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女神様には何も貰えなかったけど、自前のチートで頑張ります  作者: 小夏雅彦
第一章:異世界転移したのに何の力もない!? 当たり前だろ
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01-お嬢様を守れ!

 何だか落ち着かない。

 理由は分かり切っている、歓迎されていないからだ。


「あー……見事なお庭だなぁ。こんなの俺、見たこともねえわぁー」


 意を決して口を開き、ちらりと二人の方を見る。二人ともこちらと目を合わせようとしない。さみしい、というか居心地が悪すぎる。シオンさんも何でまた……


(まあ、このままにしておくわけにもいかねえしなぁ……)


 長くここで世話になるのだ、ならば二人に嫌われたままではいられない。そう、これはシオンさんが作ってくれたチャンスだ。絶対にモノにしなければ。


「そう言えば、直接名乗っていなかったね。俺は久留間武彦だ」

「知ってる……何度も言われなくたって、そんなことは分かってるよ」


 赤髪の少女、レニアは凍えるように冷たい声で言った。ここまでにべもない対応をされると、尻込みしてしまう。いかん、いかん。勇気を振り絞らなければ。


「キミたちのことを教えて欲しいんだ。

 しばらく一緒にいるわけだからさ」


 レニアとファルナは俺のことを睨んだ。強い憎悪を感じる、しかしここまで恨まれるような理由が何かあったか? 身に覚えはない、しかし……


「父様を殺した奴に、教えることなんて何もない」


 静かな、しかしきっぱりした拒絶だった。

 いや、ちょっと待て、父様を殺したってなんだ? まさかシオンさんの夫は俺と同じ、転移者に殺されたということか? もちろん、二人はそんなことに答えてくれない。叩きつけるようにカップを置き立ち上がった。


「お母様が来ないなら、こんなところにいたって意味ないよ」

「そうだね、行こうレニア」


 呼び止めることも出来なかった。呼び止めても否定しかされないだろう、坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、と言うコトワザもあるが、二人にとって転移者と言うだけで恨むには十分なのだ。それを克服することが出来るのは、二人だけだ。

 取り残された俺はひとり考えた。シオンさんがエラルド領の領主をやっているのは、夫が死んだからだろう。他の領のことが分からないので一概には言えないが、その可能性は高い。彼女は恨みを振り切り、俺のことを招き入れてくれた。感謝すると同時に、どういう意図があるのかを考えてしまう。もしかしたら……


「俺と言う転移者が、二人の意識を変えてくれることを期待している?」


 穿ち過ぎ、そして自惚れ過ぎだろうか。しかし転移者と言う存在が彼女にとっても愉快ではない存在なのは確かだ。それならば、もしかしたら……


「ッキャァーッ!?」


 レニアの甲高い悲鳴が響いた。

 俺は思考を中断し、声のした方向に向かった。


「オイオイ、どうなってんだよこれは?

 安全じゃねえのかここは……!?」


 レニアが棒立ちになって竦み上がし、彼女を庇うようにしてファルナが立つ。その眼前にいるのは、漆黒の鎧に身を纏った暗黒存在、ダーク。それも1体ではない、武装したダークが何体も現れたのだ。一番近くにいた個体が、二人に向けて剣を振り上げる。


「っぶねえ!」


 計算するより先に飛び込んだ。二人を庇い、押し倒す。二人の頭を狙って振り払われた剣は、代わりに俺の背中を切った。ってえ、血が噴き出す熱い感触がある。二人を抱えるように倒れ込みながらも、俺は追撃を放とうとするダークの膝を正面から蹴った。体勢ががくんと崩れる、ダークは攻撃を断念して後退した。


「ったく、退屈しねえなこっちの世界ってのはよ……!」


 俺はファンタズムROMを取り出し、立ち上がった。ROMの側面についているボタンを押すと、ベルトが俺の腰に現れた。バックルのスロットにROMを差し込み、正面右側についていたボタンを押す。軽快なヒップホップミュージックが流れ出す。


