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女神様には何も貰えなかったけど、自前のチートで頑張ります  作者: 小夏雅彦
第一章:異世界転移したのに何の力もない!? 当たり前だろ
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01-俺のレベルはEX

 馬車を直すのを手伝って、さよならをする予定だった。だが俺は老人からの圧力を受けて席に座らされた。ちなみに吹っ飛ばされた御者は生きていた、タフな奴だ。


「危ないところを助けていただき、本当にありがとうございます」

「いえ、大したことをしたわけではありません。ご無事で何よりです」


 夫人は穏やかな笑みを浮かべて言った。二人の子供は俺の方を警戒心を込めた目で見て来る、まあ当たり前か。母親に似て端正な顔立ちで、髪の色が一緒ならば見間違えてしまいそうだ。おっと、あんまり長いことじろじろ見ていると爺さんから喝が飛ぶな。


「それにしても、先ほど……その、勇者様とかおっしゃいましたか?」

「詳しくは屋敷にて話しましょう。あなたもお疲れでしょうから、ねえ?」


 言われると詳しく詮索するわけにはいかなくなった。ガタガタと揺れる馬車に乗りながら30分くらい進んだ。小さな家が立ち並び、人々が農耕や牧畜に精を出す村を越え、俺たちは彼女の言う屋敷へと辿り着いた。

 屋敷と言うよりは立派なログハウスと言った風体だ。白い漆喰に耐震性を考慮してか露出した柱が十字に交差しているのが特徴的だ。青いスレート葺きの屋根がいかにも涼しげだ。屋根の上では風を受けて、風見鶏が楽し気に踊っている。


「レオールさん、子供たちを頼みました。私は勇者様と参りますので」

「はっ。僭越ながら、おひとりでよろしいのでしょうか?」

「問題ありませんよ。さあ、お待たせいたしました。それではこちらに」


 夫人はスカートのすそを持ち上げ、映画のワンシーンかと見まごうほど優雅に馬車を降りた。俺も彼女の後に続き、屋敷へと入って行く。玄関を通り、進んで行くとすれ違うメイドたちが挨拶をくれる。仕事だから、と言う感じではない。尊敬されているのだろう。

 やがて俺たちは屋敷の最奥部、渡り廊下を挟んだ離れに辿り着いた。煉瓦造りの建物は室内庭園のようで、色とりどりの小さな花々が人工の水辺に浮かんでいた。


「単刀直入に申し上げます。あなたはこの世界の方ではないのでしょう?」


 彼女は部屋の中央にあった水晶球の傍に立って言った。

 まさかすぐばれるとは。

「おっしゃる通りです。しかし……

 一目見て分かった、と言うことは他にも別の世界から来た者がいるのですか?」

「はい。我々はあなたのような方々を与えられし者(ギフテッド)と呼んでいます」


 何を与えられたんだか。何もくれないと俺は言われた。


「伝承にはこうあります。

 『彼らは我々とは違うことを考え、我々とは違う方法で動く』と。

 そして、それを可視化するためのものがこの水晶球なのです」


 そう言って彼女が水晶球に手を触れると、水面が揺らめきそこに何かが映し出された。それは8つの数字とバーのように見えた。左端には『レベル』と書かれている。ファンタジーRPGのステータス画面かよ。


「人の持つ力を数値化したもの。我々は能力値(ステータス)と呼んでいます」

「ホントにそうだったよ……」

「? ともかく、これに触れてくれませんか? 特に痛みなどはありません」


 まあ、触れないという選択肢はないだろう。触って安全なことは先ほど夫人が証明してくれた。俺はおっかなびっくりに水晶球に手を置いた。表面が波打つ。


「……おお、なるほど。これは……」

「やはり、勇者様です。私たちの物とはまったく違います(・・・・・・・・)


 確かに違うだろうが、俺にとっては見慣れたものだった。


 そこには、ファンタズムの性能(スペック)シートがそのまま表示されていた。


■名前:ファンタズム ■レベル:EX ■職業:ノービス

■パンチ力:4.3t ■キック力:8.5t ■ジャンプ力:45m

■走力:100mを約3.7秒 ■必殺技:フリダーム・ストライク 約30t


 有難味がまったく無い。伝承だのなんだのと言っておいてこれである。っていうか、レベルEXってなんだよ。そこだけ数値評価じゃないのかよ。


「厚かましいお願いではありますが……この地に留まってはいただけないでしょうか?」

「それは、私も住む場所さえない状態です。願ってもないことではありますが、それは」

「正直に申しますと、善意で言っているのではありません。少し下心があります」


 子持ちの御婦人とはいえ、こんな美人に言われるとドキッとする言葉だ。


「転移者の持つ力は私たちにとっても貴重なものなのです。

 転移者は神の加護を受け、我々よりも大きな力を持つとされています。

 そのため私たちの国と教会はあなたたちを保護することにしているのです。

 保護というよりは、契約ですけれども」

「つまり、面倒を見る代わりに自分たちに従えと言うことですか?」

「有り体的に言えばそうなります。いかがでしょうか、勇者様?」


 誠実な方だ。恩を売ることも出来るだろうに。俺はすぐに頷いた。


「分かりました。ただもしかしたら俺の友人がこちらに来ているかも知れない。

 それを探すために力を貸していただけますか、シオンさん?」

「もちろんです。お互いの利益のために。そのための協力は惜しみません」

「それから勇者様と言われ続けるのは少し、こそばゆい。

 名前で呼んでいただいて結構です。申し遅れましたが、久留間武彦と申します」

「こちらも名乗っていませんでしたね。私はシオン=グラナ=エラルド。

 このエラルド伯爵領を統治する者です。よろしくお願いします、久留間様」

「お願いですから様もやめてください。暴れますよ」


 おどけて見せると、シオンさんはクスクスと笑った。やれやれ、厄介なことになってしまったが、取り敢えず衣食住の心配をする必要はもうなさそうだ。となると、他のことが気になって来る。クラスの連中はどうなったのか……


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