日常は消えて始まりは語る
朝食はサラダとスクランブルエッグ、塩パンと決めている。何故なら朝から肉や、魚の類いを食べる気にはならないし、値段がかかるからだ。
「やはり何年たっても私の腕は衰える事はないだろうな♪」
楽しげに自らの作ったサラダの味に感激の言葉を呟く。作った料理がサラダだと言うのにここまで美味しく、香り豊かにできるのは才能というものだろうと少し間の抜けた事を考えながら食事を進める。
「我、この食事に、命に感謝を。」
空に十字を切りお辞儀を行い、空になった皿をまとめるとキッチンに運ぶ。ニュースの音が耳に響き言葉を耳から脳に伝える。
・・・「アアっ!?」
・・・ニュースの言葉に耳を疑う。ゆっくりとジャーナリストの声から発せられた言葉を思い出す...
「××県××市にて茜雲高等高校の学生が1日で集団失踪、事件の被害者はわかる限りで15人目...そして共通点が存在して私と同じAクラスの学生...おいおい嘘だろ?クラスメイトは27人だってのに...警察は何をやってるんだろうなぁおい...他国ならともかく優秀な日本警察様(お国の犬)がこの様とか笑えねぇ...ってか普通に考えて私も拉致られそうだなおい...」
・・・少なくともこの事件は特殊なものだろうし今の私が対抗できる手段は...有るっちゃ有るが、私1人が逃れたとして拉致られた15人は消えたままだろうし、最悪+11人も拉致られる可能性もあるだろうな...しかも警察が調べてる間にまだ失踪者は増えてる可能性もある。...経験者として面倒臭いがちょっとした進行役にでもなるべきだろうか...ちらりと部屋を見渡すと私はニヒルな笑みを小さく浮かべ、
「ちょっと待ってもらえないか?」
私はそれに向かって呟くと自室の荷造りされたキャリーケースを部屋まで運び、お気に入りの黒く大きなこうもり傘を持ち、ため息1つして
「待ってもらってすまないな。私にできる限りなら精一杯善処させてもらうよ...なぁ?善良な神様よぉ?」
めんどくさげに呟き私は空間のヒビに目を向ける。大きくなるヒビに目を向け言葉を発する。
「全く...厄介体質ってやつか?オイ...」
...消えてしまう意識の中で私は誰かの「ごめんなさい...」という声を聞いた。