決戦10
ようやく……見つけた。
なんでまたこんな所に。
歩き続けて辿り着いたキャンプ場。当然、こんな時期にここに来る者などいる訳が無いのである意味盲点かもしれない。
「おい。居るだろう?」
まだ少し距離がある所から声を掛ける。
微かに明かりが見え隠れしているから起きているのは間違いないとは思うが、
「おい」
一体どこから調達したんだあのテントは?
近づくにつれ一通りのキャンプ用品は揃っている。
「誰?」
一人がテントから出てくる。
あの時の女、じゃない。
「佳乃」
相手の名前は知らないが、俺の名前を言えば理解してくれるだろう。
「あぁ〜。なんの用?」
「少し事態が変わった」
テントから顔だけ出している。
「とりあえず出たらどうだ?」
「そうだね。ちょっと待って」
ごそごそとテントの中の影が動いて……、
「で、どう変わったて」
後のテントからも一人出てくる。
「仙士は三人居たのか?」
「ま、成り行きでね。そんな事より事態が変わったって? 才蔵は居ないの?」
焦っているのか、緊張が走っている。
「才蔵が入れ知恵している男が居るのは間違いないが」
「そんなのはそっちの問題。ボク達は才蔵を追ってきたの」
「待て、とりあえず、自己紹介をしてはいかがでしょうか? お互いの名前を知らないのは話す上で不便ですから」
夕音で会った女の提案によりお互いの自己紹介が始まる。
「で、才蔵は?」
「近くに居るのは間違いない。おそらく今日の戦闘も見ていたのだろう」
「何処に居るの?」
立ち上がる史紀。
「ちょっと待て。そこでだ。ちょっと提案がある」
「何よ」
「才蔵が動くかどうかは分からんが」
「じゃ、いいよ」
テントに戻ろうとするのは史紀。
「ちょっと待てって」
史紀の手を取って座らせる。
「才蔵が入れ知恵している男を動かせば、動くかもしれん」
「動かすってどうやって?」
「今度の戦闘後、制羽、おそらくこいつの下に才蔵が居ると思うが、を敗戦続きの責任を追及する。そこで地位の剥奪や降格を匂わせれば焦って行動を起こす」
「投降するって選択は?」
「それは無いな。奴の目的は自分が王になる事。その為には楽に投降すればどうなるかぐらいの知恵はあるし才蔵が止めるだろう」
「責任を取らせてどうするの?」
「奴は立場を利用して恨みを買っているからな。その報復を恐れている。そんな奴が取る手段として一番可能性が高いのは」
「造反か」
「そう。それを起こさせる。その時に制羽を討って」
「だから、制羽とかいうのをどうしようともボク等には関係ないだろう」
「制羽が討たれれば才蔵も動くって事か?」
歩来という女は俺の考えを読む。
俺もそう思っているので頷く。
「なんでさ?」
「才蔵がその制羽って男の所に居るのは目的に適しているから。それを阻害するような動きがあればその動きを止める為に動くって事」
「な、なるほど」
「その場面の時にそっちが居ないと意味が無い」
「その場面というのは?」
「奴が造反し礼儀の部屋に乗り込んだ時」
後手に回るかと思ったが、そのタイミングをこっちが握れるのはありがたい。
「その時は迎えを寄こすから、準備を済ませておいてくれ」
「分かった。その時才蔵を狩るよ」
立ち上がり拳を握る史紀。
「ふふ、頼もしいわね」
微笑む歩来。
「じゃ、その時までゆっくり寝ますか」
欠伸をしてテントに戻っていく理緒。
それを見届けてから俺もキャンプ場を後にする。