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En-gi  作者: 奇文屋
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夕音激闘

 淡い光を放ち、空を切る。

打ち下ろして切り上げる。

動作に無駄が無く、的確に狙ってきている。

箒星で受け止める。じりじりと押し合って、

「はぁっ!」

 剣を押し飛ばして間合いを詰める。

回し蹴りは後ろに飛んで避けられて、着地同時に突きが閃く。

「うわっ!」

 引いては突き出される。

それに払いと斬撃が組み合わされた連携。

速い。才蔵達に匹敵する速度。

どうにか見切れているのは先の戦いの成果か。

手を抜かれていたが、受けた傷は無駄じゃなかったな。

しかし、攻め方が見つからない。

力の差は分かった。だからこそ、なのかもしれない。

もう一度、比奈人と戦ったら戦いにもならないだろう。

かと言ってこのままでは終わらせる訳にはいかない。

 軌道を見切れる一撃をしっかりと受け止めて、

もっともっと強くならないと。

「よしっ!」

 相手を見据え、気合を入れる。

ボクの場違いな声にたじろいだ女。

その隙を突くのは容易いが、それでは意味が無い。

これからの戦いは才蔵達に近づく為の何度あるか分からない実戦。

もしかしたら、明日戦う事になるかもしれない。

少しでも、僅かでも勝機を掴める為に。心を研ぎ澄まし、危険な訓練を続けよう。

 腰を落とし、構えを取る。

「何」

 儀礼的なボクの態度に動揺している。

ボクはそんな事をお構いなしに、

「参る」

 宣言してから、地を蹴る。

「あ、え」

 本能で振り下ろされる剣。

寸前で方向を変えて、もう一度地を蹴って、女の無防備な右わき腹に一撃。

「かはっ……けほっ」

 蹲る女。

ボクは距離を取り、再び構える。

「なんなのよ……全く」

 お腹を押さえつつ、苦しそうにして立ち上がる。

「ふー……。手加減はしないわよ?」

「上等」

 女の姿が目の前に現れる。

速っ!?

 剣の間合いでの攻防。一方的に攻められる。

速度はさっきの比じゃない。

受け切れない。箒星で受け切れない剣戟が多くなる。

 焦るな。冷静に切っ先に意識を集中し……。

「ごほっ」

 鈍い痛みがお腹に響く。

「さっきのお返し」

 女に当てたトコと同じ場所に入った。

蹲る……訳には行かない。

崩れる足を気合で堪え、一歩踏み出す。

痛みで呼吸が出来ないが、思いっきり殴り飛ばす。

速さも無く力も乗らない。

ぱふっと女の胸にヒット。

「何がしたいの?」

 きょとんとする女。

「お前に勝ちたい」

 更にきょとんとする女。

「え。なんで?」

 意味が分からない、ととりあえず落ち着けとボクを優しく抱き締める。



「私は才蔵を追ってきたの。言っとくけど仲間じゃないからね」

「じゃ、なんで?」

 ボクは壁にもたれて女と向かい合って座っている。

「あいつを捕まえて冥仙界に連れ帰る為よ」

「だから。なんでって聞いてるでしょ」

「そこまで言う必要は無いでしょ。はい。キミは?」

「ボクも才蔵を追ってるんだ」

「理由は蒼空乃極?」

「それは終わったの」

 その時の事を話す。

まぁ、ボクも理緒から聞いたんだけど。

「ふ〜ん。で、その後は?」

「知らないから……」

「何?」

 思わず言いそうになってしまった。

言う必要は無いだろう。敵か味方かはっきりしない状況で。

「なんでもない」

ふい、と顔を逸らす。

これがいけなかった。

「何か知ってるんでしょう。この街に何か手掛かりが?」

 やばい。喋り過ぎた。

「なるほど。だからこの街に来たのね。私の勘も当たってたのね」

「いや。そんな事は無いぞ」

「声。裏返ってるわよ」

 しまった。喋らなきゃ良かった。

「で、どこ?」

「な、何が?」

「才蔵達の手掛かり」

「さ、さぁ?」

 女はじっとボクを見つめている。

くそ。関わらなきゃ良かった。

どうにかして一時間前のボクに会えないだろうか?

何かの奇跡が起きて会えるのならこう伝えたい。

「くだらない事考えずに、自分の力で切り抜けろ」

 と……。

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