決戦13
「懐かしい顔が」
本部ビルに来ると、戦闘は始まっていた。
制羽隊の苦戦の様相でその中心に居たのは、
「遅かったな」
「なんだ。待っていてくれたのか?」
俺達の周りにはぽっかりと空間が広がる。
その方が邪魔でなくていいな。
「とりあえず、退くか戦うか。どっち?」
その問いには、剣を向ける事で答えた。
「じゃ、痛い目で済むと思うなよ」
俺も薙刀を掲げて構える。
流石に速く重い一撃。
目にも止まらない速さで打ち下ろされる薙刀を剣で受けると、衝撃で腕が痺れる。
「よく折れなかったなぁ!」
払いを避けて、体勢を立て直す。
一息で間合いを詰める。
「人間にしては」
突きを避けられて、薙刀の柄で剣を打ち据えられる。
「ちぃ」
鈍い痛みが腕に伝わる。
力が一瞬抜ける。
その瞬間を逃すほど、甘い相手じゃない。
剣を遠く弾き飛ばされた。
「よう。まだかかるか?」
才蔵が制羽と共に現れた。
くそ、最悪だな。
「いい様だな。佳乃」
制羽の目には小心で臆病な光は無く、代わりに野心と欲に満ちている様に感じられた。
制羽は持っていた剣を振りかざし、
「礼儀にお前の首を見せよう」
「お待ちを。それより先に礼儀を。比奈人ここは」
才蔵がそれを止めて、
「あぁ。早く行け」
二人が行った後、
「言い残す事は?」
首筋に冷たい感触が。
「無いな」
「そうか」
躊躇いを感じさせない視線に射抜かれながら……。
もう本部ビル前には武装した兵達が殺到している。
「出遅れたっ!?」
「喋ってないで走りなさいよっ!!」
ボク達に気付いた兵がこっちを見る。
声を上げそうになるが、
「退けぇぇ!」
蹴り飛ばし着地した場所は、殺気に満ちた空間。
とりあえず邪魔する奴は叩きのめす。
着地点は殺気に満ちた空間。見渡せば武装した兵が呆気に取られてボクを見ている。
一人が剣を振り上げ、斬りかかって来る。
それを捌いて殴り飛ばす。
戦闘開始。
人間相手に遅れを取っている場合じゃない。
もうすぐここに来た目的を達する事が出来る。
そう思うと、体が熱くなってくる。
煩わし兵を蹴散らして先に進む。
「ちょっと待ちなさい!!」
後からの声に止まる事は無い。
「ちょっと!!!!」
人垣を駆け抜けた先には比奈人と佳乃が居た。
佳乃の首には切っ先が突きつけられているが、
「先に行く!!」
そう怒鳴ってビルの中へと進んでいく。
「来てたのか」
「分かっていた事だろう」
「まぁな」
比奈人の切っ先が首から離れる。
それは風を引き連れて後方から迫る攻撃を防いだ。
「ここは私が」
薙刀に巻きついたのは鞭。
その先には理緒が。
「アホを追う」
「歩来っ!? なんで?」
「それはお前等の方が分かっているだろう」
歩来も比奈人の脇を抜けビルの中に入っていく。
「さて、どうしますか?」
ぎりぎりと引き合う。
「どうするも何も……ぬぅぅああぁぁっ!!」」
答えはお互いが分かっている。
薙刀を力任せに振り回して、
「嘘っ」
私の体が宙に浮いた。
叩きつけようとしているのは確実なので、鞭を柄から離す。
宙に浮いた事で行動に制限がつく。
腕を引き絞り狙いを定めて、力を解き放った。
「くぅぅ」
軌道を見極めて体を捻るが、刹那が間に合わない。
「俺を忘れるなよ」
薙刀が私の体を掠めた。
軌道が僅かに逸れた。それは私にとっては九死に一生を得た事。
「まだ戦うのか?」
軌道がそれた原因は彼が投げつけた剣。
それは狙いを大きく外れていたが意識を私に向けていた比奈人には対応が遅れる要因になった。
佳乃さんは近くに突き刺さっていた剣を手に取り、
「仙士の決闘の邪魔になるが、俺も加えてもらう」
「邪魔と分かって入るか?」
「あぁ。お前達にはどうしてもこの手で借りを返したい」
「良い心掛けだ」
二人が接近して、打ち合う。
仙士と人間との能力には大きな隔たりがあるはずなんだが、互角といっても良いほどの動きを見せる。
「蒼空乃極の影響がまだ残っているのか?」
「さぁな」
あの仙具の力がまだ残っていて、今それが解放されているのかな。
人間が仙具を使うと、こんな事が起きるのか。
……なんて考えてる場合じゃない。
ひゅんひゅん、と鞭を撓らせて、
「参ります」
佳乃の攻撃を隙を埋める様に攻撃を開始する。