音へ1
ホテルに泊まり、暖かいお風呂と柔らかいベッドのおかげで疲れも無くなり、満足のいく食事の後、ロビーでお茶を啜りながら今後について話し合った。
「夕音まではどうやって行った方がいいの?」
「鉄道が一番早いですね」
「大丈夫、治安悪いじゃない?」
「車よりは早く安全ですよ」
「車だと、燃料とかにもお金掛かるしそれなら鉄道の方が早く安く済みますよ」
「じゃ、決定」
お茶をまったり飲み干して、駅に向かう。
「さて、夕音までは一日掛かるのか」
切符を買い、混み合うホームにて列車を待つ。途中、キオスクで新聞を買う。
由宇の言う通り、車は安全とは言えないのだろう。
ちなみに由宇はなかなかこ洒落た格好をしている。
夕食後の腹ごなしの散歩のついでに買いに行った。
ボクとしては猫のプリントされたシャツを進めたのだが、由宇の抵抗により断念した。
人気の無い荒野で襲撃されたら助けを呼んでも来るまでどうやって持ちこたえられるのか?
という不安があるのは分かる。が、しかし
「こっちも危ないんじゃないのか、丸一日は掛かるんだろう、それならそれなりに危険も増すんじゃ」
「そんな事無いですよ」
由宇はいたって普通だ。むしろ喜んでいる様にも見える。
列車到着のアナウンスの後に、列車が到着。
「うおう」
思わず出てしまった声。
隣の由宇がくすくす笑っている。
なんとなく腹が立ったので由宇を追い掛け回していると、ベルが鳴りホームに居るのはボク達二人だけ。
「早く乗りましょうよ」
由宇は列車に乗り込む。
それを追いかけてボクも乗り込む。
ボクの胸には不安があるが列車に乗り込む。
「こっちですよ」
「うるさい、呼ぶな」
それなりに人の気配はするが、それでも空いている。
個室に入り、荷物を置いてこれからの長い列車の旅に臨む。
一時間後、ボクは暇を持て余している。
「暇だな。由宇」
新聞を読み終わり、窓の外に目をやりながら声を掛ける。
「早いですよ。まだ乗ったトコじゃないですか」
由宇は新聞を読みながら返事する。
確かに快適だが、する事が無いのも耐えられない。
窓の外の景色は次々後ろに流れていく。ぼんやりとそれを眺めながら、
「由宇。ここで襲われたらどうすればいいと思う?」
物騒なことを呟いた。
「戦えばいいんじゃないですか?」
由宇の声に緊張は無い。それは襲われる事は無いと確信しているからだろう。
「由宇。未来に絶対は無いぞ。絶対とは過去の事に対して使う言葉だ」
ぼんやりした目で見ると、きょとんとした顔でボクを見ている。
「間違うことがないから絶対なんだ。どうなるか分からない未来に使う言葉じゃないって事」
「はぁ、分かった様な、分からない様な」
目を逸らす。
だろうな、言ってるボクもよく分からない。
「なんか、眠くなってきた。ちょっと寝る」
「はい。分かりました」
長いシート。バッグを枕に横になる。
目を閉じる。そのまま夢の世界へ……。