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女神様には何も貰えなかったけど、自前のチートで頑張ります  作者: 小夏雅彦
第二章:世のため人のために力を使う? んなワケないじゃーん!
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03-不可抗力で領域侵犯

 2人は泣きそうな目で俺を見た。一発拳骨でも叩き込んでやろうかと思ったが、やめた。ここまで心細い思いをしたなら、それが一番の罰だろうから。


「その姿、転移者かな? でも見たことがないタイプだな」

「……そういうお前も転移者らしいな。(つるばみ)光満(みつま)、か?」


 このいけ好かないイケメンの事を、俺は知っている。

 クラスでは一番にモテて、成績も上位クラス。その上運動神経もかなりいいという出来過ぎた男。中学の卒業アルバムでは『将来結婚したい人ランキング』トップだったと記憶している。ちなみに俺は20人中17位だった。その時から、このイケメンにいい感情を抱けていない。


「確信に満ちた言葉。僕のことを知っているのかな、キミは?」

「声を聞いて思い出せねえようん奴にゃあ、教えてやるような名前はねえよ!」


 ファズマシューターを構え、放つ。橡は腕を振り上げた。いつの間にかそこには光り輝く短剣が握られており、それが光の矢を切り払った。俺は鼻根を寄せた。


「僕の『欲望投影(デザイアプロジェクション)』の力を侮っていただいては困る」

「こっちの世界に来たら、大仰な名前をつけなきゃいけないのか?」

「別に決まりはない。ただその方が、気分が乗るってそれだけの話さ」


 橡はにこりと笑い獣を立ち上がらせた。中型犬くらいの小型種から3mは越えるであろう中型種、更にそれすらもしのぐほどデカい大型種がいる。


「僕の欲望は、すべてを食い尽くすまで止まらない。行け!」


 橡は切っ先を俺に向けて来た。俺に向かって光の獣が殺到する、シューターでそれを撃つが明らかにこっちの対応力を上回っている。俺は舌打ちした。


 クレリックROMを取り出し、交換。変身と同時にホーリードメインを展開した。光の壁に阻まれ獣は近付いて来られないが、しかし時間の問題だろう。奥の大型種も動き始めている。だが、時間を稼ぐには十分な仕事をしてくれた。

 増設アダプタを取り出し、マジシャンROMをセット。引き抜いたクレリックROMも装填し、再度ベルトに取り付け再変身。禍々しいエレキギターハウリングめいた音が鳴り響き、白い鎧が黒に、バケツめいた兜が悪魔の仮面へと変貌した。これぞ白と黒が合わさった遠隔攻撃特化形態、ジョブ:リッチだ。


「レニア! ファルナ! 俺から離れるんじゃあねえぞ!」


 俺はドメインを展開した。基本的な仕様は同じだ、1m以内の相手に展開するフィールドは無力。ただし、マジシャンの力を込めたドメインには攻撃能力がある。攻性防壁なのだ。フィールドから発される熱的エネルギーを受けて、白の獣が次々爆散する。


「スゴイな。デザイアプロジェクションを破るような相手がいるなんて」

「次は手前を焼いてやるから覚悟しやがれ、橡!」


 俺はダブルメイスに力を収束させた。メイスを振るい、先端に生成した熱球を橡に向けて投げつける。しかしそれを、大型の獣が腕で防いだ。爆発と衝撃波少なくないダメージを与えたはずだが、しかし獣は倒れない。むしろ、獰猛な殺意を剥き出しにして俺を睨んで来た。


「キミの相手をするのは面倒そうだ。今日はこれで失礼させてもらうよ」

「待ちやがれ、橡! この野郎……!」


 橡は何らかの刻印を施した石を懐から取り出した。それをギュッと握ると、彼の姿が掻き消える。テレポート? だが、そんなことを考えている暇もなく獣が躍り出た。攻性防壁の途切れ目を狙われたのだ、こいつら見た目よりもずっと賢い。

 メイスの先端を獣たちに向け、そこから魔法の矢を連射する。マシンガンめいた勢いで放たれる矢が次々獣を撃ち抜く。だが、その隙に巨大な2体の獣が動き出した。


(あのパワー、あのスピード。リッチで受け止めるのは不可能か!)


