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女神様には何も貰えなかったけど、自前のチートで頑張ります  作者: 小夏雅彦
第三章:王位継承選
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03-警告はしたんだし俺は悪くない

 そこから先はトントン拍子に話が進んで行った。ナーシェスさんは自分が付き合った100にも及ぶ女性の紹介でその両親と面会し、オルクスさんは城に常駐する学者連中からの支持を取り付けた。七天教会に加え、様々な貴族の支援を受けて、ドラコさんの支持は盤石なものになった。議長のドヤ顔が歪む様はさぞ痛快だっただろう。


 俺たちは城に残るように言われた。正直なところ、シオンさんはエラルドに戻りたがっていた。だが思いの外早々に戴冠式の段取りが整ったところを見ると、残っていて正解だったように思える。帰っていたら二度手間になっていただろう。


「しかし、戴冠式なんてやって人が来るのか? あんまり偉くなんだろ?」

「七天教会に比べればな。だがアルグラナ王国内においては比類なき権力者だ。

 参加しなかったらしなかったで、反逆の意志ありと見なされるのが普通だ。

 それに、こうした式典は往々にしてコネクションを広げるために使われる。

 王におもねらない奴でも、力の輪を広げるためには参加せざるを得ないんだ。

 なにせ国中の貴族が一か所に集まるんだから」


 そのためか、王国はかつてないほどの厳戒態勢が敷かれているという。城壁を防御する騎士たちも殺気立っている。対照的に、市民たちは新しい王の誕生を快く受け入れているように思えた。単に騒いで酒を飲みたいだけかもしれないが。


「さてと、それでは今日も行ってまいります。シオン様」

「お務めご苦労様です、ハルさん。気を付けて行って来てください」


 本職神官であるハルは、城の警備計画作成や周辺環境の調査などで忙しく走り回っている。不埒な輩が出ないとも限らない、例えばそれは王を暗殺しようという輩かもしれないし、もしくは混乱に乗じて盗みを働こうなどと言うアホかもしれない。そしてそのどちらも神聖なる式典にはあってはならない存在だ。


「ふぅ……レオールさんに任せてはありますが、やはり心配ですね」


 シオンさんは自らの領地を思い、たびたび物思いにふける。1週間以上王都に滞在しているのだから、当たり前だろう。あのレオールさんに、果たして領地経営が出来るのだろうか? まったく想像が出来ない。まあ今のところ上手くいっているのだろうが。

 そんなことを考えていると、扉がノックされた。控えめな力だった。


「どうぞ、入ってください」


 シオンさんに促され入って来たのは、金髪の少女だった。生意気そうなツラにどんなカーラーで巻いたのかと言いたくなるサイド、豪華なドレス。


「あら、お久しぶりですねミーナ様。あなたも戴冠式に?」

「はい。お父様と一緒に参りましたわ。それで、ファルナ様は……」


 出て来ないわけにはいかないのだろう。ファルナは複雑な笑みを浮かべて出て来た。ミーナはそんなことをお構いなしに、パッと笑った。そして部屋に足を踏み入れる。


「お久しぶりですわ、ファルナ様。一日千秋の気持ちでお待ちしておりました!」

「私もです、ミーナ様。こうしてまたお会いすることが出来て嬉しいです」


 この世界でも一日千秋に相当する言葉があるのか、と変なところで感心してしまった。ミーナはファルナの手を引いてどこかに連れて行こうとする。ファルナはやんわりと抵抗した。空気が読めないってのは罪だな、こりゃあ。


「待ってください、ミーナ様。どちらに行かれようとしているのですか?」

「いま城下ではお祭りが開催されていると聞きましたの。ご一緒にどうです?」


 手を離さないままでミーナは言った。

 それは誘拐と言うのではないだろうか?


「城下となると城よりも警備が緩い。危険なのではありませんか、ミーナ様?」

「まあ、もし危ないことになったら……ファルナ様がお守り下さるでしょう?」


 殺し文句だ、人によっては。

 ファルナは面倒そうな表情を作り俺を見た。


「……一応暇な護衛ならここにいるんですが」

「どうしてこれと一緒に行かなければならないの? 黙っていてちょうだい」


 これ呼ばわりとは失礼な。彼女にとっては貴族以外人ではないのだろう。ファルナの堪忍袋がそろそろ限界を迎えようとしているのを、ミーナは気付いているのだろうか? しかし、その間にレニアが割り込んで来た。


