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女神様には何も貰えなかったけど、自前のチートで頑張ります  作者: 小夏雅彦
第七章:転移者戦争 あるいは神の代理戦争
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11-儚い願いを叶えるため何度でも立ち上がる

 女神がのけ反り吹っ飛ぶ。

 だが彼女は優雅な仕草で一回転し、立ち上がった。


「なぜ私のことを攻撃するのですか? 久留間武彦よ」

「なぜ? ふざけんな。この状況は手前が作ったんだろうが!」


 俺は大袈裟に手を広げ周囲の状況を指した。村は破壊され、誰もが傷ついている。マーブルたちはこの女に制止されているのか、動くことはなかった。


「誤解ですよ。私にはあなたの大切なものを傷つけるつもりはありません。

 私が殺さなければならないと考えているのは、あなた以外の転移者で(・・・・・・・・・・)()


 女神はこの場に出て来た多良木とハルを見て言った。その眼差しはあくまで慈悲深いものだが、それだけにやると言ったら確実にやる凄みを感じる。


「そもそも転移者がどうしてこの世界に来るのか知っていますか?」

「知らないね。そもそも興味もないけれど……」

「転移者をこの世界に送り込んでいるのは、世界の破滅を狙う悪神なのです」


 ハルも多良木も息を飲む。

 こいつはいったい何を言っているのか……


「男の神を見たはずです。この世界に来た、その時に」

「後光を背負った、あの高貴な男……あれが、悪神だと言うのか?」


 女神はこくりと頷いた。俺は見たことはないが、ハルがああ言うということはかなりカッコいい男なのだろう。やはりイケメンはロクでもない奴ばっかりだな。


「彼はこう言ったのでしょう。『自由を守るために戦え。それが正義だ』、と。

 ですが彼が保証する無限の自由の先にはいったい何が待っているでしょうか?

 力は暴走し、タガは外れ、やがて自由という名の破滅が訪れるでしょう。

 無限の自由に人間は耐えられない」


 凄まじい上から目線で女神は言い切った。とはいえ、そこに真実がないかと言われれば解答出来ない。彼女が言っていること自体は間違っていない。


「社会を維持するためには秩序が必要。私はそう言ったが彼は聞かなかった。

 悪神と私は争い、そして敗れた。長きに渡る封印と混沌の時代の訪れです。

 このまま世界が突き進めば、いずれ致命的な破局を迎えてしまうでしょう。

 それを避けるために――」

「いい加減話が長ェってんだよ、手前!」


 踏み込み拳を突き出す。

 女神は流れるような動作でそれを捌いた。


「……話を聞いているのですか、久留間武彦。彼らはこの世界を滅ぼす――」

「なあ、『知ったこっちゃねえ』って言葉知ってるか?」


 その場で反転しながら肘打ち。

 女神はそれを受け止め後退する。


「あんたが守りたいものと俺が守りたいものは違うんだ。分かるか?」

「例え何を守ったとしても、この世界が滅んでは同じことではないですか」

「この世界を守ったとしても、守りたいもの無くなったら意味がない」


 俺は女神を真正面から見据える。いまや彼女は可憐さと慈悲深さという仮面を脱ぎ捨て、支配者らしい尊大さと傲慢さを放っていた。常人ならば怖気づいてしまいそうな威圧感。だが俺はそれを受け止め、高らかに宣言する。


「俺が守りたいのは、俺の大切な人たちだ。彼らが守りたいものすべてだ。

 それはつまり、この世界のすべてを守(・・・・・・・・・・)るってことだろ(・・・・・・・)?」


 俺の返答に、女神は心底不快そうな表情を浮かべた。


「どうやら話にならないようですね。すべてを救うことは出来ない」


 女神の目が黒く怪しく輝き、全身を不可視のエネルギーが覆っていく。その力を受けて大気が逆巻き、土埃が舞い上がる。いつの間にか空には暗雲が立ち込め、ゴロゴロと不機嫌な泣き声を上げていた。本能的に俺はその力を感じ取る。


