決戦6
武装した兵隊が街の中央から外に向かって行進している。
市民達は歓声をもって送り出し、兵隊は武器を掲げてそれに答える。
「どうする?」
「どうするも何も、今は事態を見守るしか出来ないわよ」
「それで、出遅れたらどうするの?」
「遅れた分を取り戻すスピードで頑張りましょう」
歩来の強気はどこまでも続く。
「でも、今はそれしか無いでしょうね。下手に動いてマークされるよりは」
理緒も歩来に賛成の様だ。
「ま、二人がそう言うのなら」
ボクだって良い案がある訳じゃないので従う。
もうすぐ螢送が見える。
先に放った斥候からの情報では、部隊はすでに展開している。
「王子。このままでは正面からの戦いになります。それは戦力を無駄にするのと同じ。兵を分けて攻撃しましょう」
「分かった。正面は私が。別働隊は」
「私が」
「気をつけて」
「王子も」
軍を二分して王子と別れる。
螢送の街が視界に入る。
同時に銃声がとどろき、悲鳴が響き、掲げる武器が戦意を煽る様に打ち鳴らす。
「この一戦で戦争を終わらせるぞっ!!」
声の限り叫んで兵を鼓舞する。
辺りからの地響きに似た歓声が士気をさらに上げる。
「進めぇー!!」
剣を振り下ろし、先陣を駆ける。
銃弾を盾で防ぎ、敵の隊列を見極めてバイクを操り斬り倒す。
突撃の勢いは敵の陣形に押さえ込まれる事無く押していく。
じりじりと優位に戦いを進めていく。
まだ姫辰将軍の別働隊は来ない。
このまま一気に攻めたいが、地の利は敵にあるので深追いは危険だ。
徐々に敵との距離が開き始める。
「王子、追いますか?」
どうする?
このまま押せば敵に与える被害はより多くなる。
しかし、何か策があり罠が仕掛けられていれば窮地に陥る。
どうする。どうする?
「王子」
決断しろ。
一気に決めるか、一旦引くか。
相談するべき相手、姫辰は今はいない。
兵を見渡す。兵には遠征の疲れが見えない。
今回の一戦の勝利が疲れを忘れさせている。
それなら、
「後方から敵部隊が!!!」
「何っ!?」
そうなれば前に構っている場合じゃない。
「姫辰にも引き返すよう伝令を!」
陣を引き直し、敵を迎え撃つ。
「ご無事で何よりです」
「あぁ」
姫辰から差し出されるコップを受け取る。
「ふぅー」
「気になさいますな。相手は佳乃。跋維の名将です」
「しかし、兵達には」
「戦争に連戦連勝はありません。一敗したからといってその気持ちを次に持ち込むとそれが兵に伝わり勝てる戦を落としてしまいますよ」
姫辰の言葉は優しく厳しく聞こえる。
後方から迫ってきた敵との戦闘はあっという間に決着が着いた。
四方から攻められ隊が分断され、指示を出す間も無かった。
「敵の目的は戦闘では無く、螢送への帰還。それに姫歌からの報告によるともう一部隊あるそうです」
「また来るのか?」
「王子。その様に怯えた声は塀の前では出さない様に。指揮に関わりますから」
姫辰の言葉はやはり厳しい。
「あぁ、済まなかった。でいつ頃に」
「三日以内かと」