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En-gi  作者: 奇文屋
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決戦1

 日が暮れて、夕闇の中に立ち上る土煙。

人影の無い中を駆け抜ける。

目指すは昌機平野。

地の利を得る事が先決。

全軍はすでに臨戦態勢を整えてある。

いつ、敵と遭遇しても、

「将軍、前方に楽軍の陣が見えましたっ!」

 先頭を走る部隊からの報告を受け、俺は剣を振りかざし、

「以前の借りを返すチャンスだ!」

 振り下ろすと同時にアクセルを踏み込む。



 敵陣にはそれ程兵はいなかった様で、戦闘はあっという間に終わる。

「どうします?」

「このまま進む。全軍に通達を」

「は」

 以前はこれで勢いついて足元を掬われた。

今回は同じ手には引っかからない。



 その後も敵陣を突破し昌機平野に陣を構える頃には月が高く上がっていた。

「よし。ここに陣を」

 陣を張る場所は西南に聳える菜弧山脈の麓、そこで一夜を過ごし、近隣に五つ陣を張る。

「敵の動きを常に監視しておけ」

 偵察を頻繁に出し、補給線の確保と安全を確保して、やっと一息つけた。


「敵は前と同じ策をとりますかね?」

 蓬樹は敵を待ち切れない顔で園典を望んでいる。

「それは無いだろう。姫辰ほどの切れ者が読まれるリスクを犯さないさ」

「こっちがそう考えて逆を読んでくるってのは?」

「それはあるかもな」

「それなら」

「だとしたら、俺は姫辰という将軍を読み誤ったな」

「何故ですか?」

「その程度の知恵なら俺が出ずとも良かったって事だよ」

 今の俺の敵は他にいる。

ここに出る事で敵をあぶり出して討つ、というのが今回の遠征の目的。

危険なやり方だが、危険を減らす為の手は打った。

それが何処まで有効かは未知数だが。

「しかし、今の跋維党には将軍の他に園典を落とせる者はいませんよ」

「ここにいる」

 指の先にある顔は驚いている。

「や、俺なんかじゃ無理ですよ。暴れるのは誰にも負けませんが知恵が無い」

 本当に困った顔をしている。

思った事が正直に顔に出ている。その素直さが蓬樹の強さなのかもしれない。

「足りない所は仁都や程地が補うさ」

 ぽん、と肩を叩いて幕舎に戻る。


 翌日、園典から土煙が上がったとの報告から始まった。

昌機平野での先頭が始まる。

 剣を抜き、楽兵に斬りかかる。

一人二人と切り倒し、前に。

その後に続く我が跋維の兵達。

「佳乃様! 危険です!」

 名を呼ばれる度に楽兵は俺に群がる。

俺の首を取れば英雄になれるからな。だが、その代償は、

「そんなに死にたいのか!?」

 俺の行く手を阻む者はいない。

どれだけの兵が前を阻もうとも道を切り開き進むだけ。

その先にある時代を掴むまで。

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