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女神様には何も貰えなかったけど、自前のチートで頑張ります  作者: 小夏雅彦
第七章:転移者戦争 あるいは神の代理戦争
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10-ひらひらと舞い踊る雪が暇を持ってくる

 ……しばらくの間、王国と連合の小競り合いが続いた。王国は戦力の上では連合を圧倒していたが、ダークの持つ個の力に攻略し切れなかった。連合側も純粋な戦力では勝っているようだったが、扱いの難しいダークを大規模に投入出来ないものと見えた。連合側転移者はあれから引き気味に戦うようになった。俺たちもあいつらを仕留めることが出来ず、戦線は膠着状態に陥ってしまった。


 それは、唐突な変化だった。

 夜目を覚まし、窓の外を見て気付いた。


「……あっ、雪。もう、こんな時期なのか……」


 こちらの世界にも雪は降るんだ、なんてことをぼんやりと思った。


 11月3日、冬の到来。

 王国と連合はなし崩し的に自然休戦へと移行していった。




「寒ィ……マジで凍える。このままじゃ死んじまうっての……」


 それから一週間。相変わらず警戒は続いているが、敵側にもまったく動きはない。おかげさまで俺たちは楽をさせてもらっている。とはいえ、まったく動きがないので暇なことこの上ないのだが。物資も無限ではない、睨み合いがこれ以上続けば……あまり考えたくないことではあるが、共倒れということも十分考えられる。

 エラルドに帰りたい。そう言ったが却下された。雪のせいで交通網も寸断されているし、西方との関係が予断を許さない状況だからだ、と言われた。またその点についてはエラルド側も了承している、と。そう言われては何も言えない。


「んだよ、情けない声上げやがって。ちっとは我慢することを知らないのか?」

「お前はいいよなぁ、基礎体温高いんだから。俺も改造受けようかな……」


 バイソンは消費するエネルギーが多い代わりに基礎代謝が優秀だ。体温も高い。怪我知らずで病気知らず、風邪を引くことすらない。大飯喰らいではあるものの、デメリットを帳消しに出来るだけの利点を彼女は持っているのだ。


「……とにかくお茶を貰うぞ。えーっと、薬缶は……」

「見張り台の連中が持ってっちまったぞ。文句なら奴らに言え」

「あんなところで火ィ焚いていいのかよ? バイソン、あっためてくれよ」


 言ってから若干セクハラ臭いかな、と思って彼女の方を見た。バイソンはぞっとするほど冷たい笑顔を浮かべて指先を向けて来た。先端に赤い炎を灯らせて。


「クソ、冗談だよ。冗談だからそれを止めてくれ、生身だとさすがに死ぬ」

「だったら下らないこと言ってんじゃねえっつーの。ったく、こんなのが……」


 ブツブツと文句を言うバイソンを無視して、暖を取る方法を考えた。普段から雪深い場所なのだろう、防寒対策は完璧であるように思えた。厚い壁、二重窓、二重扉。暖炉も熱を逃がさないような構造になっている。改善は無理そう……


 そんなことを考えていると、扉が勢いよく開かれた。

 寒風が吹きすさぶ。


「うわっ、寒ィ! ちょっと、開ける時はもうちょっと気を付けてください!」

「んなこと言ってる場合か、小僧ども! 大変だ、さっさとこっち来い!」

「……! ついに来たか。どこから攻めて来たんですか、ルークさん!」


 警備隊長、ルークさんがここまで切羽詰まった対応を取るということは敵が来たのだろう。そう思っていたが、ルークさんの回答は俺の予想とは違った。


「そうじゃねえ、ドラコ様がいらっしゃったんだ! ご家族連れでッ!」

「はぁ? ご家族って……え、もしかして弟さんたちと一緒に!?」


 まさかファルナとレニアも? いや、そんなことは有り得ないか。エラルドからこっちに向かって来るまで最低でも1週間はかかる。それは雪がない時の話で、膝の高さまで雪が降り積もるいまとなっては出てくることさえ不可能だろう。


「とにかく、お出迎えの準備を進めなきゃならん! お前らも来い!」


 俺とバイソンは顔を見合わせ、そして走り出した。本来部下でない俺たちが彼らの歓迎をする理由はないのだが、何事にも例外があるし、礼儀というものもある。こんな雪の中で村八分にされたらそれこそ生きていられなくなるだろうし。

 王族仕様の豪華な馬車が村に入って来た。道の左右には騎士たちが直立不動の姿勢で控えており、ここだけ王城のようだった。馬車から降りて来たのはドラコさん、オルクスさん、そしてローズマリーさん。いずれも仕立てのいい服を着ている。


「すまないな、お前たち。わざわざここに来てもらうことになってしまった」

「最高司令官たる兄さんが長々と戦場を開けているわけにはいきませんから」

「嫌味に聞こえるな。いや、実際お前に実務を任せっぱなしになっているか」


 ドラコさんは苦笑しながらオルクスさんと話す。


「聞いていれば出迎えくらいはしたものの……我が王は」

「ピリピリしてるから、俺たちに気を遣ってくれたんじゃないですか?」


 こんなタイミングで歓待しろ、なんて言われたらキレる人もいるだろう。


「やあ、久しぶりだね。諸君らの働きは王都にも伝わっているよ」

「はぁ、ここでダラダラしてるってのが分かるのはあんまりよくないんじゃ」

「安全だというのが分かってもらえるのさ。悪いことではないだろう」


 そう言って彼らはこの辺りで一番マシな建物である宿屋へと入っていった。ローズマリーさんの護衛である織田くんもそれに続く。そしてドラコさんは俺たちも一緒に入ってくるよう手招きした。直近の護衛をしろということだろう。


「しかし、来るなんて聞いていませんでしたよ。何でまたこんな……」

「そうだな。私もこちらに帰ってくるなどと、誰にも伝えたつもりはない」


 ……今回はマジで、お忍びでこっちに来たってことか?

 何考えてんだ。


 ドラコさんたちは大広間に陣取り、会議を始めた。内容はあまり良く分からなかったが、しかしこんなところで話すべきことなのか、と違和感を持つことが出来るくらいにこちらの世界のことを理解出来るようにはなっていた。


 だからこそ、分からない。

 何のためにこんなところに彼らが来たのか。


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