「それは……まさか、ファズマなのか(・・・・・・・)!?」

「あなたに目をつけたのは、私たちでさえも知らなかった力を使っていたから。

 あなたの力を解析し、そして実用化したのです。震えなさい、久留間武彦」


 女神は黒いナイトドレスめいた衣装を身に纏い、顔全体をすっぽりと覆うフルフェイスヘルメットを身に着けた。ヘルメットにはカラスめいた羽根飾りが付いており、ところどころにあしらわれた飾りと相まって禍々しい印象を強めている。隙間から覗く白魚のような指は確かに美しい。


 だがそれは死と隣り合(・・・・・・・・・・)わせの美だ(・・・・・)

 命を燃やし尽くそうとしている者だけが纏うことの出来る美だ。


「これで私はあなたと同じ力を得ました。絶望しなさい、久留間武彦!」


 女神が両手を振り上げると、衝撃波が放たれた。それに煽られハルたちは吹き飛ばされ地面に転がる。俺は堪え、接近戦を挑んで来る女神を迎え撃つ。


「御大層なこと言っておきながら、最終的には殴り合いかよ……!」


 いつの間にかその手には黒い刀身のナイフが握られている。女神は殺し屋の如くナイフを逆手で持ち、振り上げる。手甲でそれを弾き、逸らそうとするが、直前で刀身が3つに分裂した。予想より強い威力に俺の防御は弾き返された。

 首を狙って放たれた逆の一撃をのけ反りかわす。勢いに乗らせてはいけない、半歩足を引き体勢を整え、素早く三連撃を繰り出した。胴体を狙って放った攻撃はあっさりと受け止められるが、女神は攻撃を一時中断せざるを得なくなった。


 それでも再びイニシアチブを得るべく、左のナイフを順手に持ち替え突き込んで来た。本能的に俺は前転を打ち、ナイフを潜り抜け女神の後方に回った。予想していた通りナイフの刃から黒い炎が生じ、撃ち出された。防いだり避けたりしようとすれば逆に一撃を貰っていただろう。これ以上こいつを動かしたらマズい。

 俺は敢えて立ち上がらず、膝立ちになった。女神はナイフを振り払うが、そこに俺の頭はない。隙を見逃さず膝関節に手刀を叩き込み女神の体勢を崩した。不安定な姿勢になった女神、その襟首を掴み引き倒した。素早く馬乗りになり、拳を振り下ろす。これ以上、一瞬だってこいつを生かしてなどおくものか。


「くっ、おのれ! ただの人間如きが、このような……!」


 呻くが、しかし両腕を押さえられた状態ではナイフさえ満足に使えない。そう思っていたが、しかし女神はナイフを地面に突き立てた。何をしようとしている、そう思った瞬間地面から黒い炎の蛇が飛び出して来て、俺の甲冑に体当たりを仕掛けて来た。予想もしていなかった一撃に俺は吹っ飛ばされ、地面を転がった。


「転移者は、殺す。この世界の秩序を乱すものを、1人残らず排除する……!

 この世に生きとし生けるもの、必要なし。世界を死の静寂で満たすのみ……」


 立ち上がった女神は、刀身に不穏な炎を宿らせた。避けたいが、俺の後ろにはハルたちがいる。クロスガードの姿勢を取り女神の一撃を待ち構えた。女神はナイフを十字に振り下ろし、そこから黒い炎の刃が飛んで来た。高速で飛来する刃が俺を打つ、防御さえも打ち破る一撃を受けて、俺はもう一度ふっ飛ばされた。


「用済み……! お前が私を解放した! であるからに、お前は……!」


 瞬間、女神がフリーズした。止めを刺しに来ると思ったが、予想外だ。体勢を立て直し次の一撃を待つが、なかなかあいつは動き出そうとしない。


「久留間、さん!」


 聞こえてはいけない声が聞こえた。俺は素早く振り返る。


「レニア、屋敷に戻れ! こんなところまで出て来るなッ!」


 一瞬気を逸らしたのがマズかった。女神は殆ど瞬間移動のような速度で俺の側面に回り、ナイフを突き出して来た。2本のナイフと甲冑とがぶつかり合い、爆発的なエネルギーが俺に叩き込まれる。俺は3度ふっ飛ばされた。


「――負けないで!」


 涙交じりの声が聞こえる。


 分かってる、負けるはずがないだろう?

 神だろうが何だろうが、俺の邪魔をする奴に俺が負けるはずなんてない――!


神VS武彦!


お読みいただきありがとうございます!

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