夜が明けて
日の入る医務室。
ボクの他にも何人かの負傷者が居る様だ。
本来なら静かにしないといけないのは解ってる。
しかし、ボクの横に居るコイツだけは痛い目を見せないと解らないらしい。
「お前の所為で逃がしちゃったじゃないか!!」
仙士を睨みつける。
「え、私の所為?」
驚く仙士。
「そうだ、お前の所為だ。どうしてくれる」
「どうしようも」
しゅん、とする仙士。
「まぁまぁ」
佳奈と名乗った女が仲裁に入る。
「彼女も悪気があった訳じゃないし」
「無ければ許されると思うなよ」
「とりあえず、話を聞かせてくれるかな」
「「なんの」」
図らずもハモッてしまった。声色は違うが。
顔を見合わせる。微笑む女の顔に思わず背けてしまった。
「貴女達が何者なのか」
……再び顔を見合わせる。
表情から察するに、説明がメンドイのでどうにか押し付け様としている様に見えるのは、ボクもそう考えているからだろうか?
「なるほど」
とりあえず、説明は終わった。
「じゃ、君は史紀さんに助けてもらってここまで来たのか」
由宇を呼んで。
良かった。由宇がまだこの街に居て。
「はい」
「ふーむ」
少佐殿がボクを見る。
「何?」
「いや、仙人というからにはもっとこう……」
なるほど、思い描いていた仙人のイメージにボクが合っていないと言う所か。
「これでもボクは少佐殿より年上だと思うけど」
「疑っている訳ではない」
少佐殿が少し慌てた様に取り繕う。
「いいよ、別に。でも、証明できないの。歴史に載ってない百年前の事を言っても証明出来ないの。真実はここにあるの」
頭を指差す。
「だから疑っている訳ではない」
苦笑する少佐殿。
「史紀ちゃんもイジメなくても」
「イジメてる訳じゃないし。おい、馴れ馴れしく呼ぶな」
「で、史紀ちゃんの探していたのがあの男で、跋維党に関わっている、と」
「聞けよ」
仙士は時仙『理緒』と名乗った。こっちに来たのは『暇だったから』らしい。
いい加減な奴だ。
「聞いてるよ。馴れ馴れしいって言ったんでしょ。じゃ、呼び捨てで良い?」
「呼び捨ての方が良い」
「私は史紀ちゃんのほうが良い。だから史紀ちゃんで」
……! なんてわがままな奴だ。
一度、痛い目を見せなくては!
「仙士というのは他にも居るのか?」
「あ、水仙の方が一人います」
「後は?」
首を捻る由宇。
「その方は跋維党に?」
顔が曇る。向こうに着いていれば厄介な事だろうな。
「人間が仙士に勝てると思いますか?」
他愛無い雑談の後、少佐殿が話を変えた。
「勝てない道理は無いですよ」
理緒が答える。
その言葉に顔が明るくなるが、
「仙士かどうかはともかく、あの男に勝てるかどうかじゃないの?」
ボクの言葉に意気を挫かれたのか、少佐殿は唇を噛み締めている。
「史紀ちゃん、言って良い事とダメな事があるのよ」
「一秒前のお前に言ってやりたい言葉だな」




