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En-gi  作者: 奇文屋
20/71

湯狭の夜3

 痛む体をベンチに休め、地面を睨みつける。

「大丈夫?」

 隣に座っているのは軍人の女。

「何があったの?」

 街灯に照らされたベンチに二人。

体を抑えたままのボクとボクを見つめる女。

「何もない」

 顔を上げてそう呟く。

ソレが今の精一杯だ。

「何もないって。そんな訳無いでしょう? あれだけの戦闘をしておいて」

 正直、嬉しいがうざったい。

そっとして置いて欲しい。優しくされたら泣いて……なんて事はないが、人には見られたくない状況なんだから。

「おい。誰も来ないぞ」

 とりあえず、話を逸らす。

「何?」

「誰か呼んだんじゃないのか?」

「呼んでないわよ。ああでも言わないとどうにも出来ないでしょ。私も武装してないし」

 まるでその強さを知っているかの様な言い方。

「お前、あの男を知っているのか?」

「夕音で一度」

 その声にはボクと同じ心境だ、と言うのを感じた。

「よく無事だったな」

「手加減されたのと……」

 言い淀む。

興味が無い訳では無いが、これ以上関わりたくない。

「じゃ、助けてくれてありがと」

「ちょっと待って」

 立ち上がるボクを引き止める。

「何?」

「え、っと」

 引き止めたものの話す事が無い様だ。

となると、

「おい。お前はボクを探してたんだろ?」

 ボクは理由も無いのに追い掛け回されていたのか?

「あ。そ、そうよ」

「なんの用だ?」

 指をくるくると回して、空を見上げる。要するに、

「何も無いんだな。ボクは帰る」

「ど、何処に帰るの?」

「言う理由が無いだろ」

 


 一人ベンチに残り、居なくなった彼女の幻影を思い浮かべる。

言われてみれば会ってどうしようとしていたのだろうか?

なんとなく気になった。

では、初めて会う理由としてはどうなのか?

「うーん。……あ」

 ここで考えてる場合じゃない。

宿舎へと戻った。



 ホテルに戻り、お風呂に入る。

「いった〜……」

 擦りむけた背中にお湯が沁みた。

くそ、もっと強くならないと。

あの男は本気じゃなかったのに、足元にも届いてない。

例え箒星があっても同じ結果になっていただろう。

支障達が敵わなかった相手だからしょうがない。

では、済まない。済ませたくない。

 湯船に顔を沈めて泣きそうな自分を覆い隠す。


 ……この悔しさもおもいっきりぶつけてやろう。

そう考えるのがボクだ。



 あの男はまだここに居る。確信は無い。

手には箒星。

夜の街を駆け回れば見つけられるかもしれない。

「今度こそ」

 覚悟と決意を心に刻んで走り出した。

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