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女神様には何も貰えなかったけど、自前のチートで頑張ります  作者: 小夏雅彦
第七章:転移者戦争 あるいは神の代理戦争
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09-本当に守らなきゃいけないものは何なのか

 王都危機。

 その報はすぐさまエラルド中を駆け巡って行った。


「絶対に反対です。いまのエラルドから兵力を動かすべきじゃあない」

「かと言って、このまま手をこまねいていたら絶対に共倒れになるよ?」

「お前さんの気持ちも分からんでもないが、ここは私情を優先すべきじゃない」


 目下の話し合いは、攻撃を受けた王都に兵力を送るか否かだ。俺は否を繰り返したが、レオールさんもナーシェスさんもそれに取り合わなかった。シオンさんという最高指導者を失った今、暫定的にこの領土の支配権は2人に移譲されていた。


「このままじゃエラルドを守り切れません。絶対に行くべきじゃない」

「ここには教会軍も駐留しているし、多良木くんやハルくんもいるだろう。

 ある程度の勢力であれば撃退出来るだろうし、過剰な戦力を送るとは思えない。

 ここは有数の穀倉地帯だけど、ここじゃなければいけないっていうのもない。

 ましてやここから先にあるのは不毛の大地だけ。戦略的価値も高くない。

 余剰兵力は他所に回すべきだ」

「だからって……レニアとファルナを危険に晒すわけにはいかないでしょう!」


 2人とも俺の強固な態度にいい加減うんざりしている、という風だった。


「何度言ったら分かる、小僧! ここだけの問題じゃねぇンだよ、もうな!」

「そんなこと俺が知るか! 国同士の争いなんて勝手にやってりゃいい!」

「嘆かわしいなあ。義姉さんが見たらキミのこと、どう言うだろうね?」


 言葉に詰まる。

 もういない人を持ち出してくるなんて卑怯だ。


「下がってろ、小僧。お前は冷静に話し合いが出来る状態じゃねえ。いいな。

 元より手前にエラルドのことを決定する権利なんぞねえ。分かったな!」


 レオールさんに一喝され、俺は部屋から追い出された。

 クソッタレ。


 俺は中庭に出た。が、あまり良くなかった。中庭は中継基地めいた様相を呈しており、様々な物資や食料が馬車に積み込まれていた。メイドや使用人の人々がせわしなく走り回り、準備を行っている。戦争のための準備を。ため息が出て来る。


「……久留間、さん? どうしたんですか、こんなところに……」


 声を掛けられ振り返ると、レニアとファルナの姉弟がいた。


「追い出されちまったよ。こんなところにいても邪魔だ、ってよ」

「そっか。それじゃあ僕たちと一緒だね。出来ること、何もないから」


 ファルナは寂しげな笑みを浮かべた。レニアもどこか寂しげだ。


「……こんなところで突っ立ってるのもなんだ、茶室にでも行くか?」


 2人は頷いた。俺たちは中庭に設置されたティーラウンジへと向かったが、しかしそこにも先客がいた。丸テーブルに地図を広げて、それとにらめっこをしているのはハルとリニアさん。その横から橡が何事か口を出している。


「おお、久留間。戻っていたか。大変なことがあったようだな」


 俺はリニアさんに頭を下げた。彼女もそれ以上のことを言う気はないようで、すぐに地図に目を戻した。エラルド、王都間の地理を表示した地図だ。


「……本当に行く気か、ハル。そんな危険なところに、わざわざ」

「もはや一領土で対抗出来る事態ではないからな。転移者どうこうではない。

 もしかしたら我々の常識を超越した存在……神が関わっているかもしれない。

 備えて備えすぎる、ということはないだろう。何が起きても不思議じゃない」


 ハルも、リニアさんも、橡でさえも戦っている。

 いま、この瞬間も。


「……久留間、さん。ドラコ義兄様を、助けてあげてください……」

「……レニア。ダメだ、俺にはそんなことは出来ない。俺は、もう二度と」

「失いたくないのは僕も一緒だよ、武彦。でも僕たちじゃ無理なんだ、まだ。

 だから僕たちは、それが出来る人に頼むことしか出来ないんだ……

 情けないし、卑怯だけど、でも」


 レニアとファルナは俺の目を真っ直ぐ見つめて来た。赤と青の瞳が。


「お願い。大切なものをどうか、守ってください……」


 それは、切なる願い。同時に、俺はそこにあるはずのない面影を見た。あの人がもし生きていたなら、自分の命の勘定など置いてそう言うだろう。だからこそ、あの時、あの人は笑って死んだんだ。ああなれないし、なりたいとも思わない。


 それでもそれに応えるのが俺のやるべきことなのかもしれない。


「……ハル。どれだけの兵力を向こうに送る算段になってるんだ?」

「歩兵150に魔法使い30、いずれも魔素強度(レベル)は0から1だ。

 指揮官としてリニア。それから15日分の食料と水を持っていくつもりだ」

「減らしてくれ。こっちの防備が必要だ。減らした分は俺たちがやる」


 腐ってなんかいられるか。


 守ってやる、レニアとファルナの願いを。

 その邪魔をする奴がいるんならば容赦はしない。

 全部俺がぶっ飛ばして越えてやる。


「俺『たち』? 久留間くん、キミは戦力にアテがあるのかい?」

「この期に及んで、あいつらだって拒否するような真似はしないだろうからな」


 あいつらにだって守りたいものがあり、取り戻したいものがある。

 だったら乗ってくるはずだ。

 そうでないのならば、あいつらは仲間になっちゃいない。


「ディメンジアの連中にも手を貸してもらう。化け物には化け物を、だ」


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