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女神様には何も貰えなかったけど、自前のチートで頑張ります  作者: 小夏雅彦
第二章:世のため人のために力を使う? んなワケないじゃーん!
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03-王の資格を持つ者たち

 ノースティング領と境界線上で起こった事態に関しては、一応の終結を見た。シオンさんは終始ノースティング側に対して道義的、精神的に優位に立った。その上で彼らの面目を守り、今後の禍根となりえるものを徹底的に潰して今回の同意を得た。


「有意義なお話をさせていただきました、ノースティング公」


 帰る時まで余裕たっぷりだ。しかもその視線はバウラの爺さんではなく、本来の領主であるラウルさんに注がれている。バウラは当然面白くないが、口を出すわけにもいかないので黙っている。とことんまで、この人は強かなんだな。


「ノースティング、エラルド双方にとって良いものであると確信しています」

「今後もこのようなことは起こり得るでしょう。

 その時もこうして、協力し合ってことを解決していければと思います。

 それでは、これにて我々は失礼いたします」


 シオンさん、レニア、ファルナは深々と頭を下げた。そして彼らを移送して来た馬車へと向かう。と、そこに掛けてくる影が一つあった。金色の髪の少女、ミーア。


「ファルナ様、もう行ってしまわれるのですか?」

「はい。僕たちは領域を犯しています、早々に立ち去らなければなりません」


 ミーアは寂しげな表情をした。横暴な子供と言えど、道理が分からないわけではないらしい。涙声を出し、ファルナに別れを告げた。


「また、お会いできる日を楽しみにしていますわ。

 私はいつでもお待ちしております」

「ありがとうございます、ミーア様。

 僕もお目に書かれる日を楽しみにしています」


 ファルナは事務的な口調で言って、馬車に乗り込んだ。

 俺もそれに続く。


「態度の悪いクソガキだけど、いい子じゃないか。邪険にしてやるなよ」

「久留間、さん……! 声が、ちょっと大きいですよ」


 レニアが俺の頭を叩き、黙るように促す。ファルナは視線を落した。


「そんなに悪い子じゃないことは知っています。

 でも、ウマが合わないんだ」


 生理的に無理、ってわけか。ご無体なことを言ってくれる。とはいえ、惚れた腫れたは当人にだけ理解することが出来るものだ。俺がどうこう言っても仕方あるまい。様々なことが起こったノースティング領を俺たちは去った。




 ノースティングを旅立ってから2日、もうしばらくすればバルオラ村に着くであろう、というところまで俺たちは到着した。特に妨害も事件もなかったため、道中は平和極まるものだった。それがいい、と思いつつ、暇な分俺は色々なことに想像を巡らせた。レニアたちへのお仕置きはどういうものになるのか、とか。


 あるいは、他の転移者のこと。あるいは、向こうの世界に残して来た人たちのこと。いまの生活に不満はない、だがせめて言葉を送ることが出来ればいいと思う。両親はきっと心配するだろう、心配しなくたって大丈夫だと伝えたかった。


 バルオラとシウスとを結ぶ中間点にある宿場町に俺たちは入った。シウスの状況は相変わらずだった、ノースティングからの物資が届くまでにもまだ時間が掛かるからだ。何事もシミュレーションゲームのように命令を出しただけでは上手くいかない。

 2階建ての宿場、その1階は食事処兼酒場のような場所になっていた。普通の貴族はこういうところを利用しないそうだが、シオンさんたちはその例外らしい。だからこういう、場末の宿場町めいたところでも躊躇いなく入って行く……のだが。


「……? 何だか、妙にざわめいてるっていうか……」

「ええ、ここまで落ち着かないのは久しぶりですよ。

 何かあったのかな?」


 酒場の中は騒がしいが、それでも何か妙な、大人しさのようなものがあった。まるで大声で話したいのに、両親に怒られるのを恐れて小声で話している子供のようだった。その異様さを、馬車を引いていたアルフさんも感じ取ったようだ。

 シオンさんはそんなことは気にせず進んで行き、手早く宿の予約と飯の手配をする。時折ちらちらと彼女を見るような視線が向けられるが、シオンさんがそれに気付くと引っ込んでく。盗み見ている、という表現が正しい。


「お母様……なんだか、ここ怖い、です……」

「大丈夫ですよ、レニア。あなたを襲うような方はいませんから」


 シオンさんはグズるレニアの頭を撫で、手近な席に着いた。


「でも、気になりますね。俺、何か聞いて来ましょうか?」

「気にしないで大丈夫ですよ、アルフさん。

 知るべき情報は、その時になれば自然とこちらに来るものです。

 それまでは待っていましょう、お茶でも飲んで」


 慌てるアルフさんをなだめるために言ったのだろうが、結果的にはその言葉の通りになった。俺たちが飯を食い終えたくらいの時間に、宿のドアが開かれた。そこから入って来たのは白いローブを纏った少女、ハル。そしてもう一人は知らない男だ。


「ハル? お前、どうしてこんなところに……」

「シャドウハンターとやらからお前の位置を聞いた。

 合流出来てよかったよ」


 ハルはすっと身を引き、一緒に入ってきた男を前に出した。仕立てのいいジャケットを纏った男性は、しわがれた声で話し始めた。


「お久しぶりでございます、シオン様。レニア様。ファルナ様」


 高齢の樹を思わせる節くれ立ち、皺だらけになった肌。落ち窪んだ眼窩から覗く眼光はどこか不気味にさえ見える。腰は殆ど90度に曲がっており、杖がなければ歩行すらも不可能であるように思える。白く縮れた髪を振り乱す姿は幽鬼のようだ。


「なぜこんなところにあなたが? オーディス老、城の仕事は……」

「国王陛下が崩御なさいました。あなたをお迎えに上がったのです」


 水を打ったように、酒場が静かになった。国王が崩御、すなわち死んだということか。だから酒場の雰囲気はあれほどまでに乱れていたのだ。しかし、それと一体何の関係があるのだろう? 聞いたところによれば、シオンさんは平民の出だ。


「王家からは勘当された身です。もはや何の関わりもありません」

「国王陛下の御遺言によるものです。

 『我が息子、娘、そのすべてに王位継承権を与える』とありました。

 で、あるのならばあなた方にも継承権があると考えるべきです」


 そう言って、オーディス老と呼ばれた人物はレニアとファルナに目を向けた。恐ろしい怪物にでも睨まれたように、2人は身を竦ませた。シオンさんが睨む。


「王位継承権、って……もしかして、シオンさんの旦那さんって……」

「そう言えば、お前は知らないことだったな。

 特に説明もしていないし無理はない」


 いや、ここまで来ればさすがに分かる。分かるが……


「シオンさんの夫、ナサニエルの旧姓はアルグラナ(・・・・・)と言う。

 彼は、王国の王子だった」


 つまり、この子たちは王家の血を引くってこと?

 マジかよ。


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