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女神様には何も貰えなかったけど、自前のチートで頑張ります  作者: 小夏雅彦
第七章:転移者戦争 あるいは神の代理戦争
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09-鷹もおだてりゃ龍になる

 イーグルたちを説得して俺たちの戦力に引き入れる。勝算がないわけじゃない、あいつらだって元いた場所を奪われたんだ。それを取り戻すために一緒に戦う、いわばWinWinの関係だ。案の定、2人は乗って来た。


「仲間をやられて黙って見てたんじゃ、戦士の名折れだからな……!」

「同盟を組んでいる相手が困っているんだったら、手を貸さないといけないわ。

 あんたたちもアタシたちに手を貸す。気持ちいいくらいに正当な関係ね」


 フレイムバイソンは結構やられていたが、少し休んだら大分よくなったようだ。生体サイボーグたる彼女の再生能力は常人の3倍近いという。


「と、なったら善は急げだ。まずは俺たちだけで王都の状況を確認して来る」

「たった4人で行くのか? 危険すぎるだろう、それは」


 ハルは承服しかねる、という風な態度だったが、橡はこちらに賛成した。


「彼らの実力は並みの兵士を遥かに上回るんだろう?

 だったら、彼らについて行かせる兵士の方が可愛そうじゃあないか。

 少し時間を置いて行かせた方がいい。それに、向こうの状況も分からない。

 斥候代わりに彼らを使ってやってもいいんじゃないかな?」

「考えを代弁してくれて有り難いけど、何だかムカつくのは何でだろうな……」


 橡はエラルドの知恵袋としての地位を定着させつつある。

 元は敵なのに。


「王都に向かうのは久留間くん、バイソンさん、イーグルさん、そして僕だ。

 長距離通信機があるんだろう? イーグルさんは逐一こっちに情報を伝えて。

 あなたのことは僕たちが守る。王都に入って守備隊と合流して……

 まあ、それから先は現地で考えよう」

「んなこと言って、『界渡りの連合』と合流する気じゃないだろうな?」


 ハルは疑惑の目を向ける。

 こいつの態度がはっきりし過ぎているからだ。


「誤解がないように言っておくと、僕はもう彼らと縁が切れているんだ」

「どうだか。口ではいくらでも言える。下手なことをしたらその瞬間殺す」

「キミにそう言ってい貰えると、いくらか話がスムーズに進みそうだね」


 橡は苦笑しながら言った。

 とにかく、それ以上反対意見は出なかった。




 荷物を用意し離陸(・・)の準備を進める。荷物の中には余分な食料、武器、矢弾も含まれている。王都の生産能力は高いが戦いになれば外殻を埋める村落は焼け出されてしまうだろう。そうなれば少しでも多くの物資を持って行った方がいい。


「だが、これほど多くの物資をどうやって運ぶつもりだ? 馬もなしに」

「そこら辺は、すでに手があるんですよ。頼んだぜ、イーグル」


 イーグルはうーんと唸り目を閉じた。応接間ですでに話を終え、やる方向性で固まっていたのだが、最後の抵抗に打って出たようだ。しかしそれでも、周りから突き刺さる視線には耐えられなかったらしい。イーグルはいきなりキレた。


「あー、もう! 分かったわよ! やればいいんでしょ、やれば!?」


 イーグルは生体リミッターと偽装処理を解除し、戦闘態に変身した。これまでの外見はあくまでホロプロジェクションによって作り出された仮のものだったのだ。唐突な外見変化に人々は戸惑い、悲鳴さえ上げる。イーグルはうんざりした様子だ。


「だから嫌だったのよ、こんなの。アタシ本来の美しさじゃないわ!」

「ほらほら、グダグダ言ってないで次の形態を取ってくれ。待ってるんだから」


 イーグルは唇をかみしめ、血涙を流さんばかりに目を見開いて次なる変身を行った。そんなに嫌なのだろうか、あの姿――真性態(トゥルーフォーム)――を取るのが。


 彼の全身を包み込む人工筋肉がミシミシと音を立てて膨張する。それに合わせてサイバーウィングも1対から3対に増殖した。もはやそこにいるのは鷹ではない、ドラゴンだ。フワフワとした羽毛を身に纏ったドラゴンがそこに現れた。


「おお、これがディメンジアの力とやらか……! 如何なる魔法を……!」

「科学の力よ。全然、こんなの、美しくないからアタシは嫌いだけどね」

「でもおかげさまでみんな乗って行ける。ありがとな、イーグル」


 俺たちはイーグルの背に荷物を積み込み、出発の準備とした。


「あんたたち、アタシのことを飛行機かなんかと勘違いしてんじゃないの?」

「しょうがないじゃん、フライングソーサーもないんだから……」


 あれがあれば輸送に革命が起こるな、などと考えていると屋敷から子供たちが飛び出して来た。俺たちを見送りに来てくれたようだ。


「気を、付けてください……久留間さん」

「ちゃんと帰って来てくれよ、武彦。戻って来なかったら……」


 ファルナがいい、ミーアもそれに頷く。俺は無言でサムズアップ。

 絶対に帰って来る。そのために俺は行くんだから。


「さあ、それじゃあ行くわよ! 準備はいいわね!?」


 イーグルが俺たちを促す。

 俺とバイソン、そして橡はイーグルの背に乗った。


「あはっ、中々座り心地がいいね。それじゃあお邪魔するよ、イーグルさん」

「ったく、この世界のイケメンってのはどうしてこう人格的に……」


 ブツブツと言いながらイーグルは翼をはためかせた。集まった使用人、メイド、兵士。そして教会の人々さえも俺たちを敬礼で見送った。圧倒的質量を持ったイーグルが徐々に陸を離れる。小さくなっていくエラルド領。


「……私のトゥルーフォームも、解放する必要があるかもしれないな」

「多分、ある。あいつらだって雑魚じゃない、力は必要になるだろうな」


 遥か彼方を見据える。

 目指すはこの国の中心。


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