決戦7
「随分と遅れてくるな、いや速いのか?」
「姫歌の部隊を牽制しつつの後退してきます。報告による進路から考えてこちらに仕掛けてくる様子です」
「後退しつつ前方のわれ等にも仕掛けてくるのか?」
「一戦交えて、われ等をおびき出し姫歌の部隊との同士討ちを狙っているのかも」
「それは」
園典攻防戦の時にこちらが仕掛けた策。
まさか、まんま仕掛けてくるとは思わないが、気を引き締めないとな。
「ま、一案を上げただけです。未麻中佐の怪我が治るまで周辺の警備を増やして用心します」
「そうだな、中佐がいないとこちらは戦力ダウンだからな」
「ええ。中佐の鋭気はこちらの士気に関わりますから。本拠螢送を攻めるとなれば敵の抵抗も苛烈でしょうし」
「その他からの援軍は?」
「湯狭には夕音攻撃を指示しました。晴雨からの援軍も五日もあれば到着するかと」
「そうか……後少しで」
反乱は止められる。そうなれば、
「王子、戦後を考えるのはまだ早いですよ」
頭の中を見透かされた、顔が赤くなる。
「分かっているよ。今はまだ戦時中。目の前に集中しないとな」
ふふ、と笑う姫辰。
「では、失礼します」
下がる姫辰。
ふー。彼がいれば楽は安泰かな。
螢送の街に帰還して、真っ直ぐに礼儀の下へと向かう。
「やけに物騒だな」
礼儀のいるビルの周りには殺気だった兵が屯している。
これだけの兵を置いているって事は、まだ事は起こってないのか。
安心と不安が心に浮かぶ。
途中止められる事も無く、礼儀の部屋に到着。
「やぁ。久しぶりだね」
変わらない礼儀。
「園典を落とすと思っていたが?」
「ちょっと事情が変わりましてね」
「伯明率いる楽軍かな?」
「ま、そんな所です。で情勢は?」
「制羽が指揮を執って明日にでも仕掛けるそうだ」
「俺も出ましょうか?」
「制羽が嫌がるだろう?」
ま、否定はしないが。
「私としても君に出てもらった方が安心できるのだが」
言葉を切って、
「この状況では……君に出てもらうとマズイ事になる」
「それならば」
「待て。腐った政府を打倒し王族からの解放という俺達の本懐は完全とは言えないが、まぁ半分は達成出来た。後はどうやってそれを根付かせるのかって段階だ」
礼儀の理念に共感し、俺は跋維党に入った。
そして、王族や政府上層部を国外に逃げ出すまで戦い抜いた。
「その障害となるのは」
ちらり、と窓の外に眼をやる。
「制羽」
「あぁ、奴のやろうとしているのは自分が王となり支配する事。それではこの戦いが全て無意味をなる、それだけはなんとしても避けなければならない」
「楽に討たせるか?」
「いや、奴は自ら出る事は無いだろう。奴の以前には無かった強気が気になる」
それは間違いなく、才蔵の後ろ盾があるから。
「礼儀、その事なんだが」
才蔵達の事とそれを追ってこの街に才蔵に因縁を持つ連中がいる事を報告する。
「後は」
「考えている事は分かるよ、餌だろう」
考えている事は同じ。
「危険だぞ」
「命を惜しんで国を変えられるか?」
微笑む礼儀。
「何があろうとも貴方を守る事を誓う」
剣を眼前に掲げ、そう宣言する。