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女神様には何も貰えなかったけど、自前のチートで頑張ります  作者: 小夏雅彦
第四章:マーブル模様と変わる世界
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04-ダンジョン探索の始まり

 森を見てくる、と伝えたら水と食料をマスターがくれた。長距離を歩くかもしれないし、迷うかもしれない。彼の心遣いに感謝し、俺たちは出発した。


「なあ、そのファンタズムってのは向こうの世界から持ってきたんだろ?」


 多良木は藪をかき分けながら話しかけて来た。

 俺もそれに続き応答する。


「だな。次元帝国ディメンジアとの戦い……いや、いまから思うと懐かしいわ。

 これがなかったら俺こっちで何度死んでてもおかしくねえからさぁ」

「どうやってその力を手に入れた? そんなもの、向こうにはなかっただろ」


 確かに一般に流通しているテクノロジーではなかった。

 だが、あるのだ。


砺波(となみ)博士が研究していたんだ。霊的(ファズマ)エネルギーと一緒にな」

「ファズマエネルギー? なんだ、そりゃあ?」


 藪を抜けて行くと、切り立った崖に辿り着いた。辺りを見回すと、丁度いい太さと長さの蔓が見つかった。これを使えば下に降りることが出来るだろう、丁度ヘリコプターのラペリング降下のように、俺たちは太い蔓の上を滑り降りた。


「ファズマエネルギーってのは、この世界を構成する5つ目の力のことだ。

 俺も詳しいことは知らないんだけど、この世界は4つの力で出来ているらしい。

 重力、電磁力、強い力、弱い力。物理学的に証明されているんだと。

 でも、そこで博士はもう一つの力の存在を思いついた、それが霊力。

 生物の魂、感情、そう言ったものを司る力だ」


 多良木は露骨に胡散臭そうな顔をした。

 そんな顔するなよ、俺も同じだ。


「まあ、そんなもん他の人間に信じられるはずはねえ。オカルトの領域だ。

 結局、博士は学会を追放されたがそれでも研究を続けた。

 そして、その存在を実証したんだよ」

「それがお前の力、ファンタズムとやらを構成するエネルギーなのか?」

「イエス。霊力は生き物という器に入っていて、死ぬと放出されるんだ。

 そして、いまの宇宙には有史以来活用されてこなかった霊力が満ちている。

 博士はその力を使って、現代のエネルギー問題をすべて解決出来ると考えた」


 多良木はまた微妙な顔をした。実際その通りなのになぁ。


 基本的にエネルギーは有限だ。火力は100年以上に渡って燃料を消費し続けてきたため、残りが少ない。また、燃焼時に発生する有害物質も問題だ。推力、太陽光などの自然エネルギーは技術的ブレイクスルーが起こらない限りは発電量の問題がある。原子力は発電量という観点では問題ないが、事故が起こった時が洒落にならない。

 一方で、霊力は有史以前から蓄積されてきたエネルギーがある。しかも、それは生物が死ぬ度に増え続けて行く。人口70億をゆうに突破した現代、日本だけでも年間100万人以上の人間が死んでいる。それだけで日本が必要とするエネルギーを賄えるのだ、と。人口の多いアメリカやヨーロッパなどでは言うに及ばず、だ。


「……死人の魂を燃料にして生きて行けってのかよ、手前らは?」

「効率的だろ。使えるものは使っていくべきだ」

「イカれてるぜ、手前らは。だから話が合わねえんだな、手前とは」


 まったく、嫌われたものだ。

 嫌われるようなことをした覚えはないのだが。


「ファズマってのは結構柔軟で、使い勝手のいい物質なんだぞ?

