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En-gi  作者: 奇文屋
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決戦19

 空から降ってきた剣。それに才蔵が敗れた、と言う声。

「マジかよ」

 比奈人は薙刀を放り出して両手を挙げる。

「負けだ」

 両軍の勇士四人は顔を見合わせる。

「騙そうとはしてないぞ」

 戦意は感じられない。

「なんなら、その鞭で縛ってくれてもいいぞ」

「そうしてくれるかな?」

「あ、はい」

「……冗談だったんだけど」

 比奈人の呟きを聞機ながら後ろ手にに燕舞を巻きつける。

「楽軍の諸君。われ等にこれ以上の戦闘の意思は無い」

「それは降伏と受け取っても構わないのかな? 将軍」

 振り返ると、初老と言っては失礼かな? な軍人と確か、その横にいるのは、

「伯明王子と」

 佳乃さんは軍人の隣にいる男性の名前を挙げた。

「私は姫辰。貴官の勇名は我が軍にとっては畏怖の対象だよ」

「それは我が方にとっても同じですよ」

 王子、と呼んだ方に近づいて、跪く。

「王子。我が党首に会っていただきたい」

「そのつもりでここまで着ました。案内を頼めますか?」

「は」

 佳乃を先頭に姫辰、と傷ついた男女の勇士が続く。

「他の者はここで待つように」

 姫辰の声に敬礼で答える兵たち。

「あの、私……は」

 とりあえずあの二人の事が心配で、聞いてみる。

「御同行願います」

 佳乃さんの声に安心して、最後尾からついていく。



 屋上にはどこから現れたのか、冥仙の連中が才蔵の手当てと捕縛を行っていた、

それを眺めていると、

「無事でしたか?」

 扉の向こうから理緒の声が聞こえた。

影から現れた理緒。その手には鞭。その先には比奈人が。

「見れば分かるだろう?」

「良かった〜」

 へなへなと座り込んでしまう。

「おい。お前が大丈夫か?」

 歩来の苦笑。

「はい。何とか」

「それは良かった」

「お。史紀ちゃんからそんな言葉が聞けるとは」

 理緒は上目遣いでボクを見る。

「う、うるさいな。それよりも比奈人を渡したらどうだ!?」

「あ。そうだ。引き取るよ」

「あっさりしてるなー」

 比奈人はそれでも笑っている。

何が可笑しいんだ?

理解に苦しむってのはこういう事か。

「じゃ。私達はこのまま冥仙に戻るよ」

「そう」

「名残惜しいですね」

「史紀、理緒。君達のおかげで捕らえる事が出来た。感謝している」

 握手しながら言われる。

思わず目を逸らしてしまう。

「テレる事無いだろう」

 うふふ、と笑う歩来。

「うるさい。さっさと帰れ!」

「も〜。心にも無い事言ってぇ〜」

「お前もうるさい!」

「あ痛」

 理緒の頭を叩く。

「あはは、仲良くやれよ。またな」

 笑い声を残して歩来はビルの中に消えていく。


 静かな屋上に理緒を二人。

ぼんやりと空を眺めている。

「終わりましたね」

「ん」

 ゆっくりと流れる雲が日を遮る。

「これからどうしますか」

 理緒の声にちょっと寂しさを感じる。

才蔵を追う旅に理緒を引き連れた。

その目的も達したし、これ以上理緒を引っ張りまわす理由は無い。

理緒がボクの顔を覗き込んでいるのが分かる。

「とりあえず、お腹空いた。どっかでご飯食べながら考えよう」

 理緒の手を引いて立ち上がる。

「そうですね。何食べに行きましょうか?」

 嬉しそうな理緒の声。

太陽を覆っていた雲はいつの間にか流れ、再び照らす日差し。

今日もいい天気だ。

「美味しい物に決まってるだろう」

「ですよね」

 階段を下りる足取りが軽い。

「ほら、早く来い。置いて行くぞ」

「ちょっと待って下さい」

 駆け抜けるボク達の足音が心地よく響く。

 決めた。

もう少し、理緒を引っ張りまわそう。

「理緒」

「なんですか?」

 肩で息をしている理緒に、

「海、見に行こう」

 それだけ言ってまた階段を駆け下りる。

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