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En-gi  作者: 奇文屋
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夕音市街地

 どうにか夕音の街に入り込めた。

街中は想像していたよりも危険な状態だった。

いや、分かってる。その原因は私の前で辺りを窺っている少女の所為だ、という事は。

影から飛び出して、鈍い音と共に走り去る足音。

「理緒、理緒」

 遠くから私を呼ぶ声。

はぁ〜……。

こんな状況になってから何度ため息を吐いただろうか……。

以前この街で会った少女の兄弟子である詩月さんは思慮深く万事を行うといった印象を受けたものだ。

同じ環境で育ってなぜこうも違うのか?

世の無常と言うか、なんと言うか……。

考えていたら涙が出てきた。

それをそっと袖で拭う。

「なんで泣いてるの?」

 ついて来ない私を心配したのか、業を煮やしたのかは分からないが目の前には少女が立っていた。

「や、別に」

 涙を拭いて少女を見る。

頬を紅潮させて、小柄な体からは緊張感を発している。

「って言う様な顔には見えないけど。ま、いい」

 でしょうね。原因は貴女の行動なんだから……。

とは口が裂けても言えない。

「そう、早く行こう。いつまでもここに居ると見つかる」

 警報が鳴り響く街を駆け抜けていく。



 流石は敵の中枢。

敵の数が半端じゃないし、数も多い。

常に三人一組。強さは大した事じゃないが、何度も出くわすと煩わしい。

「退けっ」

 箒星を飛ばして一人目、箒星に気を取られた瞬間に二人目。

そして、三人目の注意がボクに向いたら、ひゅん、と空を切る音で三人目。

理緒の鞭が地に触れる事無く理緒の手に戻っていく。

「結構合う様になってきたね」

「それは、これだけやれば」

 この連携をやり始めて今ので十五回目。

合わない方がおかしいか。

「じゃ、今度は理緒が先にやっていくパターンで」

「ちょっと、ちょっと」

 理緒がボクの肩を掴んで、

「目的が変わってませんか? 私達はこの前蒼空乃極を持ってた人に会いに来たんですよ」

「……分かってる。大丈夫」

「若干の間が気になりますが、手当たり次第にノしちゃうのは止めましょう。当ても無く探し回るとこの街の兵隊さん全部と戦う事にもなりかねませんから」

 流石にそこまでの体力は無い。

「じゃ、理緒が手加減をしてね」

「分かりました。史紀ちゃんが二人を倒して、最後の一人にプレッシャーを与えるのですね?」

「……そう。よろしく」

 とりあえず良さそうな考えなので頷いておいた。



 市民達は何処へ行ったのか、出会うのは全て武装した兵達ばかり。

警報は収まったあちこちで銃声が聞こえる。

「理緒。おかしくないか?」

「ええ。私達以外にも入り込んだ方が居るようですね」

「出来ればそっちに注意が向いてくれたら良いんだけど」

 こそこそと橋の下に隠れて様子を窺う。

銃声は遠くない。複数聞こえるが方角は一緒だ。

侵入者は一人かそれとも、ボク達と同じ様に一緒に行動しているのかもしれない。

 名案が閃いた。

「理緒、別行動を取らないか?」

「は?」



 言ってる意味が分からない。

思いつき? ここで?

「ボクが囮になって動き回るからその隙に理緒があの男と会って話をしてきて」

 なるほど。二人で行動していても要領が悪いかも知れない。

「それに顔知ってるのも理緒だし」

 史紀ちゃんは銃声の方が気になって仕方がない様だ。

話している間もずっと視線は銃声の方を向いている。

「構いませんが、無茶しないと約束してください」

 


 約束を交わし、跋維党の兵を探して銃声の方へと走る。

最初に見つけた三人組を強襲して、二人をノした後、理緒の鞭を撓らせて脅迫して男の居所を聞き出す。

脅しは通用せず、その後に見つけた三人組から聞きだした。

「さっきのは口が堅かったけど、こっちのはあっさりしてたね」

「その方がいいですよ」

「確かに。じゃ後で」

「約束忘れないでくださいね」

 走り去る理緒を見送って、

さて、派手に行きますか。

倒れた兵の腰にある無線機を取って、

「やっほー。不審者は今、どこだここは……えーと……夕音警察署前に居ますよー」

 無線機に向かって話していると、

市役所から多数の足音が聞こえた。

「あれ?」

 もしかしてボク……やっちゃった?

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