 一番いいところは、物質の再現を行うことが出来るってことだ。

 博士は残された記憶の再現って言っていた」


 ファンタズマを戦闘用システム足らしめているのが、この性質だ。一定量のファズマに指向性を与えることで、ファズマはあたかもそこに物質があるかのように振る舞う。質量を持たぬファズマが質量を持つようになるのだ。甲冑や戦闘用の武具、あるいは筋肉や感覚を再現することによって、ファンタズマの力は成り立っている。


「……死者の力を纏って戦う、か。

 手前はいいのかよ? そんな物を使って?」

「え、いいじゃん強いんだし。何で?」

「お前に聞いた俺がバカだったよ、クソ」


 多良木は不機嫌になり、それっきり黙ってしまった。参ったなあ、この世界に放り出された転移者同士仲良くしたいってのに。多良木は貴重な仲間でもある、彼と不仲になるのは避けたかった。とはいえ、ここまで行くとどうしようもないか……


 森に入る前マスターから聞いていた水辺を見つけ、俺たちはそこで休憩を取ることにした。水場の周りには狩りや採集で使うのであろう小屋があり、もし何かあった時はここで休むことも出来そうだ。森の深くに足を踏み入れてしまった時は使おう。


「で、多良木。どこまで行こうと考えてるんだ? 一番奥までか?」

「そうだな。領域線のギリギリまで……山さえ越えなければいいんだろ?」


 然り、やるなら徹底的にだ。正直人手が必要な作業ではあるが、いまは俺たちしかいないのだから仕方がない。元々何か確証があってやっているワケではない、仮に森の探索を進言したところで、聞き入れられる可能性は低いだろう。人でも資源も時間も有限だ。


 休憩を終え、俺たちはまた声もなく歩き始めた。森にはいろいろな生き物がいる、キツネやウサギ、蝶や昆虫。そしてどこかから息を潜めて俺たちを観察している肉食生物。決してここは安全な場所ではない。彼らは俺たちの実力を察知し、攻撃をしてこないと言うだけのことだ。ここに住まう人々にとって、森は命懸けの死地なのだ。

 空を見上げる。太陽はすでに落ちかけており、世界を黄昏が包みかけていた。いまから戻れば宿場に辿り着けるだろう、俺は多良木に声を掛けようとした。と、多良木は目を見張り駆け出した。ったく、協調性ってものを持ってほしいもんだ。俺はため息を吐きながら多良木を追い掛けた。いったい何を見つけたというのか……


「あっ……! なんだぁ、こいつはいったい……!」


 視界が開ける。緩やかな斜面に辿り着いた俺たちが見たのは、明らかに人の手が加わっているであろう広場と、遺跡だった。岩肌をくりぬいて作られたのであろう原始的な洞窟、入り口の両脇には神像と思しきシンボルが立っていた。片方は盾を持ち、片方は槍を持つ。侵入者を近付けまいという確かな意図を感じる。

 何の遺跡だろう? 七天神教のものではないだろう、本山でもあのような像を見たことはない。と、そこで俺はソーナさんに習ったことを思い出した。ダークを信仰するという異教徒、『宵闇教団』の話を。どこでも見たことのないシンボル、と言うことはここは宵闇の遺跡なのか? しかしその名前から感じられるほどの恐ろしさを感じない。


「とんでもないものを見つけちまったな。多分宿場の人も気付いてないぞ」

「かなり奥に入って行かねえと見つからねえからな。知ってたら話題に出すだろ」


 多良木は斜面を滑り降り、遺跡の広場へと降りて行った。俺もそれに続く、敷き詰められた石畳はところどころひび割れており、そこから雑草が生えている。幸い、背の高くない草が中心なので歩行の邪魔になるようなことはないが。


「……見ろ、久留間。焼け跡がある、最近ここに誰か来たんだ」


 多良木が広場の片隅に跪いた。ちょうど風よけの岩が組み上げられており、幌か何かをかぶせれば雨も防げるだろう、と言う感じのところだ。そこにはつい最近もみ消されたであろう焼け跡があった。長くとも3日は経っていないだろう。


「……さて、と。マジでどうするか。この先に踏み込んでいくか?」

「行った方がいいだろう。いまなら中に焼け跡を作った奴がいるかもしれねえ」


 確かに。遺跡がどんな状態なのかは知らないが、転移者2人で挑んで返り討ちにされるようなものではないだろう、と信じたい。太陽が山の向こう側に沈み、黄昏時が訪れる。やがてこの世界は闇に包まれるだろう。俺たちはより深き闇の中へと落ちて行った。


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