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女神様には何も貰えなかったけど、自前のチートで頑張ります  作者: 小夏雅彦
第五章:向こう側の因縁 次元帝国ディメンジア
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06-空中お散歩デート

 それからアクアクラーケンはたっぷり時間を駆けてバイソンに説明を行った。俺はと言えばあまりに時間が掛かり過ぎるので、さっさと部屋に引っ込ませてもらった。グダグダと酔っ払いに絡まれるのは嫌なんだ。すまないね。


 翌日。

 ラウンジに来た俺が見たものは、酔いつぶれた四大幹部だった。


「……お前ら、いったい何やってんだよ。ってか、ワリと自由だな……」

「うーん、皇帝陛下もオフの時間は結構自由を許してくれる……ウプッ」

「お前らにもオフの時間とかあるんだな。ってか、酔っぱらうんだなぁ……」


 身体強化を受けたバイオサイボーグでも酒には酔うんだな、と思った。イーグルの言うところによると、普段は毒物やアルコールに対して耐性を持っているがそれをオフにすることも出来るという。そうでなければ酔っぱらうことが出来ないからだ。酔えない酒など酒ではない、と言うことか。ワリと趣味的な代物なのかもしれない。


「くっ……よく来たな、久留間武彦。本日は我々の、ウーム」

「頭がガンガンに痛むんなら無理しなくてもいいから。ほら、飲むか水?」


 彼らの酔いを醒ますまでに、たっぷり30分以上は掛かった。

 それから、俺たちは城の下層に向かった。相変わらず二日酔いに苦しんでいる風だったが、さすがに歩ける程度には回復しているらしい。時折ふらつくが。


「で、どこに向かってるんだ? もしかして処刑場とかそういうところ?」

「お前を仕留められるなら行ってもいいが……データベースへと向かっている」

「データベース? そう言えば、タートルがいないな。そこなのか?」

「彼の持つ情報処理能力は我々の中でも随一だからな。

 同時に、ディメンジアには次元皇帝でさえも記憶し切れないほどの情報がある。

 タートルに科せられたのは、それら秘匿データのサルベージだ。

 高位者である彼にしか出来ない仕事、と言うわけだ」


 螺旋階段を降りて1階へ。ハイテクな白なのに、この辺はなぜかローテクだ。エントランスはがらんとしている、かつてはここにも豪奢な装飾が施されていたのだろうか? 隅にあった大扉を、アクアクラーケンは4回ノックした。


「タートル、いるな? 聞きたいことがある、ロックを解除してくれ」


 ややあって、扉のロックが解除された。俺たちは室内に足を踏み入れる。


「おお……! 見ようによっては幻想的、っていうか……

 スゲエな、これは」


 サーバールームだ。壁一面とクリスタル障壁で区切られた天井上と床下には数え切れないほど多くの黒い筐体が設置されていた。それらは青白いLED光を放ち、時折不満げに排熱する。光が青く照らす室内は、おおよそ現実感のない空間だった。


「クラーケンか……ようこそ。おや、珍しい客人もいるものだな」


 部屋の中心で座禅姿勢を取り、甲羅に何本ものケーブルを挿した怪人がいた。彼の名はアースタートル、ディメンジア四大幹部の一人にして人類を凌駕する博識の持ち主である。名乗ろうとしたが、彼はしわがれた手を上げて止める。


「キミが久留間武彦、すなわちファンタズムであるということは知っている。

 いまの私は次元城と一体化し、様々な情報を得ることが出来るのだ。

 カメラと接続して映像を見たり、マイクを使って音を収集することも容易だ。

 私はすべてを見ている」

「マジか、寝起きの姿まで見られたのか……変態チックだな、それは」


 タートルは穏やかに笑った。こんな老人だったとは、驚きだ。


「早速だがタートル、頼んでおいたことの進捗状況はどうなっている?」

「我々が持っている情報には、それほど有用なものはなかった。しかし」


 タートルは言葉を切り、中空に浮かんだコンソールを操作した。VR、いや、|AR(拡張現実)技術と言う奴だろうか? ここ一つを見てもディメンジアの技術は進んでいる。


「捕獲したダークを解析したところ、面白いことが分かった。

 この世界の人間が魔素と呼ぶものは、放射性物質に近い性質を持っている」

「放射性物質? ってことはこの世界の人は放射能を浴びてるのか?」

「放射線を発するものを放射能と言う。まあ用語としての正しさはいまはいい。

 ダークが発する放射線は肉体によってシールドされていて、死ぬと放出される。

 人体に吸収されやすい性質を持っており、他の動物や植物への浸食性低い。

 だがその理由は分からん」

「分からん、とはどういうことだ? 選択性を持つ要因の特定が出来ないと?」


 クラーケンの問いに、タートルは頷いた。


「人体実験をしたわけではないから、正確なことは言えない。

 だが、動物実験をした限りではそこまで劇的な変化は起こらなかった。

 もしかしたら、この世界の人間は放射線を引き寄せるのかもしれない。

 それから、これが一番大事なことだ。ダークは生物ではない(・・・・・・・・・・)

「何だと?」

「我々が使っている生物兵器に近い。

 生物としてなければならないもの……

 消化系や呼吸器系と言った臓器がない。

 あれは少なくとも自然界に存在する生物ではない」


 ダークが生物でなければ、いったいなんなんだ? 古代兵器の末裔?


「よくやった、タートル。引き続き調査を続けてくれ、何か分かるかもしれん」

「分かった。何か新事実が判明したら、すぐそちらに知らせる」


 そう言ってタートルは没入状態へと戻った。背中を丸め、白目を剥きながらよだれを垂らしている状況は傍目にはホラーだ。長いこと一緒にいたくはないので、出て行く。


「ダーク、か。本当にあの化け物はいったい何なんだろうな?」

「分かっていることは、あれが人間の体を大きく変化させるということだ。

 魔素によって強化された人類は我々にとっても大きな障害となる……

 まるでこの世界の人間のために用意されたような、そんな気さえしてくる。

 何なのだろうな、あれは」


 クラーケンはため息を吐いた。こいつも苦労してるんだな。考えながら一緒に歩いていると、通路の奥からイーグルが出て来た。戦闘用(よそいき)の装いだ。


「お帰んなさい。タートルちゃんの方はどうだったの?」

「よかったと言えばよかったし、何もなかったと言えば何もない、とでも。

 それより、その恰好はどうした? 周辺の偵察に行くのか?」

「こうして羽根休めばっかりしてると、退屈で死んじゃいそうだから」


 イーグルはサイバーウィングをはためかせた。空力と熱力学の集大成らしいのだが、どういうものなのかは分からない。俺もこうしていると暇だな……


「なあ、イーグル。俺も着いて行っていいか?」

「いいけど……あたしの散歩は空よ? あんた、ちゃんと飛べるの?」

「問題ないさ。ついて行けるかどうかは知らないけど、どうだい?」


 イーグルはクラーケンを見た。クラーケンは頷き、イーグルは笑った。


「なら、ご一緒しましょう。空のデートってのもなかなか乙なものよ?」


 別にデートをしたいわけじゃないんだが。まあ、いいんだけどさ。


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