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En-gi  作者: 奇文屋
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稽古

 理利府での観光が終わり、ホテルに戻る。

近くのレストランで食事を終え、由宇と分かれて散歩がてらに公園に寄る。

 街灯に照らされた遊歩道。昼に通りかかった時とは違う公園に見える。

てくてくと歩いて行く。

ボクの足音だけが響く。

「ここらで良いかな」

 公園の奥。人目につかない林の中で一人呟く。

それでも一応、辺りに誰も居ないか確認して、

「よし」

 スッと息を整え、目閉じ集中して、目を開けると同時に見えない敵と闘いを始める。

星の明かりを遮る木々の下、空を切る腕と脚。

五歩進んで、また戻る。

目の前に居る想像の中の敵を睨みつける。

その敵が、形を成してくる。

こちらを振り返りあの時のままの表情でボクを見る。

徐々に荒くなる呼吸。

「っはぁ!」

 木を殴りつける。

がさがさと揺れる木。上から葉が落ちてくる。

「はぁ、はぁ……」


 痛む手を冷やして、ベンチに座る。

「はぁ、はぁ……ふぅ」

 星を見上げて呼吸を整える。

頬を伝う汗を手で拭う。

「うわ、びっちょりだ」

 服も汗で濡れている。

夜の冷気がボクの体を冷やしてくれる。

もう少しこのままで居たかったが、複数の足音が聞こえてきた。

じっと息を潜めて聞いていたが、聞こえてくる話し声に自警団の連中だと分かった。

「帰るか」

 見つかったら、何かと面倒だし。

ボクは後ろの木に隠れてやり過ごし、遠く離れてからホテルへと帰った。


 ホテルに帰ると、由宇はテレビを見ながら、

「伊里加が跋維党に襲撃された様ですね」

「ホントに」

 これからどうするのかを考えないといけないと思うが、ボクは今とても汗を流したい。

由宇を横目に着替えを取り出し、お風呂へゴー。

そんなボクを止める事も無くちらりと見て、再び目はテレビへと戻っていった。


「で、これからどうするの?」

「最短で行ける伊里加が通れませんから、迂回するしかないですね」

 とりあえず、簡単な地図を書いて、

「ここが理利府で、ここが夕音」

 紙の端から端。

「で、伊里加が通れないから」

 真ん中に伊里加。

「『湯狭とうさ』か『奈須徒なすと』のどっちかですね」

「どっちから行くの?」

 伊里加から湯狭が北、奈須徒は南。

地図上の上下にそれぞれ書かれる。

「距離的には変わりませんね。でも」

 奈須徒のすぐ上に書き加えられた新たな地名『野乃津ののつ

「ここに跋維党南部方面軍本部があるんですよ」

「じゃ、北回りで行くか」

「その方が安全だと思います」

「ボクはそんなに変わらないんだったらどっちでも良いよ」

「じゃ、明日にでも行きましょうか」

 もぞもぞとベッドに潜る。

 鍛錬で思った以上に疲れていたらしい。

本気で鍛錬不足を痛感しつつ、柔らかいベッドの中は暖かくすぐに寝息を立てる由宇。

「ボクも寝よ」

 部屋の灯りを消し、ボクもベッドに潜る。

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