決戦18
階段を駆け上がり、開いた扉が閉じる前に飛び込む。
「はぁ……はぁ」
飛び込んだ先は屋上。
これでこのビルを踏破した事になる。
「もう、逃げ場は無いぞ」
「しつこいな。……まったく」
「当然だ。お前をボコボコにする事を目的にここまで来たんだぞ?」
「ご苦労な事だ。それも、出来もしない事に」
「それは今からやるさ」
ぽん、と箒星を叩く。
「一人で出来るかな?」
「充分だ」
才蔵の目に大怪我しているとは思えない殺気が篭る。
歩来と二人で戦ってた時は二人でこのプレッシャーに向かっていたんだな。
でも今は一人。正面からその殺気を受ける。覚悟はとうに決めている。
「君の旅はここで終わる」
才蔵が飛ぶ。
箒星を前に剣を防ぎ、赤く染まった左脇腹を狙い蹴り上げる。
ボクの蹴りを防いで、そのままパンチを打って来る。
右に飛んで避けて至近距離から箒星を撃つ。
「がはっ」
距離は五十センチも開いてなかったのに、直撃を外された。
それでも右肩には当たった。
この機を逃さない。
離れずに僕の射程で突きを乱打。
箒星を受けた衝撃と崩れた体勢なのに、半数は防がれた。
「か……はぁ」
息を吐き出した瞬間。
「ごっ」
左肩に痛みが走る。
剣の根元がボクの肩に食い込んでいる。
「これ位で」
箒星が舞い戻り、剣を狙うが読まれていた。
才蔵が離れ、箒星が装着される瞬間に才蔵が再び接近。
剣を受け、今度は攻める暇が無い。
切っ先に集中して防御に徹するがそれでも避けきれない。
服が切れ痛みが増し傷が増えていく。
それでも意識は切っ先に。才蔵に。
呼吸を読み、風を呼んで、ようやく受け止める事が出来た。
右手で刃を掴み、握り締める、
ぽたぽたと伝い落ちる血。
才蔵は剣を引こうとする瞬間に剣を放し、ボクも距離を詰める。
攻守逆転。とは行かなかったが攻め手はボクの方が多い。
右肩の負傷と出血が響いているのか剣閃が鈍くなっている。
余裕は見せない。
才蔵の右腕に絡み付こうとして、才蔵が本能的に右腕を引いた瞬間に左肘に絡んで
「纏風」
比奈人に掛けた関節技を決める。
みしっと音を立てる確かな手応えを感じ、左手を引っ張りそのまま首元に箒星を装着したまま左ストレートを打ち抜く。
これでたったらコイツは不死身だ。
……倒れたままの才蔵。
微かに息はしているが起き上がる暇は無い。
「史紀っ!」
歩来がやって来る。
立っているボクと倒れた才蔵を見て、
「大丈夫!!」
駆け寄ってきて背中をバンバンと叩いてくる。
「はは、痛いよ」
「良かった。生きてる」
「当然だ。ボクが負ける訳無い」
才蔵を見下ろし、
「才蔵。君を冥仙に連行する」
武器を取り上げ、ボクから少し離れてどこかに連絡をする。
そして、柵から身を乗り出し、
「比奈人ぉーーー!!! 才蔵は捕らえたぞぉーーーー!!」
才蔵の剣を下に投げつける。
そういや下にいたな。あいつ。