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En-gi  作者: 奇文屋
33/71

夕音の決闘5

 地を這う鞭『燕舞えんぶ

その名の通りに淡く蒼く輝く『蒼空乃極』

人間が持っていてもこの力。流石って所か……なぁ!

 気を抜けばやられる。

今も目の前を蒼い光が駆け抜けたところだ。

ふく

 私の声に反応して鞭が真っ直ぐに地面を這う様に相手に向かう。

蛇行する事無く。真っ直ぐに向かう。

射程に入ると、そこから角度を変え飛ぶ様に攻撃する。

「流石仙具。我々の武器とは違うな」

 淡い光が輝きを増す。

振るわれる刀身から強い風が巻き起こる。

反射で目を閉じ。開けると目の前には男が迫っている。

「このっ」

 鞭の手元を引っ張り、触れる直前に力を抜いて衝撃を無くす。

「この状況で、見極めるか」

 驚かれてはいるが、仙士相手なら無理だったけど人間相手だったのが良かった。

とは言えないが。

 すっと後ろに飛んで、手首を返して鞭に意志を乗せる。

さん

 背後からの気配に身を避けて、更に私の攻めは続く。

しょう」 

 鞭を上空に飛ばして、

そう

 頭上から鞭を降下させる。

移動し避けようとするが、私の手首の動き一つで軌道は変わる。

男の足元に突き刺さる鞭。

「詰が甘いっ!!」

 剣を握り、男が迫る。

「仙具の扱いは私の方が長いのよ」

 鞭を操り、ひゅんひゅんと空を切る。

男はそれに構う事無く、足を止めない。

距離は……およそ八メートル。

間合いギリギリ。

かご

 四方からの攻撃には避ける場所など無い。

空を切る音と同時に打ち据えられる音と苦悶の声が聞こえた。



 それなりに使いこなしていたとは言え仙士ではなく人間。

仙士の攻撃をまともに受けて立っていられる訳が無い。

気を失って倒れている男から『蒼空乃極』を取り、

「さて、史紀ちゃんの方は」

「呼んだかな?」

 !!!

男の声!?

まさか、

振り返ると、湯狭で会った男は腕を押さえている。

そしてもう一人。そして傷だらけの史紀ちゃんがその足元に倒れていた。

「言わなくても分かると思いますが」

 史紀ちゃんに意識は無いのか、下を向いたまま。

ひたひたと流れる血は足元に落ちていく。

「あぁ、まだ生きてますよ」

 癪に障る声。応じる事に抵抗する心。

「渡すなら貴女達の安全は保障しよう」

 選ぶ選択肢は無い。


 二人とどれ位の時間睨み合っていたのだろうか?

選択肢が無い以上、こうしていても史紀ちゃんの苦しみが増すだけなのに。

 答えは決まっている。

私は『蒼空乃極』を男達に向かって放り投げた。

「賢明な判断だ」

 それを受け取り、史紀ちゃんから離れる。

どうやら、約束は守ってくれそうだ。



 ここで意外な展開が起こった。

剣を受け取った男達に向かって一条の光が飛んでいく。

不意を突かれた男達。その隙に史紀ちゃんに駆け寄り抱き抱える。

「下がれっ!?」

 後ろから聞こえた声は私を追い抜いて男達に向かう。

「え、な、何?」

 事態が飲み込めずに居る私を後から引っ張る力が働く。

「邪魔だ!!」

「きゃっ」

 史紀ちゃんを庇う様に倒れる。

どさっと硬い地面に叩き付けられて、痛みに顔を歪める。

「痛たたた……なんなのよ」

 倒れたまま前を見ると、四人の男達が戦闘を始めている。


 史紀ちゃんを抱き抱えたままそれに魅入ってしまう。

史紀ちゃんと同じ飛盾使いと斧使い割って入ったらしい。

そして、剣を振るう男と左手だけで薙刀を振るっているのが先程睨みあっていた男達。

 力量は互角、と見えるが薙刀使いは片腕。ハンデが大き過ぎる。

落ちた『蒼空乃極』を拾い、鞘から引き抜く。

 さっきよりも一際大きく蒼い輝きを放つ剣。

振りぬいた瞬間、大きな衝撃波が辺りを覆う。

それを受け切った後には誰も居ない。

「逃げたか、追うか?」

「いや、それよりも」

 盾を使っていた男がこっちを見る。

敵じゃないのは分かるが、それを向こうも認識しているのかまでは分からない。

「詳しい話をしましょうか」

 盾を収めて、にこやかに笑う顔はなんとなく史紀ちゃんの雰囲気に似ていた。

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