表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
En-gi  作者: 奇文屋
53/71

決戦2

 ガキィィン……。

俺の行く手を阻んだのは一振りの槍。

「これ以上は」

 睨み付ける強い眼差し。

「悪いが、俺は前に進む。邪魔するのなら」

 剣を振り、槍を払う。

粉塵を上がり金属音が鳴り響く。

強い。報告にあった楽の士官か。

「君が未麻中佐かな?」

 鋭い突きが顔を掠める。

「お前は?」

 剣を首筋に突きつけられても顔色を変えない。

「佳乃」

 驚いた表情を見せる。

「まさか」

「意外か、こうして先陣で剣を振るうのは?」

 剣を外し、距離を取る。

「敵将を捕るチャンスなどそうないぞ」

 挑発する様に微笑みかける。

「そうだな。貴方を捕らえれば戦局は一変する」

「やってみるがいい。中佐、目の前にそのチャンスがある」

 舞う様にバイクを操り、武器を打ち鳴らす。

強い、が先程より冷静さを欠いている。

「いい勝負だった。機会があればまたお願いしたいものだ」

「何をっ!?」

「ほら、隙が生まれたぞ」

 勢いに乗って出された突きを裁いて、剣を突く。

「痛ぅぅ」

 咄嗟に体勢を崩して避けたのは流石。

狙いは逸れて左腕に突き刺さる。

体勢を立て直す事無く転倒。

「勝負あり。だな」

 それを抜いて、

「中佐っ!!!」

 新手との一騎討ちが始まる。


 新手は見た目麗しい女。

力強さは感じないが見惚れてしまう槍裁き。

スピードはこっちの方があるな。

的確にこちらの急所を狙ってくる。

正面からの攻めかと思えば、搦め手を交えての攻め方。

変則で正攻法を加えてくるから、こちらも攻め手を見つけ辛い。

 呼吸が乱れた所と思っていても、

「はぁ!」

 一向に乱れる事は無い。

むしろ鋭さが増している印象さえ受ける。

防戦一方。

未麻中佐との戦いでも押し込まれる事は無かった。

中佐が弱いとか言うのではない。

この女士官との相性は良くない様だ。

一定の距離を保ちつつ槍を突き出す。

俺が寄せれば離れ、離れれば寄せてくる。

間合いが取り辛く、剣を思うままに振れない。

攻めて守る。

簡単で難しい事を涼しい顔してやられている。

このまま終わらせたくないが、無理して攻めるのは隙を生むだけ。

じっと堪えてただ一度のチャンスを待つ。

「退くぞっ!!」

 突き出した槍を引いて、俺の考えを読み透かした様に兵を連れて退いていく。

「やられた」

 後に残された俺達は去っていく楽兵の後姿を見つめていた。

「追いますか?」

「いや。追っても意味が無いな。こちらも退こう」

 兵をまとめて陣へと引き返す。



 陣に戻ると蓬樹が噛み付きそうな顔で待っていた。

「将軍。明日は俺が出ますよ」

 ここから戦闘を見ていた様だ。

「ダメだ」

「将軍の手に余る相手だったじゃないですか? 明日は俺が討って見せますよ」

 俺の言葉が聞こえないフリをして武器を振り回す。

「危ないな。お前にはここの防衛があるだろう」

「そんなのは将軍にお任せします。明日は見事あの二人を討って見せましょう」

「お前だって討てなかったじゃないか」

「あの時は友軍を逃がすのが目的だったじゃないですか、今回は違いますよ」

 どうあっても出たいようだ。

「分かった。明日はお前にも出てもらおう」

 こうなったら俺がこの男に何を言っても無駄だ。

「白亜の陣に連絡を。俺達が戦闘に入ったら敵陣を落とす様に連絡を」

 近くに居た兵に伝令を任せ、休む事にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