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女神様には何も貰えなかったけど、自前のチートで頑張ります  作者: 小夏雅彦
第七章:転移者戦争 あるいは神の代理戦争
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09-夜明けは戦いの始まりに過ぎない

 真性態(トゥルーフォーム)と化したイーグルは圧倒的速度で空を駆ける。それでも太陽は既に直上に昇っている。夜を徹して戦っているのでなければ、戦闘が再開された頃だろう。明かりも暗視装置もない時代、夜間戦闘は大きなリスクを伴う。なのでそんなことは起こっていない、と信じたいものだが……油断は出来ない。


「まあ安心するんだ。重層都市である王都を落すのは容易なことじゃない」


 確かに、王都は城塞を第一の関門としその奥に市街地と貴族街とを隔てる第二の障壁、更に王城とを隔てる第三の壁がある。力づくで突破するのは難しい、とは思うのだが……敵は一般兵士だけではない、転移者もいるのだ。


「あいつらのパワーがあれば、力づくで突破しようなんて考えてもおかしくねえ」

「だね。僕が降りて下の人たちを手伝おう。そう言うのは得意なんだ」

「私は暴れるぞ。それだけしか出来ないタチなんでな」


 橡は精神の集中を始め、バイソンは肩を回した。吹き抜ける風に炎と血と汗が混じり、怒声と悲鳴とが木霊する。目指すべき場所はすぐそこにある――


「……オイ、橡。こいつはいったいどういうことなんだ? エエ?」

「そんなこと僕が分かるわけないだろ。僕だって想定外だよ、こんなの」


 予想通り、すでに王国と連合の戦争は開始されていた。ただし……


 連合の主役では人間ではない。ダークだったのだ(・・・・・・・・)


「どうなってるの!? あいつらが戦いに乱入して来たってことかしら!?」

「そう言うわけじゃなさそうだ。ダークが襲っているのは王国騎士だけらしい」


 さすがの橡も表情を険しくしている。それもそのはず、状況は悪い。王国側の装甲騎士が何とか前線を押し止めているがダークの攻撃力、浸透力は高い。しかも王国側にはない航空戦力まである。空からの急襲、または投石はかなり高い成果を上げているようだ。ジリジリと前線が押し返され、城壁へと近付いて行っている。

 更に、ダークを支援する連合の兵士たちも油断ならぬ使い手だ。岩陰に隠れ弓を使い前線を支援している。仲間を巻き込む心配がないだけ射撃戦は連合側有利だ。身体変化(レベルアップ)の危険があるとはいえ、メリットは大きいのだろう。


「僕とバイソンさんが下に降りる。イーグルさん、上から支援を頼みますよ。

 久留間くん、僕たちが来たこと、応援が近付いていることを伝えてくれ」

「俺をメッセンジャーにしようたあ、いい度胸だな。その役目変われや」

「ダメダメ、僕は一度この国を襲った側だっていうことを忘れているのかい?

 僕が行ったら数秒でミンチにされる。キミだけにしか頼めないんだよ、お願い」


 ……悔しいが理に適っている。こいつが最初の襲撃に参加しなければ、こんな面倒にはならなかった……いや、どちらにしろ面識があるのは俺だけだ。


「俺が帰って来るまで、ちゃんと前線維持してろよ。じゃなきゃ承知しねえ」

「もちろん。抑えきれないような状態になったら、僕はもう死んでいるだろう」


 この期に及んで飄々とした奴。俺はファンタズムROMをセットし変身。イーグルの背中を蹴り地面に降り立った。降下した俺を目指してダークが殺到する。


「そうはさせない。久留間くんはこの国の、この世界の希望だからね」


 橡は両手を合わせた。光の獣の素体となる球体を一つにまとめてくっつけた。手を放すと球体は徐々に形を変えながら落下し、地面に落ちる頃には人型を取った。光の巨人……昔はそう言う名前のヒーローが出て来る番組が好きだった。

 体長4mを越える巨人は両手から光線を発射し、地上を満たすダークたちを蹂躙した。異常を察知し、ダークたちは巨人に向かって走り出す。だがそれに合わせて火炎弾がいくつも放たれ、近付いてきたダークたちが焼かれて消えた。


「この姿になるのは、あんまり好きじゃねえんだけどな……!」


 フレイムバイソンは自らの体に眠る熱の力、サラマンドロ因子を解き放った。髪と瞳が赤く燃え、全身が赤橙色のオーラめいたものに包まれる。それは実際、彼女の体に蓄えきれなくなり放出された熱だ。陽炎が大気を揺らめかせる。

 イーグルの背を蹴り降下。彼女の肉体がどんどん変質していく。熱に耐えられるほど強く、蓄えた熱を十全に使えるほど柔軟に、そしてあらゆる力に負けないほど強く。強固な外骨格に包み込まれ、フレイムバイソンは地に降り立った。炎のように赤い鱗を持った人型の蛇に彼女は変わった。


「おー、スゲー。久しぶりに見たけどあれインパクトあんなぁ……」


 パワー、スピードは向上するが基本的な技術は変わらない。そうでなければ多分負けていた。あいつに任せておけば、この場は大丈夫だろう。橡の怪獣もいるし。俺は増設アダプタにファイターとクレリックのROMをセットし、再変身した。0と1の暴風の中で強固な白銀鎧と聖剣、そして十字シンボルを抱いた盾が顕現した。これぞ攻撃力と防御力を併せ持った不壊なる鎧。ジョブ:パラディンだ。

 金属と金属とがこすれ合う音が辺りに響く。戦いを続ける騎士たちもギョッとして俺の方を見た。ダークが爪と牙で襲い掛かって来るが、それを無視して俺は突き進んだ。スピードは落ちるが装甲強度はファンタズムの中でも随一だ。


 剣を振り回し、ダークを打ち払う。城門の前まで到達したところでいったん動きを止め、剣を地面に突き刺した。刀身がバチバチと音を立てながら白熱し、俺を中心とした半球状のフィールドが発生した。悪しき者と善なる者――要するに俺が選んだ相手――を選別することが出来る、他の形態では使うことの出来ない攻性障壁だ。


「さぁて、楽しくやろうじゃないか。俺が来たからには手前らは全滅――」


 弾き飛ばしたダークの群れに剣を向けた。が、ダークは突如として崩れ折れた。彼らの体はグズグズに溶けて液体状になり、ダークだったものはまるで潮が引くように開拓者連合領土へと戻って行った。肩透かしを食らい俺は固まった。


「どうやら敵は一時撤退したようだな。

 救援に感謝するぞ、久留間武彦」


 騎士の一団の中から、誰よりも目立つ男が出て来た。

「……ドラコ国王。いいんですか、あなたがこんなところにいて!?」

「当たり前だろう。私はこの国で誰より強い。ならば戦う義務があるのだ」


 見惚れるくらい清々しい笑顔と、まるで理屈になっていない言葉。この人の無限の自信はどこから来るのだろうか。まあともかく、難は逃れたということだ。


「終わった、という顔をしているな。だがまだ終わってはいないぞ」

「ええ? でもあいつら退いて行ったんですし、しばらくの間は……」


 と、そこまで行って俺はようやく思い至った。

 そうだ、終わりではない。


「王都周辺には多数の村落が存在していることは知っているな?」

「ええ。で、それは開拓者連合側にもいくつかある、と……」

「そうだ。我が領土を奪還するまで、戦いは決して終わらない……」


 ドラコさんはいつもと変わらぬ笑顔で、西方との戦争を宣言したのだ。


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