決戦14
市街にも戦火が上がる。
他の部隊が戦闘を開始した。
立ち上る黒煙を眺め、
「敵襲ー!!」
城門から叫ぶ声が聞こえる。
「門を開くな、登ってくる敵を迎撃!!!」
指示を出しつつ私も城門へと駆け上がる。
城門から攻め寄せてくる楽兵を望む。
機兵が先陣を切り、歩兵が後に続いている。
こちらとしては楽軍に攻城兵器が無いのがせめてもの救いだ。
蓬樹達が敵の補給を制限しているのが効いてるな。
「白亜大尉」
「待て、ぎりぎりまで引きつける」
砂塵が舞う。
予測を上回る数。
恐れる事は無い。敵は足を止める事無く進んでくる。
「撃てぇーーーーっ!!!」
槍を前方に突き出す。
それを合図に一斉射撃。銃声が風を切り楽軍に飛んでいく。
「門に近づけさせるな!!!」
そうは言っても数的に勝る楽軍。
破る門をここに絞ったかの様な勢いで攻め立てる。
徐々に門に近づいて、梯子を掛けられた。
登ってくる兵を上から突き下ろして防ぐ。
城門の上、あちこちで同じ光景が繰り広げられている。
銃は迫る敵に、剣や槍を持つ者は梯子を登ってくる兵を相手に奮戦している。
このままではいずれ押し切られる。
そう考えた時に頭を振る。
ここの指揮官は私。
その私が弱気な事を考えてどうする?
今はここを守る事。その事に専念しよう。
突如として螢送に上がった煙。
それは黒々としていて、火事か何かだと思ったが上がった場所が螢送の中心部らしいとの事で寄せてみれば、市街から剣戟と怒号が響いてきた。
「この機を逃す手は無い」
と、戦闘準備を整えた部隊から攻撃を開始した。
「将軍、戦況はどうか?」
「王子、敵に何か起こったのは間違いないかと。門衛の指揮は明らかに昨日までの部隊とは違います」
「確かに。兵を上手く使っているな」
例えるのなら頑強に守るのではなく柔軟に防ぐ、といった感じの用兵。
「攻城兵器の到着が間に合えば時間を掛けずに済むのですが」
「無い物に頼っても仕方がない。私も出よう」
「王子、危険すぎます!」
「兵が前に出ているのだ。私も同じ様に戦おう」
「王子!!」
微笑を残してバイクを駆ける。
「追え! なんとしても王子を守るのだ!」
「はっ」
王子の護衛に指示を出し、
「姫歌。西門に寄せろ。敵がそちらに注意を向ければ引いて、去ればまた寄せろ」
「はっ」
数は少ないが迷いを与えられれば主導権を握れる。
「白亜大尉っ!! 敵が西の方に!!」
よじ登ってくる塀を突き落とした後に、確認する。
「よし。狙撃部隊の配備は!?」
「終わってます!!」
「では、後方から徐々に退くぞ!!」
まずは銃士。それから少しづつ城門を降りていく。
西門には敵の姿は無いが、市内からは先程よりも激しい戦闘の気配がひしひしと感じられた。
「内乱か?」
だとすれば跋維も一枚岩では無かった、という事だな。
「よし、梯子を掛けろ」
跋維兵がいないとなると容易に門が開けられた。
門が開いて街の中が良く見える。
その中は跋維兵同士での戦闘が始まっている。
「突っ込めぇーー!!」
アクセルを吹かし、同士討ちしている戦場を駆ける。
この戦場で妙な事に気付いた。
それは私の部隊に驚きを出す者と出さない者。
出す者は驚いて逃げようとするが、驚かない者は下がろうとする。
この違いはなんだ?
兵の不気味さにいまいち攻め切れない。