「レッツ・プレイ。変身!」


 緑色に輝く0と1の奔流が俺の体を包み込み、ファンタズムへと変化させる。レニアとファルナは目を見張った。俺は二人を庇うようにして前に立った。


「通しゃしねえよ、指一本たりともな。だからそこで、待ってろ」


 確認する、相手ダークは4体、こっちは俺だけ。屋敷から慌ただしい足音が聞こえるが、誰もまだこちらには来ない。俺だけでこいつらを相手にしなければならない。しかも無力な子供2人を守りながら。

 キツイが、出来ないわけではない。


「武器には武器、ならこいつだ!」


 ファンタズムROMはこちらの世界に物質として顕現しているが、ファンタズムの装甲や武装、他のROMはそうではない。この世に存在する霊的(ファズマ)エネルギーを加工し、この鎧は作られている。理屈はさっぱり分からないが、そういうことだ。すなわち派生形態に変身するためには、一度この姿にならなければならない。

 ホルスターから青いラベルの付いたROMを取り出した。近くにいた剣持ち(ソルジャー)ダークが両刃剣を突き込んで来る。俺はそれを左手で受け流し、突っ込んできたダークの胴体に足刀を叩き込んだ。吹き飛んで行くダーク、その背後から仲間が迫る。


「相手してやっから、ちょっと待ってろ!」


 バックルの左側にあるレバーを押す。排出されたファンタムズROMを取り出し、代わりに青いラベルの付いたROM、ファイターROMをセット。右側のスイッチを押すと、重厚感のあるメタル調ミュージックが流れ出した。


 0と1の光が再び俺を包み込み、鎧を変質させた。マントは背後に移動し、衣服のようだった装甲はより鎧らしくなった。すなわち腹、上腕、太ももと股間を守るための装甲が出現したのだ。

 更に、俺に右手に90cm程度の片刃剣が現れる。持ち手にトリガーの付いたオモチャめいた武器だ。左手には無骨な盾。ヘルメットには面頬、ハチガネと言った防御部位が現れ、眼孔部から黄色い光が溢れ出す。ファンタズム、ジョブ:ファイター。


 手元で剣をくるりと回転させ、一歩踏み出す。右側から迫るダークが振り下ろしてきた剣を横合いから弾き、手首を返して胴を深々と切り裂く。

 左に回り込んで来たダークが剣を薙ぐ、俺は左手の盾で受け止め、両足で地面を踏みしめダークを押し返した。ダークはまるでワイヤーで引かれたように吹っ飛んで行った。ファイターの強化筋力でこそ成せる技だ。


 更に正面からダークが迫る。足刀で吹き飛ばされたダークを飛び越え、ジャンプ体勢のまま切りかかって来る。避けられるが、避ければ2人が死ぬ。俺は剣を鎧で受け止めた。やった、と判断したダークは、しかし怪訝そうに身をよじらせた。剣は鎧をまったく傷つけていない。防御力の高さもファイターの持ち味の一つだ。剣を突きあげ、ダークの顎下から脳天にかけてを貫いた。ダークは一撃で崩壊し、大気に溶けて行った。


「さーて、それじゃあお片付けと行こうか」


 ベルトのボタンをもう一度押す。『スラッシュ・ストライク!』の機械音声が流れ出した。刀身に収束したファズマエネルギーを、真一文字の斬撃と共に解放する。瞬時に拡張された剣は壁に向けて吹き飛んで行った2体のダークを真っ二つに切断した。


「これでおしまい、と……怪我はないな、二人とも?」


 変身を解除し、俺は2人に向き直った。

 恐る恐る、頭を縦に振った。


「何の音だ……これはッ、いったい何があったッ!」


 レオールさんと武装した使用人たちが屋敷から出て来た。取り敢えず、これで大丈夫だな。俺は息を吐き、煉瓦敷きの床に腰を落とした。


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