異世界転移 グリムレグヌム
ローブを着こんだ男達の声が聞こえる...
目を開き、傘を杖がわりに立ち上がるとゆっくりと状況把握を始める...
まず、男達の使っている言語はラテン語と英語を混ぜたようなもので言葉の一部なら理解できる...ただし英語で語るなら一部のスペルしか喋れないのと同じ事で会話するならもう少し聞いて理解を深める必要がありそうだな...そして傘は当然として、キャリーケースが有る所を見るに、ここに私達を連れ出した神様(仮)は会話が通じ、私の道具にたいしても、ある程度の考慮もしているということ....
拉致られた人数は...27...私も含めると28人か...ちょと予想外かな...それに警戒しているやつも数名いる所を見るに全員把握はしていない...?会話が必要だろうな...
(それに教育者までよばれるとは思ってもみなかったな...そもそも何故このクラスなのか?が疑問としては大きいだろうな...)
「あっあのっ!」
・・・!?
「アアっ?」突然の事に思わずずれた声色で反応を返してしまう。
「あっごっごめんなさいっ」
何に謝ってんだこいつは...1つ結びに纏めた髪、明るげな容姿、肩から下げた可愛らしいポーチ...
「確か写真部の部長さんだったか?」
突然の質問に反応して彼女は「はっはいっ!」と反応する。オーバーリアクション過ぎないか?と思いつつ会話を振る。
「・・・すまないが突然の事態で少し混乱しちゃっているみたいだ...個々は何処で何が起きているのかって...説明できたりするかな?」
苦笑いを浮かべてもみあげを掻きながらなるべく優しく発した私の声に小さく安堵した表情を浮かべて口を開く。
「それが...僕にも何が何だかさっぱりで...学校に行こうとしてたってことは覚えてるんだけど...これってらっ拉致?誘拐?ってやつなのかな...」
「なるほど」小さく呟き彼女の顔色を伺う...彼女の声は少し震えていて、表情を見るに本気でこの状況に恐怖を感じている...彼女には悪いがもう少し質問をさせてもらおう。
「ん?ならどうして私に話しかけたのかな?君とはクラスメイトって事以外面識も、接点もないハズだけど...こんな状況だし友達とか先生と話した方が落ち着くと思うよ?」
「めっ面識もない...実は僕、6人目に起きたみたいだけどその後もどんどん皆起きたんだ。だけど君だけはなかなか起きなくって...」
...偽善的な理由...?いや、彼女の表情を見るに本気で心配してくれているのかな?
「そうか...ありがと。だが見ての通り私はピンピンしてるし気にしなくてもいいよ」
「そっそうかい?ならいいんですけど♪」
何故か嬉しそうに笑みを浮かべる彼女を尻目に再び辺りを見渡す...ローブ男達は8人、人数の合計が36人だというのに狭く感じない程の広さを持つこの空間は中世の城の大広間みたいな造りで出来ているみたいだが...
【アレは何なのだろうか?】
「貴方も気がつきましたか...」
警戒していた内の1人だな...確か風紀委員の副会長...心の中で呟き
「ん?なんの事かな?もしかして君って何かきずいたの?」
わざとおどけてみせる
「...はぁ、解って言ってんでしょ...自然に見えますが中世の城には横に伸びたステンドグラスは存在しない...違いますか?」
「さあな?だけど私の記憶が正しければ見たことも聞いたことも無かったと思いますよ?」
「...んっ?って事は最近造られたって事なの?だってそれしかなくないかな?」
写真部部長...まだいたのか...
「それにしては年期があると思いますよ?僕もこんな城が発見されたなんて聞いたこともないですし...」
「グラスに描かれた絵は騎士か?それに関係するものばかりだな?」
「口調...変わってますよ?」
「おっといけないな...ん?」
絵から絵へと視線を向けていると廊下からやってくる1人の男に目が向く。甲冑に身を包んではいるがヘルメットはしておらず何処と無く特殊...?そんなことが一目見ただけでもわかる甲冑に身を包んでいる。
「どうしたんで..お偉いさんの登場ですか...」
「ローブの人たちが敬礼しましたね...」
私達3人が見つめ、つられるように他の不安げな声で雑談をしていた連中もその男に目線を合わせる。
男がゆっくりと、口を開く。
「初めまして勇者諸君、俺はこの国、グリムレグヌムの騎士団長を務めるヘンゼルだ!突然ですまないが諸君らには我らが王に会ってもらう!」
「...ハァ?」
キレそうな思いを必死で抑えて私は呟いた。