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女神様には何も貰えなかったけど、自前のチートで頑張ります  作者: 小夏雅彦
第九章:天より来たる滅びの使徒
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15-久しぶりに戻った故郷が変わってるなんてよくあること

 戦火は徐々に広がっている。それはエラルドであろうとも例外ではない。特に大量発生したダーク、マーブルと言った怪物の被害は無視出来ない規模のものとなっている。これは今後の作戦行動……西方包囲作戦の大きな障害となる。

 だから俺は一度エラルドに戻り、跋扈するダークたちを鎮圧しなければならない。西方攻略作戦の始動は次の月から。その前に万難を排除するのだ。俺と入れ替わりで橡が王都に戻り、周辺諸勢力からの攻撃に対応することになった。俺はエラルドでダークたちと戦う、と。


「だからって……もうちょっと人がいてくれていいと思うんだけど」


 俺はデカいため息をついた。

 フワフワとした浮遊感の中で。


「エラルドに手勢は少なく、自然我々のような外部戦力に依存しているんだろ?

 だったら暇な奴が頑張るしかねえだろ。ッハハ、適材適所ってやつだよ」


 そんな俺を笑うのはフレイムバイソン。俺を飛ばしてくれるのはウィンドイーグル。俺だけでなくディメンジアの転移者もエラルドへの帰還が許された。


「アンタを帰してくれただけいいでしょ。他のところは自前よ、自前」

「西方もそうだけど、どこもガタガタになってるってことかねぇ……」

「周辺脅威だらけだ。万全の体制が取れてるところなんて、ねえだろ」


 ごもっとも。だからこそ俺たちのような奴らが頑張らなければならないのだ。またデカいため息を吐いてしまった。西方、ラーナ=マーヤ、イリアス。ほとんど四面楚歌と言った感じだ。これ以上何も出て来なければいいのだが……

 イーグルの飛行速度は極めて速い。俺たちは半日も掛からなうちにエラルド領に戻って来た。広場に降りると屋敷のみんなが俺たちを出迎えてくれた。


「お久しぶりです、久留間さん! お元気そうで何よりです!」

「俺もですよ、アルフさん。その、お変わりはないですか?」


 知り合いが生きているのを見て、心が温かくなって来る。ただ、何もかもあの時のままとはいかないようだ。あの後何度もエラルドは襲撃を受けたという。西方の、そして化け物たちの。言ってしまってから俺はミスに気付いた。


「何人か犠牲になりました。後で裏の墓を見てやってください、喜びますよ」

「……このまま戦い続ければ、犠牲になる人々も増えるってことですよね」

「でも必要なことですよ。俺たちの故郷を守るためにはね」


 そう言ってアルフさんは笑った。不安そうな笑みだったが、しかし肝の座り方では俺よりも彼の方が優れている。気を引き締めないといけないな。


「化け物どもを駆逐する。そのために来ました」

「頼りにしています。とはいえ今日はもう遅い。

 休んでください、久留間さん」


 たしかに。ダークは昼も夜もなく関係なく出て来るが、だからこそ休んで体力を温存し、戦いに際して最大の力で臨まなければならない。それに、現状の確認もしておきたい。大丈夫、まだ作戦開始までの時間は残っているんだ。


「あら……あなた、武彦! いつこっちに帰って来たのよ!」


 高くて可愛らしい声が俺に掛けられた。振り向くと、屋敷の中だというのに厚着をした少女がいた。ミーアだ。そう言えば肌寒い、物資を節約するために火を止めているのだろうか? 彼女は俺の姿を認めると、パタパタと走り寄って来た。


「こっちになかなか帰って来ないから、さすがに心配してたのよ!」

「心配? そりゃありがたい。最初に会った時とはエラい違いだな、オイ」


 最初に会った時に向けられた、ゴミを見るような視線を俺はまだ忘れていない。ノースティング陥落から結構長い時間が経つが、未だに奪還の目処は立たないという。王国にも、どこにも、あそこを取り戻している余裕などないのだ。


「こらこら、ミーア。はしたない真似を……おや、あなたは久留間さん?」

「ラウルさん。あなたもお元気そうで何よりです。お変わりありませんか?」


 気の弱そうな男、ラウルさんがミーアを追って現れた。相変わらず、という感じだが頬は前会った時よりこけている。栄養状態がよくないのだろう。


「西方への反抗作戦、ですか。あなたはそのためにこちらに戻ってきて?」

「正確にはその前準備、って感じですけどね。色々と話を伺えるとありがたい」

「私で手伝えることなら何でも致しますよ。さあ、ミーア。こちらへ」


 ミーアはラウルさんに手を引かれてどこかへ行った。


「ただ世話になっているだけじゃ申し訳ないって色々手伝ってくれるんです」

「へえ、そりゃ感心だな。食っちゃ寝してるよりはずっといいわ」

「はっはっは、久留間さん。そりゃあなたじゃないんですからねえ?」


 失敬な。ダークと戦ったり農作業を手伝ったりしながら食って寝てただけだ。つまりあれは正当な報酬。なんて考えているといろいろ悲しくなるので止める。


「シャドウハンターと橡は? まだこっちにいるんだろう?」

「ええ、応接室で待っているはずです。すっかりあそこも作戦会議室ですよ」


 ぼやくアルフさんと一緒になって歩く。近況報告、愚痴の言い合い、そして不安の発露。シャドウハンターたちと話し合い現状を確認し、やるべきことの優先順位をしっかりつける。エラルドを、王国を、この世界を守るために。


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