「ファルナ、私も……お祭りに行ってみたい。一緒に、行こう?」


 ミーナは嫌な顔をした。しかし、行けないよりはマシと考えたのかそれを口に出すことはなかった。レニアが行くのならば俺も護衛として行くことが出来る、か。


「分かったよ、姉さん。それでは一緒に行きましょう、ミーナ様」


 ファルナは諦めて言った。モテる男はつらいな、ファルナ。だがモテるにしても相手次第なんだな、と言うことを俺はファルナの表情から読み取った。




 街全体が浮ついた雰囲気に包まれていた。祭りと言ってもそれほど大規模なことをしているわけではない。出店があったり、王家の成り立ちを説明する紙芝居を上演する場所が公園に設置されていたり、まあその程度だ。貴族様なら飽きるんじゃないか、と思っていたが意外とそんなことにはならなかった。ファルナもまあまあ楽しんでいる。

 ノースティングには娯楽が少なかったのだろう。なのでこんなあからさまにコマ数が足りていなかったり、演技力がアレな紙芝居を楽しむことが出来るのだ。質の悪い油で揚げられたフィッシュフライも大層美味そうに食っている。


「取り敢えず楽しみにはなったみたいだな。よかったよかった……」

「はい。ファルナも、楽しんでいるみたいで……よかったです」


 レニアはまるで自分の事のように喜んでいる。大事な弟が楽しんでいるのが何よりも楽しいのだろう。やっぱり心優しい子だ、レニアも、そしてファルナも。

 ミーアがファルナを先導し、どんどん進んで行く。俺たちはそれを追い掛ける。


 2人の姿が路地の裏に消えた。

 小さな悲鳴を聞き届けた者は俺以外いない。


「……あー、参ったな。さすがに気ぃ抜き過ぎたか……」


 営利目的の誘拐、変態。色々な可能性が浮かび上がったが、いまなら追いつける。俺はレニアを抱えて走り出した。彼女の抗議を無視して路地裏へ、2人を小脇に抱えるデブが見える。子供の抵抗など意にも介していないようだった。


「おい、何だ手前! 見世物じゃねギャブ」


 デブを守るように立ったゴロツキの膝を割り進む。直近で控えていたゴロツキが拳を振り上げる。軽くそれを避けて、肩口から突っ込む。地面に倒れ込んだ男の顔面を踏みつけ気絶させ、俺を無視して進んで行こうとするデブの後頭部を掴んだ。


「さっさと2人を放せ。こいつらと同じことをされたくなければな……」

「はひぃっ!? わ、分かった。分かったから手を放してくれよぉ」


 デブは2人を乱暴に落とした。

 俺は手を放し、背中に蹴りを叩き込んだ。


「大丈夫か、2人とも? なんかおかしなこと、されてないよな?」

「は、はい。僕は大丈夫です、久留間さん。ミーアは……」

「けほっ、ひぐっ……だ、大丈夫! へっちゃらです、こんなの!」


 ミーアは涙声になりながらも強がった。心の傷になっていなければいいのだが、早々にここから離れて城に戻った方がいいだろう。立ち上がった時、前後から別のゴロツキが現れた。狭い路地を埋め尽くすほどの人数だ、なんだこいつら?


「退けや、兄さん。痛い目遭いたくなければな……ヒッヒッヒ」


 不健康な顔つきをしたゴロツキが懐からナイフを取り出した。

 ああ、まったく。


「光モノを仕舞え。怪我したくなかったら」

「怪我したくなかったら? 面白ェ、怪我すんのは手前の方だーッ!」


 顔色が悪いのは俺を排除しようと腰だめにナイフを構え、突進して来た。


「警告はしたぞ」


 身を捻り刃を避け、脇で腕を抱える。そして左手の人差し指と中指を立て突き込んだ。指は顔面に開いた穴、すなわち眼孔に入り込んだ。眼球を掻き出す。


「ギャアアァァァァァァーッ!?」


 ゴロツキの悲鳴が響く。

 うるさいので喉を掴んで黙らせ、壁に叩きつけた。


「2つ()を取り出してやってもいい。

 手前のツラを鏡で拝むこともなくなるんだ、悪くないだろう?

 そんなツラじゃ死にたくなるのも納得出来るってもんだぜ」


 ゴロツキたちは色を失い、裏路地から逃げて行った。仲間を助けよう、なんて奇特なことを考える奴はいないようだ。俺たちは呻くそれを放って路地から出た。


「最低限、護衛がカバー出来る範囲から離れないでいてくれよ。頼むから」


 振り向いた、俺を見る視線には恐怖が混ざっていた。ミーアなんかは純度100%の恐れだ。ビクリと震える子供たちを見て、俺は後ろ髪を掻いた。


「何だか白けちまったな。もう今日は城に帰るか?」


 みんな頷いた。城へと戻る道中、俺はあいつらを連行しなくてよかったのかな、と今更思った。まあ、いいか。どうせ何が出来るわけでもないだろうし。


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