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En-gi  作者: 奇文屋
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夕音の決闘4

 比奈人の強さは湯狭で計ったと思ってたけど……甘かった。

薙刀を振るう速さとボクの攻撃に対する読み。

それらが段違いに速くなっている。

 払われる薙刀。受けるには重過ぎる一撃。

それなら。手を当てふわり、と体を浮かせ薙刀の上で逆立ち。

体を捻り左足で蹴る。

空を切る勢いのまま、、接近戦に持ち込む。

突きから足払い。薙刀の柄がボクと比奈人の間に入り狙いが逸れる。

薙刀に箒星を当てて、射出。

至近距離。ギリギリで避けるのは流石、としか言い様が無いな。

つーか、この距離で避けるか?

 距離を取り、対峙する比奈人の顔にはうっすらと赤い筋が浮かんでいる。

息を整え、先手必勝。

とんとん、と左右にステップを踏んで近づく。

薙刀に腕を絡ませて更に前へ。

 薙刀に力を込めたのを感じた。振り上がるその瞬間に腕を放して無防備な腹部に一撃。

 ……痛〜。

比奈人の蹴りがまともに顔に入った。

うわぁ……口の中に嫌な味が広がる。

口の中に少し溜まった赤いものを吐き捨てて、唇を湿らせる。

 してやったりなその顔がムカつく。

もう一度、同じ動きを繰り返す。

今度は薙刀をしゃがんで避けて、比奈人の右腕に絡みついて肘を本来曲がる方とは逆に曲げた。

 加太谷纏わりつく風。『纏風てんふう

 躊躇わない。

手加減もしない。

みしみしと軋む腕を強引に振り上げて、ボクごと地面にたたき付けた。

思いっきり背中を打ったが、痛手は向こうの方が上だ。

その様子は聞くまでも無い。余裕を見せていたさっきまでとは違い表情が歪んでいる。

腕はだらり、と垂れていて薙刀を持っていない。

もう少しで完全に潰せたのだが……。

 痛みと油断していた事。それらに対する怒りで心中は穏やかではないだろう。

このまま一気に。と行きたい所だがもったいぶってじりじりと足を動かして、苛立たせる。

 冷静さを無くせば、瞬時の判断が鈍る。

ボクの勝機はそこにある。

 じりじりとゆっくり足を動かして迫っていく。

比奈人は薙刀を左手に持ち、ボクを睨んでいる。

気圧されそうな殺気。怯む事は無い。表情に出すな。油断するなよボク。

 一気に左に飛んで薙刀の反応を遅らせるが、読まれていた。

しかし、薙刀の反応は流石に遅れている。

二歩下がったが切っ先は鼻先をかすっていった。

薙刀が通り過ぎて、箒星を打ち出す。比奈人は顔を動かす事無く起動を見切っていた。

振り抜いた薙刀を返し、払い切り下ろす。

 箒星に意識を乗せて、起動を修正する。

狙いは、

 箒星の接近に気付いて薙刀で防ごうとするが、ボクがそれをさせない。

そっと足を進めて、接近戦に持ち込む。

ボクに目を向けた瞬間に箒星の軌道から大きく外れようと右に避けるが先に回り込んで蹴りで牽制する。

咄嗟に防いだが為に、移動が遅れた。

箒星は狙い通りに右腕にヒット。

鈍い音と痛みを堪える噛み締めた声がはっきりと聞こえた。

 薙刀を放り出し、右腕を押さえている。

チャンス。一気に攻めたい気持ち抑えて、唇を上げて挑発する。

逸る気持ちとは裏腹にじりじりと動く。

焦るな、慎重に。

分かってるな。ボク。

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