 即座にクレリックとマジシャンのROMを引き抜き、代わりにファイターとシーフのROMをセット。ジョブ:ストライダーへと変身し、振り下ろされたバカデカい拳を剣で受け止めた。硬い岩盤が衝撃で砕け、周囲に破片が飛散する。腹部に魔法の矢を数発打ち込むが、貫通せず腹で止まった。この場所、この状況、分が悪い。


「レニア、ファルナ! 逃げるぞ、立て! 俺に掴まるんだ!」


 2人はべそをかきながらも立ち上がった。俺は大型種の獣を剣で跳ね上げ、胴体に蹴りをくれてやった。吹き飛ばされた大型獣は背後に控えていたもう1体の獣を巻き込みながら転倒した。来た道を戻ろうとした、だがそこから白い獣が何体も現れる。


「ご丁寧に逃げ道は塞いでくれやがったってわけか。なら……」


 風の通る音が聞こえて来る。つまり、抜け道はあるってことだ。ただし、そこを抜ければノースティング領地に入り込むことになってしまう。だが仕方ない。

 俺はレニアとファルナの姉弟を小脇に抱えて走り出した。何体もの獣が俺に向かって飛びかかって来る。2人を抱えた状態で最高速度を出すことは出来ないが、十分だ。強化知覚が最適な逃走ルートを算出し、強化筋力がそれを実現する。白く光る化け物どものを潜り抜け、俺たちは洞窟の出口に向かって突き進んだ。


「ごめん……ごめんなさい。私たちのせいで、こんなことに」


 レニアは泣いていた。悪いところがないわけではない、しかし。


「それ以上気に病んだって仕方ない。

 起こってしまったこと、やってしまったことを変えることは二度と出来ない。

 どんなに後悔したって、その責任は自分で持つしかない」


 それが選ぶということ、決断するということ。

 子供の身には過ぎたものだ。


「だから前を向け。レニア、ファルナ。

 どうすればよかったのか、何をすれば最善だったのかをよく考えるんだ。

 そうすりゃ、同じようなことが起こった時に失敗しなくて済む」


 多分な。まあ、その辺は無責任な大人の言うことだから黙って聞き流してくれ。少なくとも、レニアとファルナは納得して頷いてくれた。俺たちは険しい洞窟の中を突き進んで行く。しばらくすると、闇の中に月の明かりが見えた。あそこだ……!


 洞窟を飛び出す。俺たちを追い掛けて、あるいは山や森の中から光り輝く獣が現れる。膨大な数、恐らく夕暮れ時にだけ動くという習性自体も人を引き寄せるために作り出した偽りなのだろう。加護で作り出したものなら、そんな制限などあるはずはない。

 3秒ほどで山肌を駆け降り、開けた場所へと辿り着く。逃走速度は加速するが、しかしそれは敵も同じこと。単純なスピードなら守るもののない相手の方が速い。


(弱ったな、2人を守りながらどうやって戦うべきか……!)


 包囲の輪が段々と狭まって来る。万事休す、いやまだそれには早すぎる。だが刻一刻と状況は悪化している。逃げられなくなる前にどうにかしなければ……


 風を切る音が聞こえた。

 青白い光が見えた。

 闇夜を切り裂く怒号が響いた。


「ッべえ、レニア! ファルナ! 体を丸めて頭を守れ!」


 いまからではクレリックの展開が間に合わない。俺は急停止し反転、2人を守るように覆い被さった。その背にいくつもの矢が突き刺さる。炎が舞い、水が弾け、風が轟く。光の獣が足を止めた隙を見計らって、武装した兵士が突撃して来る。


(ノースティング領の騎士たちか……!? なんつータイミングで……)


 白い獣は多かったが、兵士たちは更に多かった。途中で獣たちは不利を悟り後退し、兵士たちはさしたる損害もなくこの事態を乗り切ったようだ。つまり、最悪だ。


「その方、何者か」


 隊長格と思しき鎧騎士が、俺に語り掛けて来た。

 凛とした高い声、女か。


「エラルド領武装神官、久留間武彦だ」

「エラルド領。すなわち、無断で境界を越えて来たということか?」


 そうなるよね。

 だが、身分を明かさないでいるのがもっと悪いだろう。


「申し開きをしたい。是非とも話を聞いていただけると助かるんだが……」

「密入者に掛ける慈悲などない。者ども、この方らを捕らえよ!」


 号令と共に、兵士たちが一斉にこちらに向かってくる。ふざけんな、子供もいるんだぞ! もっと優しい手段が何かあっただろうが! 俺は知らないけど。


 ともかく、手際がいい。もしかしたらあの野郎、俺たちが捕まるように仕向けていたのかもしれない。思えば森から出てきた光の獣の動作が妙だった。俺はポケットに忍ばせた秘密兵器を起動しつつ、どうすればこの状況から脱することが出来るか考えた。


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