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女神様には何も貰えなかったけど、自前のチートで頑張ります  作者: 小夏雅彦
第十二章:破壊と混沌と無関心と
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21-ロード・モナーク

 全身に力が漲る。

 圧倒的質量を誇るドラゴンの突進を片手で受け止められた。


「はは、すげえなこりゃあ……! もう、何も怖くねえ!」


 ドラゴンを押す。まるでマッチ箱か何かを押しているかのようだ。後ずさるドラゴンを左拳で殴りつける。ドラゴンは悲鳴を上げて後方に飛んで行った。


「いままでとは比べ物にならねえパワー……! これが博士の作った力か!」

『それはファンタズムの新たな形態。すべてを力でねじ伏せる君主(ロード)の力さ』


 君主の仕事と言うのは腕っぷしで何とかなるようなものではないような気もするが……顔も見えない相手に反論することは出来ないので黙っているが。一歩踏み出す、鎧がガシャガシャと音を立てる。そして分かった、これは滅茶苦茶重い。


(なるほど、ファズマのほとんどを装甲とパワーに割り振ったわけか)


 多くの場合、ロードのパワーは過剰だろう。機動性はノービスの三分の一以下、そのくせ破壊力だけはとんでもない。もしかしたら、博士は次元帝国のロボを相手にするためにこんなものを作り出したのだろうか? それとも何となく作っておいて、『こんなこともあろうかと!』と土壇場で披露する気だったのだろうか?


 多分後者だろうな。

 あの時は次元城ロボなんて想像も出来なかったし。


『ロードの力は、大きく分けて三つ。

 一つは他の形態を凌駕する圧倒的破壊力。そして高い防御力だ。

 鎧が全身を覆っているのに加えてマントを背負っている。これは凄いぞ』

「せめてマントの防御性能を説明してくれると嬉しいんだけど……」

『そして三つめはいまキミが手にしている武器、征王剣レイズザッパーだ。

 見た目通りの破壊力と切断力を兼ね備えたファンタズム最強の武器だ。

 切り裂けないものはない』


 大仰な名前に相応しいくらいの力は、手にした武器から感じている。俺はゆっくりとドラゴンに歩み寄り、剣を構えた。ドラゴンは警戒心を露わにしながらも爪を振りかぶる。俺は振り下ろされる爪に合わせて剣を振るった。

 ほとんど何の抵抗もなく、鋭い爪はスライスされた。予想外の結果にドラゴンの方が驚いているようだ。腕は空振りし、ドラゴンは隙を晒す。俺はその無防備な腹にサイドキックを叩き込んだ。ドラゴンは悲鳴を上げながら吹っ飛んだ。


「『王』を『征』する剣か。何だか不遜な感じだけど……こりゃいいわ!」


 もっとこの武器の特性を掴みたい。

 そう思って踏み込もうとした時。


『レイズザッパーには二つのモードがある。一長一短の性能、使い分けてくれ』


 博士に腰を折られた。いや、録音音声なのだということは分かっているが何だか腹が立ってくるのが不思議だ。俺は言われたとおりレイズザッパーを見てみた。こちらにもやはり、真ん中あたりから二つに割けるような溝が付いている。


「お、これだな。博士、これがマイブームなんだな……」


 俺は剣に意識を集中させ、剣の柄を左右に引っ張った。キィン、と言う金属音がして、剣が二つに分かれた。同じくらいの長さを持った片刃剣だった。


「ふむふむ、通常の征王剣が威力重視なら、こっちは手数重視か?」


 ドラゴンはその場で反転し、巨大な尻尾を叩きつけて来ようとした。俺はそれを左の剣で受け止め、右の剣で尻尾を切った。悲鳴を上げるドラゴン、地面に落ちる尻尾。スゴイな、これだけのことが出来るなんて。やはりあの人は天才だ。

 何度も剣を振るう。赤い線が青い空を染める。ドラゴンの悲鳴、俺の哄笑。いいな、これは気持ちいい。最近抑圧されることが多かったような気がする。


 景気良く切っていると、ドラゴンがいきなり前傾姿勢になった。全身に力が漲り、瞬間体が膨張したような気がした。これは危ないかもしれない、と思って一歩後退。ドラゴンが咆哮を上げる、凄まじい音量に木々が揺れ、大地が割れる。音波の力は距離の二乗に比例して減衰する、だったか。ともかく距離を取ったのは大正解だった。至近距離で喰らっていたらうるさい程度では済まなかっただろう。

 だが隙を作ってしまったのは確かだ。ドラゴンが羽ばたき、その体が徐々に地上から離れていく。飛んで逃げようというのか、小癪な。そう思い追い掛けようとするが、千切れかけた尻尾が邪魔をする。血飛沫を上げながらドラゴンは尻尾を振り回し、辺りのものを手あたり次第破壊した。俺はそれを剣で防ぎ、今度こそ切断した。トカゲの尻尾切りと言うが、ドラゴンの尻尾も切れたらまた生えて来るのだろうか?


「逃げようったってそうはいかねえよ! これでとどめだぜ、ドラゴン!」


 ボタンを押し込む。『ロード・ストライク!』の機械音声が流れる。HMDの表示に従い剣を征王剣形態に戻す。すると、刀身にファズマが収束していった。なるほど、必殺技はシンプルに刀身を伸ばしての長距離斬撃と言うわけだ。

 剣を天高く掲げる。どこまでも伸びて行く青白い光の刃。背後を晒しているドラゴンは、それに気付くことすら出来ない。俺はそれを振り下ろす。


「ブッ……た斬ってやらぁーっ!」


 塔とさえも掲揚することが出来るであろう巨大な刃は、ドラゴンの体をあっさりと貫通した。真っ二つになったドラゴンがファズマの光によって分解され、空から骨一つ残さずに消えていく。振るう俺がビビってしまうほど凄まじいパワーだ。


「ヘヘッ……いいもん送ってくれたな、博士。感謝はしておくぜ」


 色々と手間を掛けさせられたが、なんだかんだで俺のことをこれまで助けてくれたのは博士だ。いまだって次元の壁さえも超えて俺を、ファンタズムを助けてくれている。俺の味方はこの世界の住人だけじゃないと考えると勇気が出る。


「……さて、ここまでしてもらったんだ。ちゃんと解決しねえとな」


 変身を解除、石板をもって王都に戻ろう……としたところで凄まじい疲労感に襲われた。指一本動かせない、というレベルではないがかなりキツイ。


『ああ、まだテストはしていないからどんなフィードバックが来るか分からん。

 使用の際には細心の注意を払ってくれたまえ……と言っても聞かんだろうがな』

「……だからさあ、博士。それは最初に言ってくれよ……」


 最初っから最後まで振り回されっぱなしだ。結局一日休むことになった。

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